12月 02

国家興亡の方程式』 歴史に対する数学的アプローチ
ピーター・ターチン、Discover、2015年8月、375項。

エッセンスをまとめました。

1・理論を構築するための数理的アプローチというものが存在し、物理学や生物学の分野で目覚ましい成功を収めてきた。しかし、数理モデルを援用した定式化は歴史社会学ではほとんど見当たらない。
2・ある研究分野が成熟していくには、数学的理論の発達が必要とされる。
3・領土の動態を説明するためには、軍事的、政治的、経済的、そしてイデオロギー的プロセスを含めたさまざまな社会メカニズムを活用する必要がある。
4・三種類のモデルを考察する。①個人-集団 個人が互いに作用し、集団の動態を決定する。②集団-政体 政体レベルで生じるパターンを理解するために集団レベルのメカニズムを構築する。③政体-団体 どのように政体が相互作用するかを取り扱う。
5・国境の配置は戦争の成功に有利に働く。敵と対峙する前線が少ない国家は、敵に囲まれた国家を犠牲にして拡大するからである。しかし、国家の拡張によって国境の配置の優位性は減少する。
6・帝国は最終的には常に崩壊する。
7・領土的帝国の興亡を理解するためには、純粋な地政学的原則以外の説明のメカニズムが必要である。具体的には、人口構造モデルと地政学的国力・威信によって影響される統治者の正当性という二つの理論である。
8・国の威信は戦争の成功と比例し、正当性は威信の結果として時間遅れで生ずる。
9・国家の解体を引き起こす一つの原因が経済である。繁栄は人口の増加をもたらし、ついで物資の欠乏、エリートによる抑圧、そして最終的に国家の崩壊をもたらす。
10・社会心理学の中で最も社会的結束に関係が深いのは、個人主義と集団主義の二項対立の研究にある。
11・人間は、言語、宗教、遺伝的表現型など、さまざまな識別を用いて集団のメンバーと外部とを区別する。
12・最も重要な種類の人間の集まりは民族集団である。
13・大部分のヒト集団では、世代時間は20年から30年の間になるはずだ。
14・人口密度と政情不安が相乗的に作用することが、統計的に有意な相互作用項によって示唆された。人口密度と政情不安の両方が高い場味は、人口減少がl特に顕著だった。
15・近代社会はエリートの過剰生産による影響を受けやすい可能性がある。
16・歴史動態に高い関連性を持つ「自然な」タイムスケールは、ヒトの世代交代(20-30年)である。人口が増減し、政治エリートが交代し、文化が伝播するのは、このスケールである。
17・改宗者の割合が人口の10-90%となるまで必要な時間は150-300年と見積もられる。

さらば、資本主義』佐伯啓思 新潮新書 2015年 10月、220項
エッセンスをまとめました。

1・アベノミクスの第一の矢は、超金融緩和によって2%程度のインフレを実現するというもの。これは、貨幣供給量を増やせば物価があがる。つまり、貨幣供給量と物価水準には一定の関係があるという理屈である。経済理論では、この考えはマネタリズムといわれる考え方をもとにしている。そして、第二の矢は、財政出動によって景気回復を目指すというもので、ケインズ主義である。ところが、従来、マネタリズムとケインズ主義はまったくの犬猿の間柄、50年にわたる敵対関係にあった。

2・グローバル競争に勝つためにはあらゆることをする。政府が主導して成長産業を生み出すという新重商主義的・戦略的政策も必要である。こうして一見したところ矛盾し対立しあう政策を両方ともに包括するものは、まさにこの「グローバル競争に勝って成長する」という論理である。かくて、「グローバリズム」「競争力」「成長追求」の三つのキーワードになったのである。

3・ピケティの議論の柱を歴史的に見ると、資本からの利益率(収益率)は、ほぼ4-5%である。しかし、経済成長率は、戦後1950年から80年までの30年間を除くと利潤率を下回っている。これがこの書物を一躍有名にし  r > g という不等式である。ピケティがいうには、資本所有者(資産家)は、年々r%で資産を増やすのに対して、労働者はせいぜいのところ、年々g%しか所得を増加できない。だから資産と賃金所得の増加率の差を通じてますます格差が拡大する。

4・資本は利益をあげているけれど、資本主義社会は決して成長していない。IT等の新技術は、一種の独占をもたらし、これらの利潤はかなり内部留保にまわされ、また企業買収に使われ、金融市場に投資される。こうなると経済成功に結びつかない。

5・グローバリズムは、あらゆる地域を同質化してゆく。急激に文明的な格差は縮められやがて画一的な巨大なグローバル文明へと編成されるだろう。

6・資本主義の拡張運動とは、人間の欲望の拡張である。欲望は希少性によって生み出される。いくら技術を革新して労働生産性を高めても、それが生み出す市場における需要が十分には発生しない。

7・衣食住は十二分に足り、一定の経済水準をはるかに超えている。ではわれわれが満足できるのかというとそうではなく、今度はより安く、より早く、より便利に、という欲望に突き動かされ、ますます経済の拡張に邁進する。そのために、かつてなく忙しく働き、激しく競争に駆り立てられているわけである。

8・価格破壊はやがて雇用破壊にいたり、その次には人間破壊へといたる。
9・賃金が下がり、雇用が不安定になるとどうなるか。例えば、これまで専業主婦だった女性もパートに出かけ、家族がバラバラになってゆく。親子関係が希薄になる。また、競争は人をいっそう個人主義にし、他人との信頼を崩してゆく。競争によって全体のパイが増大するときは良いが、雇用が不安定化し、デフレ化する経済で競争をおこなうと、パイの取り合いになる。

10・われわれは、今日、瞬時に欲しいものを手に入れようとする。しかも、効率性本位の競争的市場と株価中心の企業経営と、資産をすべて金融化してしまう金融中心経済、そしてIT革命にうよってもたらされた情報技術が、まさにそれを可能にしてしまった。その結果、現代社会を動かすものは、衝動的で、短期的で、自己中心的な欲望充足になってしまった。それは人間破壊というほかないのではないのでしょうか。

フェルドマン博士の日本経済最新講義』ロバート・アラン・フェルドマン
文藝春秋 2015年11月 206項

エッセンスをまとめました。

1・経済学とは何かと訊ねられれば、「希少資源の最適な利用の学問」と答えます。さらに、その目的は、「希少性からくる争いを減らし、世界を平和にすること」と言えるでしょう。
2・グローバル化には、いったん競争力を失った国からは、貴重な資源や人材がたちまち他国に流れてしまうという特徴がある。
3・希少資源を最適に投入することが、産業に高い生産性をもたらし、経済を好循環させる。
4・日本経済の競争力を世界の中で比べたとき、強みと弱みは何か。第一の強みとしては、豊かな水と農地である。だから日本の今後の成長産業は農業だと主張するのです。
5・日本経済が持っているもう一つの強みは、技術である。
6・日本経済が抱える弱みは人材育成である。
7・教育や青少年のための支出が高齢者のために使っているお金と比べると低すぎる。
8・義務教育のうちからグローバル化を意識して、人を育てていく必要がある。
9・日本には労働市場に柔軟性がないという特徴がある。言い換えれば転職が盛んでなく、労働力に流動性がない。グローバル化において弱点となる。
10・日本人が気付いていない日本の良いところは、宗教差別がないところである。
11・難民の大人たちにとっては自分の子供が自分より立身出世できることは最大の夢である。難民の子供たちはわずか20年先の貴重な人材である。日本は難民の受け入れに慣れてないが、このチャンスを逃すのはもったいない。
12・政策と景気の絡み合いは常に循環である。CRICサイクルの法則。
危機(Crisis)、反応(Response)、改善(Improvement)、怠慢、事故満足(Complacency)
経済に何らかの「危機」が起こると、政策が「反応」する。すると経済は「改善」される。ひとたび「危機」が去ると政治も人々もあんしんして「怠慢」になる。
13・座右の銘は、京都の大徳寺の尾関宗園和尚の「人はともかく自分はがんばる」。

AIIBの正体』真壁昭夫 祥伝社 2015年7月、244項
エッセンスをまとめました。

1・AIIB創設は、米国の退潮、中国の台頭という世界の構造変化が明確に現れたイベントといえる。
2・米国はAIIB構想を警戒してきた。ガバナンス面に対する不透明さなど、警戒の理由にはさまざまな点が挙げられている。だが、米国が警戒する本質的な理由は、新興国のインフラ需要という、各国が渇望する成長材料を中国の影響下に置かれてしまうことを懸念したからだろう。
3・中国がイニシアティブをとってシルクロード経済圏構想を具体化し、その発展のための資金をAIIBが提供していくことは、中国の経済が抱える消費や人口動態という構造的な課題への対応策を見つけるために重要な取り組みだ。
4・ロイター社の報道によると、新興国のインフラ整備のためには、2020年までに8兆ドルほどのお金が必要だと言われている。
5・中国はBOP(Base of thePyramid:最貧困層)をターゲットにした市場開拓を進めようとしている。新興国の中産階級の消費拡大に期待するのではなく、より所得水準が低い地域の人々の生活水準の向上に貢献しつつ、そこから利益を上げていこうとするビジネスコンセプトだ。
6・中国が世界の工場から脱皮し、世界の流通・販売市場として地位を築いていくためには、国内の消費マーケットだけでなく、より広範囲な市場を確保していく必要がある。その意識の表れがシルクロード経済圏構想であり、AIIBの創設の呼びかけなのであろう。
7・香港は特別行政区という衣をまとってはいるものの、中国の中央が対外的な戦略を展開するうえでのハブとしての役割を担っている可能性が高い。
8・中国が打ち出したコンセプトは、欧州経済と中国経済をいかにつなぐかという壮大なものだ。
9・通貨安競争に端を発する需要の取り合いは、米国などの批判を通じて新興国の連携を強めやすい。その結果、中国を中心とする新しい勢力の発言力や存在感が増大し、米国中心の世界経済の在り方に変化をもたらす可能性は高まっているといえる。
10・アジアの経済をまたぐ多国籍の通貨=単一通貨を考えるコンセプトがACU(アジア通貨単位)だ。この考えを進めてきたのがアジア開発銀行(ADB)である。つまりACUはわが国、そしてその同盟国である米国の意向を反映した通貨構想である。
11・ACU進展への期待は、今後のアジア市場の安定と発展を見据えたうえで、わが国のイニシアティブを発揮できる格好のフィールドであると考えられる。人民元の重要性が高まるにつれて単一通貨構想の必要性への認識が低下していくことはよく認識すべきだ。
12・中国も米国を中心とする先進国の国際的な金融機関のノウハウ、手腕は極力取り入れたいという考えを持っているはずだ。
13・まず重要なことは、わが国はAIIBへの参加を表明すべきだということだ。
14・米国の大統領選挙の結果、米国の内向き志向を容認する陣営が政権の座に就けば、わが国の立場はどうなるのか。このリスクには、十分に吟味しておかなければならない。
15・中国にとって、わが国のバブルの歴史は、過度な金融緩和を行うことのリスク、そして、市場原理に経済運営をゆだねるリスクを学ぶ絶好の教材といえるだろう。
16・楽観的な考えかもしれないが、技術立国としてのわが国の存在が高まるにことによって、中国はわが国に対するリスペクトの念を強くする可能性はある。

日本外交への直言』河野洋平 岩波書店 2015年8月 216項

エッセンスをまとめました。

1・いつの時代にあっても、その時々において平和と安定をもたらすための最適な政策とはいかなるものなのかを論じるべきであることは、政治の責任として当然である。
2・米中間において日本が積極的な役割を果たすためには、中国に対してもきちんと直言できる深い信頼関係を築いていなければならない。
3・何よりもいま日本の政治に求められていることは、過去の歴史から謙虚に学び、いずれの国であれその人々の人権と感情を深く尊重することにほかならない。
4・戦後70年という時期にこだわるのであれば、新たな談話の発出よりも、実質的にアジアの信頼を修復するための政策や記念事業を始めることを考えるべきではないか。誰もがわだかまりもなく訪れることのできる国立の戦没者追悼施設に着手することを検討すべきである。また、中国や韓国ともに地球規模の問題、伝染病の疾病の克服、アジア規模のインフラ整備に取り組み、そのためにアジアインフラ投資銀行(AIIB)に関与して間違いのない運営のために協力することも考えられよう。環境問題に共同して取り組むことも有意義である。
5・戦後の日本が苦心して築いてきた平和国家としてのブランドを変えてはいけない。
6・外交の目的は、「戦争を起こさないこと」、それに尽きるであろう。大局的な視点に立つならば、近隣諸国との関係を第一に考えていく必要がある。外交とは国益をめぐる交渉だが、その国益も目の前のものもあれば、将来のものもある。
7・二宮尊徳の教え、「分度と推譲」。分をわきまえ度を過ごすな、そして人を推して自分は譲るというもので、この教えが私の心にしみついていた。まさに「分度と推譲」こそ外交に携わる者の持つべき心構えであると言えよう。

キッシンジャー 回復された世界平和』 ヘンリー・キッシンジャー 原書房
2009年10月 630項

エッセンスをまとめました。

1・ヘンリー・キッシンジャーは、1923年にドイツに生まれ、1938年にナチス政権からの迫害を逃れてアメリカに渡ったドイツ系ユダヤ人である。ハーバード大学の卒業論文「歴史の意味-シューペングラー、トインビー、そしてカントをめぐる省察」。「回復された世界平和-メッテルニヒ、カールスレー、そして平和の問題」で博士号を取得している。1954年から1971年までハーバード大学政治学部で教鞭を執った。

2・「大量報復戦略」の硬直性を厳しく批判し、後にケネディ政権が採用した「柔軟反応戦略」の原型とも言える核兵器と通常兵器の段階的運用を唱えた「制限戦争」を提唱。

3・ソ連のいわゆる「冷戦」は、戦うには高過ぎる。キッシンジャーにとって高慢な理想主義外交はアメリカには負担できないと、そして、そのための方策である封じ込め政策は評価に値する結果をもたらしてはいないように思われた。そこで冷戦の代わりとして、平和(=安定)、貿易、そして文化交流を求めた。

4・「現実主義外交(Realpolitik)の提唱者として1970年代のデタントとして知られる緊張緩和政策を推進した。

5・外交政策が政治家という人間によって形成されるという単純だが重要な事実に常に敏感であった。すなわち、外交が特定の歴史的、文化的、政治的文脈の提唱者で形作られる目標と、限りある選択肢の間で展開される人間ドラマである事実をキッシンジャーは十分に理解していたのである。

6・国際平和は法や国際組織ではなく、力の分布によって達成可能である。

7・過度の理想主義とイデオロギーを排除したかたちで国益中心の現実主義外交を推し進め、ソ連とのデタントの達成など外交的成果を上げた。外交政策を理論的に支えたのが「勢力均衡」と「正統性」という二つの国際秩序観であった。

8・アラブ諸国とイスラエルの和平交渉に尽力した外交は「シャトル外交」として知られている。

9・日米同盟や在日米軍の存在理由を、いわゆる「瓶の蓋論」を用いて明快に説明した。

10・長期的にはアメリカをソ連による対立という従来の冷戦構造に、新たに台頭してきた中国をさらなるアクターとして組み込むこと、またソ連の核戦略がアメリカと対等である(あるいは対等であるあるべき)ことを認めて両国関係の安定化を目指すという、真の意味での戦略的な外交方針であった。

11・アメリカの国益を外交の中心に据え、国際政治の勢力均衡(バランス・オブ・パワー)に配慮しつつ、同国にとって受け入れ可能な国際秩序の構築を目的としたのである。キッシンジャーにとって平和は、安定的な力の調和、すなわち秩序を意味した。

12・キッシンジャーにとって外交の本質とは、勧善懲悪の考え方や宗教上の信条、そしてイデオロギーなどとは関係ないのである。平和とは、創り出されるものである。そして、平和が人類の創造物であるとすれば、当然、それは人工的かつ複雑、極めて脆弱な存在であり、いかにしてこれを維持すべきかが問題となる。

13・振り返ってみれば、最も平和だったと思われる時代は、最も平和への探求が少なかった。

14・軍事的勝利というものは、常に、物理的現実と、心理的影響力という二つの要素を持つものである。そして後者を政治的条件に変えることが外交である。

15・戦争の論理は力であり、力は本来、限界のないものである。が、平和の論理は、均衡であり、均衡は制限を意味するものである。戦争の成功は、勝利であり、平和の成功は安定である。戦争の動機は、外的なもの、すなわち敵からの脅威である。平和の動機は内的なものであり、力の均衡とその正統性の受託である。

16・歴史的保守主義者は、国家の伝統という個性的表現をそこなうという理由で革命をきらい、理性的保守主義者は、普遍的な社会理論が行われなくなるという理由で、革命と戦うのである。

17・常に秩序は、最終的には秩序にもどってゆくので、国家は個人のようの死なず、自らを変えてゆく。個人の生涯におけると同様に、国家の生涯は、慎重な手段によって進歩するのか、急激に進歩するかの違いである。

18・深遠な政策は、不断の創造、目標に対する不断の修正の上に築かれるのである。政策は、もろもろの危険を調整することを伴うのであるが、行政は、一定の方針から逸脱するのを回避する作業を意味する。政策は、その手段と均衡感覚との関係によって正当化される。

19・国家は、単なる個人の集合にすぎない。しかし、それは、共通の歴史を自覚することによって、一体性を獲得するのである。この自覚こそ、民族がもっている唯一の経験であり、民族が自己の歴史から学ぶ唯一の方法なのである。歴史とは、諸国家も記憶なのである。

日本外交 現場からの提言』孫崎 亨 創元社 2015年8月 295項

エッセンスをまとめました。

1・米国一極支配が崩れ始めている。その最たる現象が、中国の主導した「アジアインフラ投資銀行」をめぐる動きである。日本は情報分析を間違えた。
2・世界を動かす軸は複雑化してきた。日本は世界がどう動いているかを注視すべきだ。自らの国益を明確にすべきだ。
3・各国には固有の利益があり、外交とはそれを追求すべきものだということである。そして、そのための情報収集、政策決定、交渉をどのように行って国益の最大化を図るという問題だ。
4・ニコルソン著『外交』外交とは、交渉における国際問題の処理であり、その処理の方法であり、外交官の職務あるいは技術である。
5・私の定義は少し異なる。外交とは、「互いに異なる利益・価値観を持つ国々の中にあって、相手国の異なる利益・価値観を認識し、利益・価値観が互いに対立するときに、どこまで自己の価値観を譲れるかを定め、その調整を図る」こと。
6・毛沢東が周恩来に「外交の極意」として示したのは「外に柔らかく接し、しかし、内には針を」である。
7・マキャベリの『君主論』名君は、信義を守ることがかえって自分に不利を招く場合、あるいは約束した時の動機が失われてしまった場合では、信義を守るべきではないのである。その上、信義の不履行を合法的に言いくつろう口実はいつでも見いだせる。
8・外交はある意味では非常なものである。われわれは、永遠の同盟者もいなければ、永遠の敵もいない。永遠であるのは、われわれの利益である。この利益を追求するのが、われわれの義務である。
9・日本は、日英同盟、日独同盟、日米同盟といくつかの同盟を結んできた。それぞれの時点で、日本はこれらの同盟が永続的に続くことを強く希望し、同盟の徹底した信頼を与えている。
10・外交には永遠の味方もなく、永遠の敵もない。極端にいえば、国際情勢は一刻一刻かわって、しかもその性質は複雑で、白か黒か、敵か味方かとかをはっきり定められるほど簡単ではない。
11・過去の国際的解決が、全て理性と交渉技術でもたらされたということは、後世の錯覚である。主権国家の社会では、国家は最後の手段として力を用いるという意志によってのみ、自国の正義の解釈を擁護し、自国の「重要利益」を守ることができるのである。
12・キッシンジャーは、自国の「重要利益」を守るのは、自分の力であると主張している。
13・NATOの形態と異なり、東京は米国との同盟関係において極めて従属的なパートナーである。
14・モーゲンソーの『国際政治』われわれは、政治家は力として定義される利益によって思考し、行動するとみなす。リアリズムは、打算を政治における至上の美徳と考える。
15・米国と他の国の利害が衝突した際に、どちらが国際政治の中で潮流になるのか。それは、米国と他の国の力関係にある。
16・日英同盟の仕掛け人は、実は日本人でも英国人でもない。仕掛けたのはドイツ人である。
17・真珠湾攻撃が行われたとき、「最大の喜び」を感じていた人が英国首相チャーチルである。
18・ケナンは、米国戦争史の結論として、「米国のとっての戦争の目的は、敵の抵抗と能力とを全面的に破壊し、無条件降伏を求めることである」と記述している。
19・日本の対外姿勢で顕著なのは、「情報」を基礎に政策を出すのではなく、まず自分の利益で「政策」を決め、それに合致する「情報分析」を持ってくる点である。

戦略がすべて』滝本哲史 新潮社  2015年12月 253項

エッセンスをまとめました。

1・戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み・弱みを分析して、他の人とは全く違う努力をすることである。
2・戦略思考を身につけるためには、ケーススタディーを大量にこなすという擬似トレーニングが必要である。
3・身の回りに起きている出来事や日々目にするニュースに対して戦略的に勝つ方法を身につけることが大切である。
4・コンテンツを束ねるプラットフォームを作ることは、様々なリスクを軽減して、ビジネスに永続性を持たせることに有効な手法だといえる。
5・プラットフォームビジネスは、人、物、金、情報をネットワーク化することで、そのネットワークの流量が増えるにしたがって、そのハブであるプラットフォームは、利益を独占し、リスクを回避できる。
6・鉄道会社も鉄道というインフラを軸に、利用者の生活に欠かせないサービスを提供していくことで、そのハブとしての利益を得ることができる。
7・プレゼンテーションは、「聴衆が何を求めているか」で見せ方が決まる。
8・日本独自のポジショニングは東西を超えた、技術と伝統、発展と環境の調和、融合である。
9・不確実な状況下で、効率よく解を見つけ、自分の能力を差別化し、組織目標に貢献する」というのは資本主義のルールと一致する。
10・既存メディアとネットビジネスとの戦いは、人の知恵とコンピューターアルゴリズムの戦いだ。
11・人の知恵とコンピューターの計算を融合させたハイブリッドモデルが勝利する。
12・企業は、商品市場、資本市場、そして、人材市場で評価されている。
13・自分が属する業界のことを知りつくし、かつ、新しい仕組みについてのアイデアを持てば、起業は成功する確率が高くなる。
14・「個人の能力と才能と努力」を最大化するには、組織による戦略的マネジメントが重要。
15・合議制、効率性からイノベーションは生まれない。
16・社会も企業も個人も、一見非効率でみんなが賛成しない戦略的な投資を一定の比率で行う必要がある。
17・教養という知識を学ぶことと同様の努力をもって、多様な人的ネットワークを構築することが個人の「教養」を深める方法として有益という結論になる。
18・多くのイノベーションは、他の異なる考え方を組み合わせることによって生まれる。そうなるとイノベーションを起こすための隠れた武器庫は、自分の知らない思考様式、学問体系、先端的な知識にならざるを得ないのだ。

社会人のリベラルアーツ 本物の知性を磨く』麻生川静男 祥伝社 2015年10月、378項

エッセンスをまとめました。

1・リベラルアーツのゴールは、世界各地の文化のコアをしっかりつかむこと。その上で自分なりの確固とした世界観と人生観を作ること。
2・他国人を理解するのは、その人個人を知るだけでなく、その人が生まれ育った文化背景も含み、トータルとして理解することが現在のグローバル環境では必要である。
3・最終的にリベラルアーツを学ぶ目的とは、世界のあり方(世界観)や自分の生き方(人生観)に自信を持つことで、グローバル社会でも臆することなく活躍することができるようになることである。
4・グローバル時代のビジネスパーソンが修めるべきリベラルアーツに至るには、「自由精神」を持ち「文化のコアをつかむ」ことである。
5・自由精神を持った人間は、たとえ結果的に同じ行動をすることになっても、必ず自分で考え納得した上で行動する。
6・リベラルアーツは、知識の総体を次の4つの視点から理解することで、各文化のコアを理解しようとするものである。
①人間の心のしくみ
②人間社会のしくみ
③自然界のしくみと自然の利用
④技の洗練・美の創造

7・歴史は人としての生き方を知るためのドキュメンタリーである。
8・歴史というものは人間の本性や人間社会について考えさせてくれる解答付きの問題集である。
9・歴史は単なる歴史学ではなく総合的な学際的科学である。
10・世界観を持つとは、「世界がどう動いてきたか、そして今後どう動くか」ということを自分の言葉で語れることである。
11・古典を読む価値は、
①当時の価値観で書かれている。
②時代を超越して通用する人生観、価値観が分かる。
12・日本では古来、何かにつけ能力よりも血統が重視された。
13・六国史を読むと、日本人の根源的な性質(一律昇進、能力より血統重視、儒のコア概念の無視)が1000年代以上にわたりほとんど変化していないことが分かる。
14・ユダヤは宗教を生み、ギリシャは哲学を生み、ローマは法を生んだ。
15・哲学・心理・社会分野
・プラトンのイデア論
・ビザンティンのキリスト教父たちの神学(三位一体論)
・トマス・アキィナスの神学大全
・カントの純粋理性批判
・マルクスの唯物史観
・フロイトの夢理論
・ケインズの経済理論
16・自然現象・物理現象の分野
・アリストテレスの宇宙論
・ユークリッドの幾何学
・ケプラーの天体の運動理論
・アインシュタインの相対性理論

17・ヨーロッパの科学技術が発達した4つの理由
①ヨーロッパでは「原理・法則の追求」をするが、中国・日本はそうでない。
②ヨーロッパでは、各国の科学者たちが自由に情報交換するが、中国(および日本)は情報を秘匿する。
③ヨーロッパでは、科学者たちは2つのグループに分かれて対立する。
④ヨーロッパには、科学と技術発展の相乗効果があった。

18・学者の自由とは、
①自由な議論が可能なこと。真理以外の権威を認めない。
②自由な国際的交流、国境を超えた学術支援が行われる。
③学者は社会的身分に関係なく、業績で評価される。

総理の演説 1945~2015 所信表明・施政方針演説の中の戦後史』田勢康弘  basilico
2105年8月、670項
エッセンスをまとめました。

1・福沢諭吉が「speech」に「演説」という仏教語を充てたと言われているが、その福沢は「日本が欧米と対等の立場に立つためには演説の力を附けることが必要」と述べた。

2・伊藤博文から安倍晋三にいたるまで、自分で演説原稿を書いた総理はまずいないだろう。

3・総理大臣の演説は覚えていなくとも、アメリカの大統領、たとえばリンカーンのゲティスバーグ演説(人民の人民による人民のための政治)とか、ケネディ大統領の就任演説(国があなたに何をしてくれるかでなくあなたが国のために何ができるかを考えよう)などはほとんどの日本人が知っている。それはなぜなのだろうか。政治は言葉である。そのことをしっかり認識し、今後、総理大臣ばかりでなく政治家の演説に注目が集まるようになれば、政治はきっと変わる。

4・吉田茂 1949年 わが国は非武装国家として、列国に先んじてみずから戦争を放棄し、軍備を撤去し、平和を愛好する世界の輿論を背景といたしまして、世界の文明と平和と繁栄とに貢献せんとする国民の決意をますます明らかにいたしまして、文明国世界のわが国に対する理解を促進することが、平和条約を促進する唯一の道と私は考えるのであります。軍備のないことこそ、わが国の安全幸福である。

5・吉田茂 1952年 政府は、世界平和維持のため国際連合及び民主主義諸国家とますます緊密にし、ことにアジアにおける平和と安定の増進に寄与するため、アジアの民主主義諸国との相互理解を深め、これらの国交に特別の注意をいたしたいと存ずるのであります。

6・鳩山一郎 1956年 わが国が国力と国情に相応した自衛力を整備いたしまして、みずからの手でみずからの国を守り得る態勢を整えて、米駐留軍の撤退に備えることが必要なことは申すまでもないことであります。

7・石橋湛山 1957年 他力本願の思想を一掃し、独立自主、自力更生の思想をふるい起こし、国力の増進をはからねばなりません。今後、わが国は、国際連合を中心として、世界の平和と繁栄に貢献することを、わが外交の基本方針とすべきものと思います。

8・池田勇人 1960年 現在の国際情勢下においてわが国が平和外交を推進いたしますためには、たとえ政治理念や社会体制を異にする諸国とも平和裏に共存していかなければなりません。平和外交の本旨にのっとり、共産主義諸国に対しても、あとう限り友好関係の増進に努める所存であります。

9・政府は、今後10年以内に国民所得を二倍以上にすることを目標とし、この長期経済展望のもとに、さしあたり来年度以降3カ年間につき、年平均9%の成長を期待しつつ、これを根幹として政府の財政経済政策の総合的な展開を考えているのであります。

10・社会保障の充実には、もとより巨大な公的財源を必要としますが、その財源は経済の成長を通じて確保されます。他面、経済の成長は、社会保障の充実、公共投資や減税政策の推進に依存するところが大きいのであります。

11・佐藤栄作 1964年 私は、政治の基本的な姿勢を寛容と調和におき、あらゆる分野において、民主主義が正しく実現されるよう努力し、国民とともに進む政治を行うことを信条といたします。

12・永続的で安定した世界平和は、東西間の平和共存のみで達成されるものではなく、まして、世界の平和を米ソ両国関係の動向にのみ依存せしめるべきではありません。軍縮、南北問題、植民地及び人種差別問題等の解決が恒久的世界平和の実現に不可欠の要件であります。国際連合こそ、これらの問題の総合的、かつ、秩序ある解決を促進するための主たる役割りを果たすべきであります。

13・田中角栄 1972年 日中国交正常化、日本列島改造。新しい時代には新しい政治が必要である。 

14・三木武夫 1975年 私の主張するように、量的拡大の時代から、生活中心、福祉重視の質的充実の時代へ転換するためには、地方行政の果たす役割は一層大きなものになってまいります。

15・福田赳夫 1977年 人間こそはわが国の財産であり、教育は国政の基本であります。私は、教育を重視し、その基調を、個人の創意、自主性及び社会連帯感を大切にし、世界の平和と繁栄に貢献し得る、知、徳、体の均衡のとれた豊かな日本人の育成に置きたく思うのであります。特に戦後の学校教育は、入試中心、就職中心の功利主義的な行き過ぎた傾向が目立っておるのであります。教育にとって一番大切な、自由な個性、高い知性、豊かな情操,思いやりの心などを育てることを忘れがちであると思うのであります。

16・大平正芳 1979年 日本の平和と安全を確保することは、政治の最大の責務であります。そのためには、節度ある自衛力と、これを補完日米安保条約とからなる安全保障体制を堅持することが必要であります。しかし、真の安全保障は、防衛力だけで足りるものでありません。世界の現実に対する冷厳なる認識に立って、内政全般の秩序正しい活力ある展開を図る一方、
平和な国際環境をつくり上げるための積極的な外交努力が不可欠であることは申すまでもありません。今日、国民の間には、民主主義の基本に関する合意がすでに形成されるに至っております。その一つは、議会制民主主義に基ずく政治の運営であり、一つは、秩序と活力のある自由市場経済の維持であり、一つは、内政外交を通ずる総合的な安全保障の維持であります。
17・中曽根康弘 1982年 わが国外交の基本は、欧米をはじめとする自由主義諸国の一員として、これらの国々との協調のもとに、自主的な外交努力を行うことにあります。

1985年 我が国の平和と安全を確かなものにするためには、総合的な安全保障の観点に立ち、外交、経済協力、資源エネルギー及び食糧の確保等の各種施策の推進に努めるとともに、厳しい国際情勢に対応して、他の諸施策との調和に配慮しながら、防衛力の適切な整備を図ることが必要であります。
このため、日米安全保障体制の円滑、かつ、効率的な運用を図りながら、必要な限度において、質の高い、効率的な自衛力の整備を進めてまいります。もとより、平和憲法のもとで専守防衛に徹し、非核三原則とシビリアンコントロールを堅持し、近隣諸国に軍事的驚異を与えないという従来からの方針には、いささかの揺るぎもありません。

1987年 我が国外交の基本は、世界の平和と繁栄のため、国連憲章を守り、価値観を共有する自由世界の連帯と団結を進め、アジア・太平洋の一員として地域の発展に貢献し、自由貿易を推進しつつ、開発途上国の経済と福祉の増進に積極的に協力することにあります。
18・竹下登 1988年 最重要課題は消費税導入。
教育問題につきましては、国際社会の中でたくましく活動できる個性的で心豊かな青少年の育成はもとより、生涯学習の推進など、引き続き教育改革に取り組んでまいります。私は、内需主導型の経済を定着させつつ、経済構造調整の努力を一層進めますとともに、主要国間の政策協調を図ってまいる所存であります。

19・海部俊樹 1989年 平和国家に徹するとともに、世界の平和と繁栄のために汗を流していくことにあると思います。わが国は、憲法のもと、他国に脅威を与えるような軍事大国への道を歩まず、節度ある防衛力の整備に努めるとともに、国家平和と軍縮そして繁栄という崇高な目標に向けて、主体的に貢献していく方針であります。
私は、世界に向けてより大きな責任と役割を果たす国際協力構想に一層積極的に取り組み、この構想の三つの柱である、平和のための協力、ODAの拡充及び国際文化交流の強化をさらに具体化し、発展させてまいります。

20・宮沢喜一 1991年 冷戦が終わり、新しい世界平和の秩序を構築する時代が始まった。
私は、国民の一人一人が、生活の豊かさを真に実感しながら、多様な人生設計ができるような社会の実現を目指したいと思います。このため、私は、21世紀を展望しつつ、中央、地方にわたって、住宅や生活関連を中心とする社会資本の充実を図り、質の高い生活環境を創造して、所得のみではなく社会的蓄積や美観などの質の面でも、真に先進国と誇れるような、活力と潤いに満ちた、ずしりと手ごたえのある「生活大国」づくりを進めていきたいと思います。

21・細川護煕 1993年 外に向かっては大国主義に陥ることなく、内にあっては、文化の薫り豊かな質の高い実りある生活様式を編みだし、美しい自然と環境を将来のために残していくことを何よりも大切だと思っております。

22・羽田 孜  1994年 外交は生き物であり、筋を通した姿勢を保ちつつも、そのときどきの情勢に応じて、将来を見据えて最も適切な判断を下していかなければなりません。「簡潔で賢明」な政府をつくり、活気ある経済を育て、弱い立場の人を守っていくこと、これらの目標に誰もが異論のないところだと信じます。

23・村山富市 1994年 世界に向かっては、さきの大戦の反省のもとに行った平和国家への誓いを忘れることなく、我が国こそが世界平和の先導役を担うとの気概と情熱を持って、人々の人権が守られ、平和で安定した生活を送ることができるような国際社会の建設のために積極的な役割を果たしてまいりたいと思います。今こそ、わが国が、その経済力、技術力をも生かしながら、紛争の原因となる国際間の相互不信や貧困等の問題の解消に向け、一層の貢献を果たすべきであります。

1995年 国家は人によって栄え、人によって滅ぶと申します。教育を通じて、個性と創造性にあふれ、思いやりの心を持った人間を育てることは、国づくりの基本であります。いわゆる偏差値偏重による受験競争の過熱化を緩和するために、また、我が国の教育が、国際化、情報化、科学技術の革新といった変化に、より適切に対応し得るよう、いま一度教育上の課題を見直し、うり魅力的な、そして心の通う教育を実現するために教育改革を推し進めていかなくてはなりません。

24・橋本龍太郎 1996年 科学技術の振興は、人類共通の夢を実現する未来への先行投資であります。外交面での私の基本方針は「自立」であります。かつてのように世界の政治経済情勢を与えられた前提として行動する国家としてではなく、今や我が国は、従来型の国際貢献からさらに歩を進め、国際社会に受け入れられる理念を打ち立て、世界の安定と発展のためにみずからのイニシアティブで行動する国家であるべきであります。

25・小渕恵三 1998年 資金は社会の血液であり、その循環をつかさどる金融機関は心臓の役割を担っております。
子供たちが自分の個性を伸ばし、自信を持って人生を歩み、豊かな人間性をはぐくむよう、心の教育を充実させるとともに、多様な選択のできる学校制度を実現し、現場の自主性、
自律性を尊重した学校づくりや、国際的に通用する大学を目指した大胆な大学改革を推進するなど、教育改革に引き続き力を注いでまいります。

26・小泉純一郎 2001年 日本が平和のうちに繁栄するためには、国際協調を貫くことが重要です。二度と国際社会から孤立し、戦火を交えるようなことがあってはなりません。日本の繁栄は、有効に機能してきた日米関係の上に成り立っております。日米同盟関係を基礎にして、中国、韓国、ロシア等の近隣諸国との友好関係を維持発展させていくことが大切であります。我が国は、国際社会を担う主要国の一つとして、21世紀にふさわしい国際的システム構築に主導的役割を果たしてまいります。その一環として、国連改革の実現や、世界貿易機関を中心とする自由貿易体制の強化、さらには地球環境問題などに主体的に取り組みます。

27・鳩山由紀夫 2009年 公共事業依存型の産業構造を、「コンクリートから人へ」という基本方針に基づき、転換してまいります。暮らしの安心を支える医療、介護、未来への投資である子育てや教育、地域を支える農業、林業、観光などの分野で、しっかりとした産業を育て、新しい雇用と需要を生み出してまいります。

日本が地球温暖化や核拡散問題、アフリカを初めとする貧困の問題など、地球規模の課題の克服に向けて立ち上がり、東洋と西洋、先進国と途上国、多様な文明お間の架け橋とならなければなりません。

28・菅 直人 2010年 新成長戦略では、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、アジア経済、観光・地域を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として科学転換して技術と雇用・人材に関する戦略を実施することといたしております。

我が国は、太平洋に面する海洋国家であると同時に、アジアの国でもあります。この二面性を踏まえた上で、我が国の外交を展開します。具体的には、日米同盟を外交の基軸とし同時にアジア諸国とも連携を強化します。

29・野田佳彦 2011年 国際社会の抱える課題を解決し、人類全体の未来に貢献するための、私たち日本人にしかできないことが必ずあるはずです。新たな時代の開拓者たらんという若者の大きな志を引き出すべく、グローバル人材の育成や、みずから学び考える力をはぐくむ教育など、人材も開発を進めます。

多極化する世界において、各国との確かなきずなをはぐくんでいくためには、世界共通の課題の解決にともに挑戦する大きな志が必要です。

政治とは、相反する利害や価値観を調整しながら、粘り強く現実的な解決策を導き出す営みです。

30・安倍晋三 2013年 大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略。三本の矢で日本経済を再生する。
外交は、単に周辺諸国との二国間だけを見詰めるのではなく、地球儀を眺めるように世界全体を俯瞰して、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値に立脚し、戦略的な外交を展開していくのが基本であります。大きく成長していくアジア太平洋地域において、我が国は、経済のみならず、安全保障や文化・人的交流など、さまざまな分野で先導役として貢献を続けてまいります。

2015年 積極的平和主義の旗を一層高く掲げ、戦後70年にふさわしい一年に
戦後一千六百万人を超えていた農業人口は、現在二百万人。この70年で八分の一まで減りました。もはや、農業の大改革は待ったなしであります。

企業のグローバル化は一層進み、国際競争力に打ち勝つことができなければ、企業は生き残ることができない。日本を世界で最もイノベーションに適した国にする。世界中から超一流の研究者を集めるため、世界最高の環境を整えた新たな研究開発法人制度をつくります。ITやロボット、海洋や宇宙、バイオなど、経済社会を一変させる挑戦的な研究を大胆に支援してまいります。

湛山読本 いまこそ、自由主義、再興せよ』船橋洋一、東洋経済新報社、2015年12月、
493項
エッセンスをまとめました。

1・戦後、湛山は自由思想の研究と普及を目的として、「自由思想協会」を立ち上げた。
「自由思想協会趣旨書及び規約」(1947年11月)によると、自由思想とは、以下のような考えである。
①第一に、権勢、伝統、学説、人種、派閥、階級および先入観などの一切の束縛から解き放たれ、物事を自由に考える。とくに、どんな権勢であろうと、それに「阿諛する者」であってはならない。そこに流れているのは「独立自尊」の精神である。
②第二に、自らと違う意見や利害関係を異にする者の主張を頭から排斥する態度をとらない。それを冷静に批判し、その中のよい点があればこれを受容する寛大の精神を持つ。異論に耳を傾け、よいものは摂取する、前向きな寛容の精神のことである。
③第三に、すべての問題を現実の生活に即して思考する。現実の生活に少しでも役立つアイデアを取り入れる。何事も環境の変化に適応し、新陳代謝を図る必要がある。それには、現実主義と実務主義の精神が求められる。

2・自由主義の政治は、違う考えを持つ人々の間の「橋渡し」を勢力的に行う点に特徴がある。それは、他の政治勢力との連携と連立を図り、その過程で最大公約数的な「中道」を確かめ、現実主義的かつ実務主義的に何が可能かを見きわめ、政策を実現していく政治である。「中道」を得るには、複数の政治勢力の間の均衡を保つことが重要である。

3・湛山は、第一次世界大戦を「デモクラシーの勝利」と見なし「内政においては、少数政治の滅亡にして多数政治の勃興である。経済政策においては、無制限自由主義の否認にして公益主義の確立である。外政においては帝国主義の衰退にして国際連盟主義の進展である」と論評した。

4・21世紀。自由主義は再び、巨大な挑戦を受けつつある。9.11テロ後の個人の自由と国家安全保障の緊張、ネット社会下のサイバーセキュリティへの脅威とプライバシーの侵害、イスラム原理主義の台頭と宗派間の憎悪の増幅、ロシアの民族ポピュリズム、中国の市場専制主義・・・そして、ほかならぬ近代自由主義の発祥地である欧米諸国で、年金・医療費膨張による財政危機、シルバー民主主義下の「多数の専制」、格差の拡大、反移民と反文化相対主義に示される排他的民族主義、などが自由主義を内側から脅かしている。

5・確実に言えることは、日本の「失われた時代」はなお、終わっていないということである。その根本要因はなお克服されず、今後ますます重圧として日本にのしかかってくる恐れがある。それらの要因としては、財政危機、人口蒸発と少子高齢化、地方消滅・首都圏崩落、グローバル化とデジタル化による日本の産業競争力のさらなる後退と機会・所得・資産の格差の拡大、中国の超大国化と東アジアの秩序の再編、それに触発される民族主義とポピュリズムの激発、政党民主主義の衰退・・・などを挙げることができる。

6・自由な企業活動と起業家精神と個々もイニシアティブを活発にし、生産性を向上させなければならない。既得権益層(高齢者のそれを含めて)の壁をぶち破り、親方日の丸への依存心を断ち切らなければ、やる気のある企業も個人も逃げていき、国は破綻する。

7・民主主義には本来的に財政赤字を生む構造がある。民主主義はどれだけ多くの票を獲得するかのゲームであり、そのためにできるだけ多くの人々の欲望を満たす力学を内在的に組み込んでいる。それはまた、何でも税金や政府に頼ろうとする依存心を人々に植え付ける。とりわけ高齢化社会になると、年金と医療費を中心に高齢層の政府への依存心は一層高まり、若年層の不利、高齢者に有利なシルバー民主主義を生み出す傾向にある。

8・自由主義の再構築は国家社会において「自由で開放的な国際協調主義(リベラル・インターナショナル・オーダー)」を再び強化し、専制資本主義とアジアモンロー主義による新体制を志向する中国に対する関与と均衡と抑止の力をそれぞれ強めるためにも重要である。

9・自由はいうまでもなくわがまま勝手を意味しない。わがまま勝手は人間に決して自由を与えるものではないからだ。ゆえに正しき意味の自由主義の自由は、社会生活に必要なる一定の秩序と規律とを尊重し、各人の義務として、進んでその束縛を受ける自由でなければならない。

10・政府でなく社会をもっと強くする必要がある。大きすぎる政府は、社会を萎縮させる。個人をもっと強くする必要がある。企業をもっと競わせる必要がある。地方をもっとたくましくする必要がある。起業家精神に富み、冒険心に溢れ、イニシアティブ豊かで、人見知りせず社会のさまざまな輪に参画し、多様な背景を持つ人々と競争も協調もできる独立心の強い個々人が主役でなければならない。

11・保守は、人間の本性が変わることはないという思想において保守なのである。

12・粘着力のある思考法と物事の本質を結晶化させる硬質の批判力を磨いた。

13・改革を華はだしく掲げ、政権を取った野党新政権も最大の鬼門は昔も今も、外交と安全保障である。

14・弁証法的説得術。自由主義者が心がけなければならないことは、その正論が一部の強者の「一人勝ち」をもたらすのでなく、「みんなが勝者となる」の論理とストーリーを説得的に語ることである。
15・「権勢に容易に屈する思想態度」ゆえに、日本は時に、雪崩を打って間違えるのである。
16・思想の両極分断、排除の論理、匿名による性格暗殺、言論テロ、公への参画を忌避するサイレント・マジョリティ現象、中道の空洞化、党利党略の横行。まさに今日のネット社会の思想・言論状況により露わに表出される現象 -に湛山は警鐘を鳴らしたのである。

17・政策決定過程の真相を解明し、統治と政治のからくりを解剖し、国民の権利と責任のあり方を提示し、日本の国益と戦略の輪郭を押さえた上で、国民が正しい判断を下せるよう、情報と分析を提供する、そのような権力監視機能をメディアは果たせなかった。

18・日本のメディアは天下国家の経綸を読者に伝えるのだという気概に乏しい。

19・新聞、とくに社説は他を批判するだけで自ら提言をすることはない。

20・専門的かつ実務的なオピニオン、多様かつ対立的な視点、歴史的かつグローバルな視野、を提供する社説と論評をコラムとブログを擁することが必要である。

21・外交当事者が秘密主義に凝り固まり、強硬論を振りかざした場合、外交は必ず失敗する。

22・「朝鮮台湾樺太も棄てる覚悟をせよ。中国や、シベリアに対する干渉は、もちろんやめよ」。湛山、よく言った。よくぞ、言い切った。明確、鮮明で、かつ力強い。脱植民地の小日本主義は全世界の軍縮の予定調和ともいうべき平和構想を思い描いていた。その理念はウィルソン主義(「民族自決」「平和主義」「公開外交」)とそれに基づく「新外交」に象徴される時代の潮流をしっかり踏まえていた。時代の流れと国際環境の変化によりよく適応し、長期的な国益を追求するための戦略構想にほかならなかった。

23・政界の最大の欠陥は、民族の勢力を組織化する中心人物がいないことだと述べたが、実は人物がいないのではなくて、思想がないのである。

24・日本は、欧米型のキャッチ・アップ型発展をほぼ達成した後も、その先のビジョン形成と政策展開が十分にできないまま、グローバル化とデジタル化の波に投げ込まれた。そこは先進的事物への適応条件と適応時間に革新的変化が生まれた。日本より後進の国々が一気に先進的事物にアクセツ(グローバル化)、世界大規模の市場を手にし(デジタル化・ネットワーク効果)、しかも適応懐妊期間を一気に短縮することが可能になった。

25・日本海と東シナ海が日本と大陸との間に一定の距離を与え、それが戦略的緩衝地帯となり、日本は古代から安全保障上の黒字の恩恵を受けてきた。日本はその戦略的空間の尊さを今一度かみしめなければいけない。ユーラシア大陸とは一定の戦略的、心理的距離感を保つのが望ましい。

21世紀 地政学入門』船橋洋一 文春新書 2016年2月、285項

エッセンスをまとめました。

1・日本は戦後長い間、自らの安全を直接脅かす地政学的葛藤に巻き込まれずに済んできた。だが、そうした牧歌的な時代は終わりつつある。

2・北朝鮮が崩壊する可能性が強まっている。北朝鮮はこのままでは、爆発(外)か自爆(内)の爆発のいずれのシナリオもありうる際どい状況に向かいつつあるように見える。

3・世界各地から出席した二十人近い戦略問題の研究者とともに、世界の「未来地政学」をさまざまな角度から分析する得難い経験をした。その時、重ねて聞いた質問が「何がブラック・スワン(黒い白鳥=事前に予測できず、起きた時の影響が大きい事象のこと)だろうか」だった。そも時、ブラック・スワンは、「米国のエネルギー独立」達成だ、米国がエネルギー輸出国に変貌することだ、と答えた人は一人もいなかった。「中国の弱さ」だと答えた人もいなかった。ブラック・スワンを空想の世界に描いてみてもそれほど意味はない。未来は、予め約束されていないし、呪われてもいない。それは、メガトレンドとゲーム・チェンジャーと人間の営みの相互作用の結果である。その主役となる「人間」を見いだす
ことが「未来」を読む上でカギになるのではないか。なぜなら、未来は人間がつくるものだからである。

4・直面する危機がいったいどのような危機であるのか、その意味は何か、を明確にすることである。危機に伴うさまざまな雑音の中から信号をつかみ出し、それを国民に伝える能力である。

5・米国の政策コミュニティの対中観は一様でない。五つのグループに分けることができる。
①対中ロマン派 キッシンジャー等が中心。1970年代の対中正常化を原点とする中国との「共生」路線を志向する。
②同盟第一派 日米、米韓、米豪を中軸とする同盟基軸論者。米国のアジア政策も最大の眼目は、同盟国との関係強化と政策協調であり、対中政策はその文脈を踏まえて形作るべきだと考える。アーミテージ元副国務長官を代表とする。
③対中敵視派 中国を経済、軍事、イデオロギー面の脅威と捉え、中国を「戦略的競争相手」とみなす。チェイニー元副大統領やラムスフェルド元国防長官らのかつてのネオコンがその典型。
④対中総動員派 同盟もASEANも国際機関も世界世論もありとあらゆる資源を総動員して、中国の挑戦に全面的に対応するべきだと主張する。クリントン前国務長官やキャンベル前国務次官補がその代表。
⑤グローバル協調派 気候変動や対テロなどのグローバル・イシューでの米中協力を重視する立場。
オバマ政権は、2009年の発足後は、「戦略的再保証」という関与政策を掲げ、ほぼ①の立場を取っていた。しかし、10年夏から秋にかけて④へとシフトした。その帰結が「アジア軸足」戦略である。

6・外交には「バカなことをしない」外交と「バカなことをする」外交と「スマートなことをする」外交の三つがある。米国の場合、もう一つ、国民が「夢のある」外交を期待していることもある。米国の理念に似せて世界をつくりたいという理想主義的外交である。

7・事実を追うだけではない。事実に語らせるだけでもない。事実の中の「新生事物」を見いだし、その意味を探り、そこから世界をシステム的に捉え直す「視点調査報道」が大切である。

8・日本の問題は人口ではない。それは、挑戦精神の衰えである。

9・とくに若者は、歴史、財政、人口、英語、放射能の五重苦に苦しめられることになるだろう。

10・靖国神社参拝が中国の避難を浴び、日本の常任理事国入りつぶしの口実に使われるような国益を失うことを首相自らやるのか。怒りというより悲しい。

11・米国の衰退、朝鮮半島の核、中国の台頭、文明の衝突、グローバリゼーションなど、21世紀の国際政治のメガトレンドは、いずれも日本を孤立感へと突き動かす危険性を秘めている。私が危ぶむのは、日本国内の独善主義と一国主義である。世界とたくましく、かつしなやかに交わることができない孤立感こそが孤立を招く。

12・日本が靖国神社の英霊を国家神道的に慰霊しようとすればするほど、中国もロシアもそして米国も、「反ファシスト戦争」の正統性を声高に言うことになる。

13・戦後という日本の成功物語の歴史の水脈と、憲法と日米同盟の二本柱に基づく国益の土台を自ら破壊する国を待っている運命は、泥沼も孤立であることを知らなければならない。

14・安全保障より社会保障を求める高齢者の抵抗、いわば「シルバー平和主義」の日本は、米国にとって魅力のある同盟国と見なされないなるリスクがある。米国の同盟国である日本と多くの欧州諸国は、似たような少子高齢・人口減少国家となり、いずれも「シルバー平和主義」の色彩を強めるため、米国へのただ乗りをさらに政治問題化させ、同盟構造をきしませる可能性がある。

インテリジェンス 国家・組織は情報をいかに扱うべきか』小谷 賢、ちくま学芸文庫
2012年1月、305項
エッセンスをまとめました。

1・アメリカ国家情報長官室によると、国家インテリジェンスは以下の機能を担っているという。
①敵国に漏洩させることなく、政策決定者に対して有効な判断材料を提供する。
②潜在的な脅威について警告する。
③重要事件の動向に対する情勢判断。
④状況の認知、確認。
⑤現在の状況に対する長期的な戦略的評価。
⑥国家の重要会議の準備、またその保全。
⑦海外出張の際の秘密保全。
⑧現在進行形の情勢に対する短期的な観測。
⑨重要参考人(特にテロ関連)に関する情報の管理。

2・CIAの情報分析官を務めることになる(1949年)シャーマン・ケントは、インテリジェンスの概念を「知識、組織、活動(機能)」に分類している。彼の定義によるインテリジェンスとは、①国家が国益を追求するために不可欠な知識(情報)、②情報を扱う専門の組織、③情報収集や分析、そして政策決定者による利用までを含む一連のプロセス、の意味を内包しているのである。

3・インテリジェンスとは単なる知識や情報ではなく、国力の源泉の一つである。その力が発揮されるためには、適切なタイミングで使用されなければならない。

4・フローチャートや相手の「強み、弱み、機会、脅威」を分類するSWOTマトリックス、ネットワークを視覚化するリンクチャートなどもデータの整理によく利用される。

5・ハニートラップは性を利用して相手から情報を引き出したり、その行為自体を相手の弱みとする工作である。買春は人類の歴史においてもっとも古い商売の一つであるといわれているが、敵の秘密を盗むスパイも同様に古い。

6・アメリカでは今も大統領の許可があれば海外での暗殺は可能なようである。しかし、暗殺は発覚した際の政治的リスクや、そもそもルール自体が存在しないことを考えると、欧米民主主義国には難しい工作である。

7・アメリカでは政策サイドがインテリジェンスに目を通す時間は一日にわずか10-15分しかないと言われているため、情報サイドは短時間のうちにインテリジェンスの要点を説明できる能力も問われるのである。

東洋哲学 悩めるエリートを熱狂させた超人気講義』 マイケル・ピュエット、クリスティーン・グロス=ロー、早川書房、2016年4月、245項

エッセンスをまとめました。

1・壇上に立ったのはマイケル・ビエット教授。「ハーバード白熱教室」で知られるサンダーズシアターに集まった700人を超える学生に熱く語り始めた。人を魅了せずにおかないと評判の教授の講義はちょっと変わっていて、講義資料もスライドもない。毎回、教授が50分をひたすら熱弁をふるう。学生に与えられる課題は、古代の哲学者が残したことば-孔子の『論語』、『老子道徳教』、『孟子』などの英訳を読んでくることだけ。

2・孔子とソクラテスとブッタがほぼ同じ2500年ほど前に似通った哲学的な問題に取り組んでいたのはなぜだろう。しかも、三人は全く異なる土地で生き、互いに遠く隔てられ、話す言葉もまるで違っていた。実を言うと、技術革新や科学技術や思想は、ずっと昔から地球上を移動していた。

3・今日の西洋で一般的にいきわたっている信条とそっくりなものが中国でも生まれていた。ところが、中国ではそのような思想は敗北し、これに対抗して全く異なるよい人生へ向かうことを主張する別の思想が出現した。

4・心理学者であり哲学者であったウィリアム・ジェームス(1842-1910)
はかって、”人は自分を知る人の数と同じだけの社会的自己をもつ”と書いた。驚くほど孔子的な意見だ。人にはそれぞれ無数の役割があり、役割同士が対立することも多いうえ、それをあやつる手綱さばきを教えてくれる規範もない。礼の実践だけが手綱さばきを身につける助けになる。

5・人生は日常にはじまり、日常にとどまる。その日常のなかでのみ、真に素晴らしい世界を築きはじめることができる。

6・私たちは論理的に決断する能力を備えた理性的な生きものだ。リスクと効果を天秤にかけ最大の努力で最善の結果をあげようとする。もう一つは「本能的な勘」モデルを選び、自分がなにを「正しい」と感じるかという直観をもとに判断をくだす。最終的に、大多数の人はこの二つをいろいろ組み合わせて使っている。

7・じつは第三のやり方がある。常に感情の感度を研ぎ澄まし、感情と理性が協調して働くようにすれば、将来を閉ざしてしまう決断ではなく、前途を切りひらく決断をくだすことができる。好ましい反応によって好ましい道筋をつけることで、状況と人間関係の両方を並行して修正していけるはずだ。

8・孟子は、状況の複雑さを十分に見抜く力をつちかう一つの方法は、どうすれば自分の行動が建設的な道筋につながるかを読み解く能力をつちかうことだと考えた。そして、誰もがそうできる素質、すなわち善の素質を備えて生まれてくると考えた。

9・人間の本性は潜在的に善だが、遭遇するものによって失われることも、ゆがんでしまうことも、変質することもある。孟子も言っている。

10・実践の経験から得たとしても具体的な知識だ。時間とともに、想像もしなかった道がひらけ、それまで気づくことさえなかった選択肢が姿をあらわす。人生のすべてがどう進展するか計画を練ることはできない。しかし、ものごとが決まった方向へ進みやすいような状況、すなわち可能性が豊かに実る状況をつくるという観点から考えることは可能だ。

11・転変きまわりない世界に生きることは、人の行為がかならず報いられる道義にかなった安定した宇宙に生きていないと受け入れることだ。しかし同時に、自分の身になのが降りかかろうと、常に驚きに備え、どう対処するかを学ばなければならない。

12・「自分は何者か」とか「いかに人生を設計すべきか」といった大問題を問うものとは大きく異なる。むしろ、日常レベルでささいな変化を起こすよういつも努力するという話だ。それができれば、自分のまわりにすばらしい共同体をつくることができ、そこで人々は繁栄する。

13・強くなるために弱くなる。真の影響力は、あからさまな強さや意志ではない。影響力は、あまりに自然でだれも疑問を持たないような世界をつくりあげるところから生じる。老子のいう聖人は、このようにして絶大な影響力を振るう。

14・『荘子』は、いかに世界のあらゆるものが、移動と相互作用、流転と変遷のダンスをたえず踊りつづけながら、ほかのあらゆるものに転変しているかを繰り返し強調している。道は、相反するように見えながら、実際は互いに補完しあうこの二つの要素が絶え間なく影響しあう過程だという。

15・無頓着やマインドレスネス(なにも考えないこと)の反対は、マインドフルネスではない。能動的な関与だ。この本で解明してきた中国の思想は、非常に実践的で、実社会と日々の生活に根ざしている。礼を実践してまわりの人とのかかわり方を向上するようにつとめる。体内のエネルギーを養って、もっと活力あふれた生き方をする。心、すなわち感情と理性の修練につとめ、パターンを打ち破って日々の決断をくだす。常に新しいことを受け入れられるようにする。

世界を動かす巨人たち<政治家編> 池上彰 集英社新書 2016年4月 222項
エッセンスをまとめました。
1・人々の営みによって、歴史は形づくられる。きわめて個性的で力のある人物によって歴史の進路は大きく変わる。
2・東西対立を再燃させる男 ウラジミール・プーチン
①ロシアのプーチンは、悲惨な歴史を持つレニングラード(サンクトペテルブルク)に生まれ育ったことが、「国家は強くなければならない」というトラウマになったのだろうと推測できる。
②プーチンは、公認の伝記の中で、少年時代の自分はワルだったと強調している。喧嘩っ早いことで知られ、10歳ぐらいに柔道や空手、レスリングを合わせたようなロシアの武術(サンボ)を習い始めた。
③KGBに憧れ競争率40倍のレニングラード大学法学部に入学。KGBではドイツ語が堪能で東ドイツのドレスデンに配属され、外国人学生を監視したり、スパイとしてリクルートする仕事を行った。
④東ドイツ出身のメルケル首相は東ドイツではロシア語が必修だったので二人が会話するときお互い母国語で話し、相手の言っていることをそれぞれ理解している。
⑤1990年、ソ連末期のKGBに愛想をつかしKGBに辞表を提出し、翌年、レニングラードの副市長となる。1997年にサンクトペテルブルク国立鉱山大学に論文を提出し、準博士号を得る。この論文はアメリカ人の経営学者がアメリカで出版した丸写しとの疑惑がある。プーチン本人が執筆したかどうかはともかく、この論文の骨子は、豊富な資源を国家の管理下に置くことの重要性を論じたものである。その後のプーチン政権は、論文通りのことを実践している。
⑥1998年、プーチンはKGBの後身であるロシア連邦保安庁(FSB)の長官に就任。再びスパイ組織に入りトップとしてエリツィン大統領を徹底して守り抜く。エリツィンの後任として大統領への切符を手にした。ソ連時代のスパイが新生ロシアのトップになった。
⑦強いロシアの再建をめざし地方の知事の解任権を得て中央集権化を進め、メディアの支配も強めた。社会主義が崩壊した国家で、マルクスが予言したとおりの独占資本主義が成立した。
⑧二期目の大統領就任で政権基盤を固めたプーチンは、任期満了で大統領を退官したら、今度は首相に就任した。メドベージェフを後継者に指名。メドベージェフの身長は162センチ。背が低いことにコンプレックスを持っているプーチンが権力欲を示すことのないメドベージェフを安心して指名し、2012年に再び大統領に就任し2024年まで大統領に留まることが可能となった。
⑨第二次世界大戦の終戦のドサクサにまぎれて北方四島を占領したソ連は、1956年、日ソ共同宣言で、平和条約締結後は、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すことを認めた。しかし、その後も平和条約の話が進まず、また国後島、択捉島に関しては、日本に引き渡す姿勢を見せていない。この問題についてプーチン大統領は2012年3月に「引き分け」という言葉を使って、解決に意欲を見せたが、面積の半分で折り合おうとしているのか等真意を巡って憶測が飛んでいる。
2・「鉄の女」アンゲル・メリケル
①メルメルも、自国だった東ドイツの崩壊を経験している。だからこそ、「ドイツは強くなければならない」という思いを持っているはずだが、ドイツは民主主義国家。きちんと民主的なプロセスを経なければ、自分の思いや主張は実現できないことをよく知っている。②その経験の蓄積が、EUを支える強大なドイツの指導者に仕立てた。しかし、中東からの難民の受け入れという一大決断は、一時は世界から喝采を受けたが、ドイツ国内からは批判を浴び、厳しい立場に追い込まれている。
③メルケルは物理学を専攻する理系女子で典型的な秀才タイプ。目立った活動がなかったメルケルが、1989年11月、ベルリンの壁が崩壊すると、突然変身し、民主化運動に乗り出した。コール首相に評価され初当選にもかかわらず大臣に抜擢された。
④メルケルは原子力発電所の推進派だったが東日本大震災に脱原発の決定を下す。風見鶏のような政治的臭覚がある。
⑤メリケル首相は、サッカー好きであることでも知られている。国民の心をいち早く掴み、果敢に挑戦する女性であり、リケジョらしい合理的な判断があり、これが人気の秘訣である。

3・アメリカ初の女性大統領をめざすヒラリー・クリントン
①ヒラリー・クリントンは、幼少期から女性の立場が弱いことに憤りを持ち、それが彼女を突き動かしてきた。優秀な弁護士となり、アメリカのファーストレディーになるまでは順調な人生でしたが、夫もスキャンダルで苦しみ、大統領戦では思わぬ伏兵であるバラク・オバマに行く手を遮られた。この挫折が今のヒラリーを形成した。
②ヒラリーは、1947年、イリノイ州シカゴで繊維製品の会社を営む家庭に生まれ、父親は頑固で保守的な共和党支持者であった。母親は隠れ民主党支持者であった。
③ヒラリーはウェルズリー大学の総代に選ばれ、ハーバード大学を蹴ってエール大学に進学し、オックスフォード大学に二年間留学し戻ってきたビル・クリントンに出会う。
④ニューヨーク州の上院議員として軍事委員会で実績を積む。オバマ政権の国務長官として最初の外遊は、副長官のジム・スタインバーグの進言で日本を選んだ。アメリカはアジアを重視する。これがオバマ政権下のヒラリーの方針であった。

4・第二の「毛沢東」か 習近平
①幼少期から将来を約束された習近平も、父親が失脚したことで、一時は塗炭の苦しみを味わう。その挫折があったからこそ、今の地位がある。しかし、かつての自分を苦しめた毛沢東そっくりの存在になりつつある。歴史の皮肉を感じる。
②習近平は現在63歳。過去の毛沢東の独裁に懲りた中国は、指導者の定年を68歳にしている。
③血筋と派閥がものを言うのが中国政治の特徴である。熾烈な権力闘争において、突出しないように目立たないように行動することで、周囲の警戒感を削ぎ、徐々に権力の階段を登ることが重要である。
④国民的人気歌手と結婚し、一人娘は、ハーバード大学ケネディスクール(公共政策大学院)を卒業している。
⑤長く共産党の総書記と国家主席を務めた江沢民は、表舞台から姿を消しても、権力を保持し、自分の権力が奪われるのを恐れそこに浮上したのが習近平であった。
⑥習近平の権力の源泉となる「中央国家安全委員会」を新設。情報こそ権力の源泉とし、独裁者としての道を開いた。
⑦独裁者になるには、思想の引き締め、弾圧がつきものであり、中国共産党は2013年、一部の大学に対し、「議論してはいけない七つのテーマ」を指示。それらは、人類の普遍的価値、報道の自由、公民社会、公民の権利、党の歴史的錯誤、特権資産階級、司法の独立である。
⑧習近平は、しきりに「中国の夢」を語り、「中国民族の偉大なる復興」という表現を使い、自らの民族のことを「偉大」という。

ハイブリッド外交官の仕事術 宮家邦彦
PHP文庫 279頁 2016・7
エッセイをまとめました。
1・人脈の本質はあくまで相手の「人間性と能力」に対する強い相互信頼感である。
2・アラブと中国の共通点は、どちらも①世界が自分を中心に回っていると思っている②自分の家族、民族以外の他人を信じない③何よりも面子を重んじる④援助は「させてやるもの」で、「感謝するもの」ではない⑤都合が悪くなると、外国の陰謀論を持ち出す、といった傾向が顕著。
3・開発途上国で良い仕事をするためには、途上国特有の「利益共有」メンタリティを正確に理解する。
4・「定点観測」とは、自分が関心を抱く外国に定期的に出かけて行って、つねに同じ「古き良き友人」からその国の現状について話を聞くことである。
5・結局、語学とは8割の暗記と2割の応用であり、単語と文例を暗記することなしに応用できるはずがない。語学とはクラシックでなく、ジャズのアドリブと同じである。
6・発想といっても、すべては人の話を聞いたり本を読んだりして浮かんだ小さなヒントを丹念にメモすることから始まる。
7・どうしたら人前でうまく話せるようになるのか? 到達した結論の第一は、まず「自分を曝け出す」こと。自分が喋る言葉に「力」と「情」を乗せること。
8・難しい話は「因数分解」する。
9・発想を転換する鍵は歴史的事実を知ること。
10・ある国を取り巻く国際情勢を分析する際は、二国間関係、地域情勢、グローバル情勢、内政という4つの同心円を考えて分析する。各同心円にはそれぞれの方向軸(ベクトル)がある。そのベクトルの動きは同心円ごとに異なる。時折4つのベクトルが同一方向に動くことがある。その時は国や地域に大きな変動や混乱が発生する。
11・座標軸分析とは異なる地域の自分と同世代の人々を念頭に置きながら現代史を学ぶこと。
12・近代から現在に至る政治経済状況を徹底的に勉強する必要がある。

世界に負けない日本』国家と日本人が今なすべきこと 藪中三十二
PHP出版 200頁 2016・5
エッセンスをまとめました。
1・グローバル人材の5大必須条件は①英語力②情報力③「個」の力④ロジック力⑤人間力
2・アメリカ人は対人関係について、「ケミストリーが合う」という言葉をよく使う。
3・北朝鮮の拉致問題解決の切り札のロジック
①六カ国協議は北朝鮮の核問題解決を目指したものである。そこで北朝鮮に核を放棄させるには何が必要であるか考えなくてはいけない。
②北朝鮮に、核開発をするのはアメリカが北朝鮮を敵視するからであり、自国の安全を確保するために核が不可欠だ、と主張している。したがって、アメリカが北朝鮮の安全を保障し、6六カ国協議の場で中国や日本がそれを再認識することは、北朝鮮の核放棄を促す大きな要素である。
③しかし、このアメリカによる安全の保障だけで北朝鮮が核を放棄するとは考えられない。それだけでは北朝鮮が抱えるもう一つの大きな問題、すなわち、行き詰まった経済の立て直しには役立たない。北朝鮮に核放棄を決断させるには経済的な支援が不可欠なもう一つの要素である。
④経済的支援となると、日本の支援が大規模、かつ確実なものである。しかし、日本が北朝鮮に経済支援するには、この拉致問題の解決なくして、日本が北朝鮮を経済支援することはない。
⑤したがって、日本が六カ国協議において拉致問題解決の重要性を指摘するのは北朝鮮に核放棄を促す大きな要素である経済支援と関係しており理屈の通ったことである。
4・日米関係が日本にとり重要なことはもちろんであるが、アメリカにとっても重要だということをアメリカに十分に理解させることが大事である。ロジックのある説明。
①日米同盟は日本の防衛にとり不可欠であり、日本として武力攻撃を受けた際に、米国が防衛してくれるとの約束は極めてありがたい。
②一方、日本は米国に基地を提供しており、基地運営にかかる経費も相当程度、日本が負担している。
③この在米軍事基地は、日本防衛にとり重要だが、同時に米国のアジア太平洋戦略はもちろん、世界的な米国の軍事戦略上も極めて重要な意味を持っている。とりわけ、横須賀の米軍基地は米国が誇る第七艦隊の母港である。
④こうしたことから明らかなことは、日米同盟関係は日米双方にとり重要な役割を担うものであり、お互いその維持強化に努めるべきである。
5・北朝鮮の行動パターンとアメリカの戦略的忍耐
①北朝鮮は、アメリカの軍事的脅威を感じると、六カ国協議への参加など融和的態度をとることがある、
②しかし、少しでもその脅威が緩和すれば、核開発を再開させ、核実験まで行ってしまう、③また、金融制裁というムチが効くと対話姿勢を示し、
④金融制裁が解除され、アメリカの軍事的脅威も遠のいたと判断すると、再び核実験に走る、という構図が明らかになってくる。

最強シンプル思考術』吉田 塁  ディスカバー 127頁 2016・5
エッセンスをまとめました。
1・プログラマーは、ものごとをシンプルに考える。プログラマーが使うエッセンスを抽出して、一般的に使えるようにした最強のシンプルな思考術が「モデルベース思考」である。
2・モデルとは型である。
3・ビジネスモデル 3C分析:企業の戦略を決めるときのフレームワークで、自社、顧客、競合という観点から市場を分析する。
4・モデルベース思考では、四角(要素)と線(関係)だけを使ってものごとを表現する。
5・モデルがあることのメリット
①図解化のメリットを受けられる。
②全体像をつかむことができる。
③論理的に考えることができる。
④発想を広げることができる。
6・よいモデルの特徴
①目的・視点が定まっている。
②要素が網羅されている・余計な要素が含まれない。
③要素の抽象度が適切である。
④要素の関係がうまく表現されている。
7・体験のモデル化によって暗黙知を形式知に変えられる。
①発表におけるこれまでの方法 原稿作成-原稿暗記-発表
②うまくいった方法 自分の言葉で説明-時間短縮の練習-発表

オックスフォードの自分を変える100の教え』 ゆっくり考え、急いで動け 岡田昭人
PHP研究所 250項 2016・6
エッセンスをまとめました。
1・単に知識を得るだけでなく、学び取った知識を生活の様々な面で実践することが大切。
2・「天職」に就く
①労働:日常生活を送るために否応なくする仕事
②キャリア:裕福になりたい、昇進がしたいなどの強い動機があってする仕事
③天職:適性があり、なおかつ意欲を持って取り組むことのできる仕事
3・インスピレーションとは、魂からのメッセージである。
4・模範とする人の言動からヒントを得て、自分自身の個性に合わせて新しいものに作り変えながら、取り組んでいくことが重要。
5・直感は偶然の産物というよりも、人間が過去の様々な経験や学習によって身につけてきた、意識の底に隠された精密な判断力といえる。
6・すべてのものは変化するが、変化のみは不変である。
7・アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは、対人コミュニケーションにおいて人に影響を与える情報の割合は、「言語情報(会話の内容)」が7%、「聴覚情報(声のトーンや話のスピードなど)」38%、そして「視覚情報(見た目)」55%であることを明らかにした。これは「メラビアンの法則」と呼ばれている。
8・フランスの哲学者ポール・ジャネは、「年齢を重ねるほど、1年が過ぎるのが速くなる」「時間の心理的長さは年齢に反比例する」という「ジャネーの法則」を発案。
9・考えは言葉となり、言葉は行動となり、行動は習慣となり、習慣は人格となり、人格は運命となる。(マーガレット・サッチャー)
10・リスクは、何を行っているかを知らないことが原因である。
11・やるべき時(Time)、やるべき場所(Place)、やるべき事(Object)の頭文字をとった「TPO」が三つそろった時に、はじめて大きな発見や創造がもたらされる。
12・良いも悪いも本人の考え方次第。
13・ノブレス・オブリージュ 高貴なる者の義務、私たちの義務は人生に意味を与えることだ。
14・教育は人に本来のあり方を身につけさせ、自分にふさわしい生き方や自由な考え方ができるように導くことである

なぜ名経営者は石田梅岩に学ぶのか?』森田健司 Discover 285項 2015.10
エッセンスをまとめました。
1・京都の商人だった石田梅岩(1685-1744)の思想を抜きにして、日本の経済や日本企業の基礎力を理解することはできない。
2・梅岩は、「人はどう生きるのが正しいか」ということを、ひたすら考え抜いた。つまり、現代用語でいうなら哲学に近いかもしれない。しかし、梅岩は人間のことだけを考察したのでなく、さまざまな職業がどういった役割を果たしているかについても探求している。
3・梅岩は明らかに経済学者であり、経営者でもあった。常に、「人間本性とは何か」という問いから始め、経済や経営を語った。
4・経済的には勤勉と倹約を強化し、生産を評価し、消費を小さくみた。さらにそれは、正直の普遍主義的な水準と契約の尊重を主張し、これらを宗教的に強めた。
5・20年間、呉服屋の店員として働いた後、自分の愛した商業の世界から離れて、自分の養った思想を京都市中京区御池で無料の講義という形で披露した。
6・やる気さえあれば、短期間で重要な内容が理解できる講義であった。それは「より善い人生」を送るためのもであった。
7・石門心学は結果として優秀な労働者を育てあげる思想である。日常の行為の意味を深く理解させ、個々の人生を豊かにしつつ、人に尊厳を与えるのが石門心学であった。
8・梅岩は商人に道徳を説いた。
9・梅岩の時代において学問といえば、一番に儒教を意味した。しかし、一般的な儒教を勉強するというより、もっと広く、さまざまな宗教や哲学の内容に触れた。
10・人は性を知ることを目標として学問に打ち込まなくてはならず、性は天と同一の原理を宿したものである。
11・心学講舎の教科書
四書(儒学)、近思録1176年(儒学、朱子学)、小学1187年(儒学、朱子学)、都鄙問答1739年(心学)、斉家論1744年(心学)
12・自らの精神で「自己の利益」を抑え、常に「天下公」の福利を願い、その実現につながる行いに励むこと。これが梅岩の道徳だった。
13・梅岩は正しい商業を、「自然の摂理」と同じようにとらえている。梅岩にとっては、「正しい財産」と「正しくない財産」があったが、その判断は財産を獲得した商人の心が、どのような状態にあったかに大きく左右される。
14・梅岩は、商品の価格とは市場競争によって変動するものと説き市場原理を見通していた。
15・日本の美は、「物の本性」を発現させることを、何よりも大切にしている。素材の本性を、熟達した職人による卓越した技巧によって引き出すことが必要である。
16・仕事(ワーク)と人生(ライフ)を結びつける。
17・「形の実践」とは「自分の置かれた状況」で励むことである。
18・心学の教えの最も肝要なポイントは、何か問題を感じ取ったとき、環境を批判するより前に、自分のあり方に反省することにある。
19・国家は、世の一人ひとりが徳を積み、人間的に向上することによって、平和という状態をもたらす「装置」でもある。

インダストリー4・0 第4次産業革命の全貌』尾木蔵人 東洋経済新報社 210項 2015.10
エッセンスをまとめました。
1・ドイツやアメリカが目指しているインダストリー4.0という新産業革命は、「ソフトウェアを使って、産業や社会、企業のビジネスモデルをこれまでとはまったく別の次元、4.0の世界に引き上げる」というものである。
2・今までの製造業のバリューチェーンは、生産のための部品や材料を調達。企画、設計を行ったうえで、工場で生産を行い、これを検査して出荷。その後、物流のプロセスを経て、消費者に販売。これに対し、インダストリー4.0のスマート工場では、オーダーメードの生産が自動的に可能になる。大きな変化は、従来のものづくりでは受身だった消費者が、ものづくりのスタート地点に立てることである。
3・消費者への販売が完了した段階から、今度はIoTを活用したアフターサービスというビジネスが始まる。製造業は、製品を売ったら終わりの従来のビジネスモデルから、センサーやビッグデータ分析を駆使したアフターサービスで付加価値を高める新しいビジネスモデルにシフトしていく考えられる。
4・ロボットが行うことができる仕事はロボットに任せる。デジタル化を進める工場に新しい仕事を生み出し、ヒトは、よりクリエイティブな新しい仕事を担うことになる。
5・未来の工場は地球に優しい。
6・インダストリー4.0の8つの優先エリア
①ネットワーキングの標準化とレファレンス・アーキテクチャー
②複雑化するシステムの管理
③産業向け総合ブロードバンド通信インフラの確立
④ユーザーの安全とセキュリティ
⑤企業組織と就業モデルの検討
⑥トレーニングと継続的な能力開発
⑦法規制のフレームワーク
⑧エネルギー効率の向上
7・ドイツには「ものづくり」に優れた中小企業がいっぱいあり、インダストリー4.0プロジェクトは政府主導で中小企業を支援する政策である。
8・究極のゴールは、グローバルなバリューチェーンの水平連結である。
9・暮らしがどう変わるか?
①より創造的な仕事に
②人工知能が秘書の役割を果たす
③通勤から開放される
④英語ができなくてもコミュニケーションが可能な時代(しかし、英語ができることにより人間関係が深化する)
⑤生活にかかるお金を節約できる
10・インダストリー4.0時代の教育
①文科系と理科系の融合
②マーケティングを考える上でデータサイエンスの習得が必要となる
③ビジネスモデルが変化するスピードが早いので企業内教育だけでは間に合わなくなり、社会人のための大学教育が重要となる。
④オンデマンドの情報工学などのインターネット授業の需要が高まる
11・日本の匠の技をデジタル化する道を選び、これを保護する知恵を絞り、これを実行する。
12・少子高齢化社会への処方箋として、ロボットや人工知能の力を借りて余力を生み出す。女性の活躍や地方創生の起爆剤となる。

リベラルアーツの学び方』瀬木比呂志 Discover 408項 2015・5
エッセンスをまとめました。
1・知識でなく知恵の時代、教養のための教養でなはなく、思考や行動に影響を与え、ビジネスや人生そのものを成長させていくための本当の教養の学び方。
2・リベラルアーツは、①パースペクティブ、すなわち広がりと奥行きのあるものの見方と、②ビジョン、すなわち洞察力と直感により、本質をつかむものの見方、双方の基盤になるもの。
3・イギリスの哲学者フランシス・ベーコンは、ヨーロッパ大陸における哲学の主流である演繹法、つまり、まず一般的、普遍的な原理、法則を立ててそこから理論を導き出してゆく考え方に対し、帰納法、つまり、物事を観察して得られる個々の具体的な事物を総合して一般的、普遍的な原理、法則を導き出す考えを提言した。
4・ニッコロ・マキャベリは、『君主論』の中で、人間を三種類に分けている。すなわち、①自分で考えることのできる人間、②人のいうことは理解できる人間、③どちらもできない人間。
5・理論と実践は常に相携えて進むべきものであり、いわば車の両輪のようなものである。
6・リベラルアーツから得られる重要な技術、方法、具体的には、①批判的・構造的に物事をとらえる、②作品と対話し、生き生きとしたコミュニケーションを図る、③歴史的・体型的な全体像の中に位置付ける、④視点を移動し、橋をかけ、共通の普遍的な問いかけを知る、⑤ある分野の方法を他の分野に転用する、⑥自己を相対化・客観化して見詰める。
7・情報が、体系的、構造的に自分の頭の中に位置付けられていると、今度は、それを元にしたアウトプットが可能となる。

チャーチル名言録』中西輝政 扶桑社 254項 2016・3
エッセンスをまとめました。
1・ 過去をさかのぼればさかのぼるほど、遠くの未来が見えるものだ。
2・変化する状況の中で人が一貫性を維持する方法はただ一つ、状況に合わせて変わりつつも、決して重要な目的は失わないことである。
3・好きなことをやっても意味がない。やっていることを好きにならないと。
4・未来は不可知である。だが過去は我々に希望を与えてくれるはずだ。
5・チャーチルの日本観 ほぼ40年前の1902年、私は日英同盟に賛成票を投じ、つねに島国である日本帝国との良い関係を促進するために最善を尽くしてきた。また、日本国民の幸福を願い、日本人の多くの才能と資質を崇拝する一人であった私は、これから日本と英語圏諸国との戦争が始まることに深い悲しみを覚える。
6・戦争をするよりはまだ、議論を戦わせるほうがましだ。
7・戦争時は「決意」、敗北時には「抵抗」、勝利の時のは「太っ腹」、平和時には「善意」を。
8・私はいつでも学ぼうとしているが、教えられることはあまり好きではない。
9・私にただ言えるのは、酒が私から奪ったもの以上の、多くのものを酒から得たということだ。
10・私はずっと、ペン先と舌先で生業を立ててきた。
11・概ね言葉は短いほうがよいが、できれば古い言葉でなおかつ短ければ、最高だ。
12・国家の枠にとらわれず、誰でも自由に経済活動を行っていい「自由貿易圏」を拡大し、繁栄を共有することで世界の平和を実現するというのが大英帝国の輝かしい理念である。
13・スイスのチューリッヒ大学で行ったチャーチルの「ヨーロッパ合衆国」構想。これはのちEUつまり欧州統合の考えを示したものである。ただ興味深いのは、イギリスの参加についてむしろ慎重だったことである。

戦略読書』三谷宏治 ダイヤモンド社 437項 2015・12
エッセンスをまとめました。
1・読書の目的は「自由に生きる」こと。そして「自由に生きる」ために必要な3つの力、
①想像力、②批判的思考力、③自己コントロールを支えるためのメタ認知能力
2・基本斜め読みで刺さったら熟読
3・ファクトを中心に集める。
4・読書には戦略が必要。
5・読書にはケイパビリティ(能力)が必要。
6・データを価値ある情報に変えるためには、「対比」「反常識」「数字」「一段深く」「抽象化」の五つの視点が必要である。
7・思考とは、「拡げる」ことと「絞る」こと。
8・話すことでわかりやすくなる。教えることでスキルになる。

新世代CEOの本棚』 文藝春秋 253項 2016・3
エッセンスをまとめました。
1・何を読み、いかに考え、どう仕事に役立てるか?
2・本を一回読んだら終わり。何度も読み返す人は、何のために読み返しているのか。本を読んだら、読んだ感想をすぐアウトプットする習慣をつけるといい。
3・元気になりたければ、元気になる行動をすればいい。
4・一緒に働くなら相性が重要で、相性が悪い人と仲良くしようとすると、時間が無駄になってしまう。最初からモチベーションがある人と仕事をした方がお互いにハッピー。
5・ビジネスでは説得力が大事。みんなが共感する仕組みは何かを考えると、最終的には人間だけでなく、動物も自然も宇宙も共存できるような仕組みではないだろうか。
6・選択肢を用意するのが仕事。
7・思考する時間が必要なので、雲隠れする日をあらかじめ決めておく。
8・実践に勝る学びはない。
9・本は読むタイミングが重要。
10・定期的に花に水をやらないと枯れてしまうように、定期的に本から情報を仕入れて、凝り固まった頭の筋肉を解きほぐして新しい仮説を立てる。
11・未来予測には3つのベクトルがある。人間の感情と、経済(おカネ)とテクノロジー。
12・情報と資本でレバレッジをかけている会社は急成長している。
13・究極的には1ページ1秒で読めるようになる「ファトリーディング」を活用。
14・本をよむことは人と会うこと。

新世代CEOの本棚』 文藝春秋 253項 2016・3
エッセンスをまとめました。
1・何を読み、いかに考え、どう仕事に役立てるか?
2・本を一回読んだら終わり。何度も読み返す人は、何のために読み返しているのか。本を読んだら、読んだ感想をすぐアウトプットする習慣をつけるといい。
3・元気になりたければ、元気になる行動をすればいい。
4・一緒に働くなら相性が重要で、相性が悪い人と仲良くしようとすると、時間が無駄になってしまう。最初からモチベーションがある人と仕事をした方がお互いにハッピー。
5・ビジネスでは説得力が大事。みんなが共感する仕組みは何かを考えると、最終的には人間だけでなく、動物も自然も宇宙も共存できるような仕組みではないだろうか。
6・選択肢を用意するのが仕事。
7・思考する時間が必要なので、雲隠れする日をあらかじめ決めておく。
8・実践に勝る学びはない。
9・本は読むタイミングが重要。
10・定期的に花に水をやらないと枯れてしまうように、定期的に本から情報を仕入れて、凝り固まった頭の筋肉を解きほぐして新しい仮説を立てる。
11・未来予測には3つのベクトルがある。人間の感情と、経済(おカネ)とテクノロジー。
12・情報と資本でレバレッジをかけている会社は急成長している。
13・究極的には1ページ1秒で読めるようになる「ファトリーディング」を活用。
14・本をよむことは人と会うこと。

グローバル投資のための地政学入門 藤田勉・倉持靖彦 東洋経済新報社 221項 2016・9
エッセンスをまとめました。
1・国際政治や安全保障においては、地理的要因がたいへん重要となる。地理的要因としては、地理的位置、地形、領土、人口、気候、国家間の距離、エネルギー資源の存在、国内の民族・宗教・文化グループ、水路へのアクセスなどがあげられる。
2・学問としての地政学
①ドイツのカール・ハウスホーファーの生存権理論:ダーウィンの進化論に影響を受けた「国家は生きている有機的組織体であり、優れた国家は生存権を拡大する」という考え。
②英国のハルフォード・マッキンダーのハートランド理論  ユーラシア大陸の中心部である旧ソ連の領土を握るものが世界の覇権を握るという考え。
③米国のニコラス・スパイクスマンのリムランド理論 
3・地政学的用語
①世界島:ユーラシア大陸とアフリカ大陸を合わせた世界最大の「島」
②ハートランド:世界島の中心に位置するユーラシア大陸の北内陸部(旧ソ連の領土に相当)
③リムランド:ハートランドの周辺地域(極東、中国、東南アジア、インド、中東、地中海、中東欧、北欧)
④ランド・パワー(大陸国家):他国と陸の国境で接する国家で、ロシアやドイツのように、海軍は小さいが、強力な陸軍を持ち、ハートランドやその周辺に大きな力を持つ。
⑤シー・パワー(海洋国家):国土が海に囲まれ、または、強大な海軍など制海権を有する国家であり、英国や米国の場合、ユーラシア大陸から海で隔てられている。
⑥クラッシュ・ゾーン:シー・パワーとハートランドの間に位置する緩衝国。例えば、中欧、東欧諸国を指す。
4・20世紀に突入し、シー・パワーである大英帝国の覇権に陰りが見られる中、ロシアの南下政策やドイツの帝国主義により、ランド・パワーの軍事的脅威が増した。マッキンダーは、勢力均衡のため、ドイツとロシアの間に、独立国家として、複数の東欧諸国から成る中間地帯が必要であると考えた。
5・30年戦争の講和条約として、1648年にウエストファリア条約が締結され、主権国家の概念が成立した。
6・米国大統領が唱える外交方針は、ドクトリンと呼ばれる。代表的なものとしては、
①孤立主義を唱えたモンロー・ドクトリン
②共産主義封じ込め政策を唱えたトルーマン・ドクトリン
③中東における米国の利権を強調したアイゼンハワー・ドクトリン
④アジア全域からの地上軍の撤退を宣言したニクソン・ドクトリン
⑤軍事力の増強と反共産勢力支援からなるレーガン・ドクトリン
7・歴史的に、米国の外交政策は孤立主義の傾向が強いものの、孤立主義と国際主義の間で揺れ動いてきた。大きな流れとしては、建国から第二次世界大戦までは孤立主義、第二次世界大戦後イラク撤退までは国際主義、そして、その後、孤立主義に回帰しつつある。
8・米国のウォルター・ラッセル・ミードの分析によれば、米国の外交思想には4つの伝統的類型があるとする。
①孤立主義の哲学を持つジェファーソン主義(同盟国の介入や戦争の危険を回避し、現実的コスト最小限の外交を目指す)
②孤立主義の哲学を持つジャクソン主義(国際秩序には無関心で、米国民の安全と経済的繁栄を重視する)
③国際主義の哲学を持つハミルトン主義(経済的利益の追求のために、米国にとって有利な条件で、グローバル経済システムに統合されることが必要)
④国際主義の哲学を持つウィルソン主義(自由、人権、法治主義といった米国流の価値観を世界に広めることは、米国の道徳的義務であると同時に、国益にかなう、これにより、平和的な国際システム構築を目指す)がある。
9・国際主義には二つの考えがある。
①経済を重視し、米国企業が世界的に発展するためにも、米国主導で世界経済システムをつくることが望ましいというもの。これは、国際通貨基金(IMF)や世界貿易機構(WTO)として具現化した。
②米国の政治思想である自由、人権、法治主義を重視することが、世界平和をもたらすという考えである。
10・現在、米国の外交、安全保障戦略は、大きな流れとして孤立主義に向かっており、同時に、10年単位でも、一段と孤立主義に舵を切りつつある。
11・地理学理論による整理
欧州の地理学リスクが高まりつつある
①シー・パワーの雄である米国が、欧州から撤退しつつある
②シー・パワーの英国は、独仏同盟を中心とするEUから離脱を試みた
③ハートランドの雄であるロシアは、プーチンという強いリーダーを輩出した
④クラッシュゾーンである東欧から中東にかけて、内戦が続いている(ウクライナ、シリアなど)
⑤リムランドにあるドイツやフランスなどでは、イスラム系移民によるテロ事件や難民問題が発生した。
12・内向きな米国、それに伴う中国やロシアの台頭により、世界の政治経済のリーダーシップの軸がゆらぐことにより、国際協調も不安定となり、国際政治情勢が安定化しなくなってきた。これは、ポピュリズム(大衆迎合主義)の拡大や地政学的リスクの高まりの根源である。
13・ヒラリー・クリントンの政策は、内政、社会政策が中心である。就任100日で取り組むべき優先課題として、
①製造業、インフラ、クリーン・代替エネルギーで雇用創出
②最低賃金の引き上げ
③女性の賃金ギャップの縮小
④オバマケアの拡充・薬価引き下げをあげている。

伝え方の極意』ラリー・キング  Discover 223項 2016・9
エッセンスをまとめました。
1・人は一日に日本語で約3万-4万字相当を話すと言われている。それだけ話しているのだから伝え上手になる努力は人生を変えるだろう。
2・自分らしく、正直に。これこそが伝え方の大原則である。
3・いつも積極的に話す。
4・相手に敬意を示せ。
5・達人は「独自のものの見方」をする。
6・達人は「他人から学ぶ努力」をする。
7・達人は「仕事への情熱」を語る。
8・会話のきっかけは世界共通 3つの話題
①天気の話
②子供とイヌの話
③今いる場所の話
9・意識すべきはアイコンタク
①相手が話している時、視点を合わせる
②自分が質問する時、視点を合わせる
③自分が話している時は、視点をそらしてもいい
10・セールスが上手な人には、ある共通点がある。それは、商品について予習し、セールスポイントになること、ならないことを頭に入れているということである。
11・スピーチはボーイスカウトに学べ。ボーイスカウトのモットー「備えよ常に」
12・実際、簡潔な文章を書くのは難しいものだ。ある人が友達から長い手紙をもらった。その手紙の最後にはこう書かれていた。「長い手紙でごめんなさい。短い手紙を書く時間がなかったのです。

第四次産業革命 ダボス会議が予測する未来』クラウス・シュワブ 日本経済新聞出版社 
232項 2016・10
エッセンスをまとめました。
1・目的意識と価値観を原動力とする組織のみが、現在進行中のとてつもない技術的、社会的、経済的変化を方向づけて、果実を得ることができる。
2・第四次産業革命は、個別の技術が世界を変えるのでなく、新技術が使われるシステムや新技術が創出するバリューネットワークが世界を変革するのだと気づかせてくれる。
3・歴史が教えてくれるのは、新しい思考法や新しい組織、新らしい協働の方法を求めるような社会的変化や政治的変化が起きるときには、必ず経済的な混乱が起きるということだ。
4・イノベーションと破壊が私たちの生活水準に好影響と悪影響の両方をおよぼすことになる。最も得をしているように見えるのが消費者だ。第四次産業革命は、実質無料で消費者の個人生活の効率を高める新たな製品やサービスを可能にしている。
5・第四次産業革命により生じた問題のほとんどは、供給側(すなわち労働と生産の世界)で起こったように思われる。
6・物理的な技術のメガトレンドは主に四つの形で現れている。
①自動車運転
②3Dプリンタ
③先進ロボット工学
④新素材
7・ティッピング・ポイント(特定の技術的変革が社会の主流を転換させる瞬間)
2025年までに起きると予想されるテイッピング・ポイント
①1兆個のセンサーがインターネットに接続される
②眼鏡の10%がインターネットに接続されている
③体内埋め込み式携帯電話の販売開始
④米国の道路上の全車種の10%が自動運転車になる
⑤3Dプリンタ製の肝臓の初移植
⑥3Dプリンタによる自動車第一号の生産
8・第四次産業革命は、経済成長を推進し、私たち全員が直面している地球規模の大きな課題のいくつかを緩和させる可能性を秘めている。だが、私たちは第四次産業革命がもたらし得る悪影響ーとくに不平等、雇用、労働市場への悪影響ーを認識し、対処する必要がある。
9・技術が雇用にもたらす二つの競合効果を理解する必要がある。第一に技術がもたらす混乱と自動化は労働の代わりに資本を用いるという破壊効果があり、労働者は失業者になるか、スキルの再配分を余儀なくされる。第二に、こうした破壊効果は新たなサービスに対する需要を増加させ、新たな職業、ビジネス、さらに産業の創出につながるという資本化効果を伴う。
10・近い将来において、自動化されるリスクが低い仕事は社会的スキルや創造的スキルを必要とする仕事、とくに不確実性の下での意思決定や新たなアイデアの開発というものになるだろう。
11・労働者と企業との関係性が「持続的」なものではなく、「一連の取引」となる。本質的に短期雇用という種類の仕事(いわゆるオンデマンド経済)が増える。
12・将来、一部の労働者はさまざまな仕事をこなして収入を得る社会になるかもしれない。
13・第四次産業革命は、あらゆる産業に次の四つの大きな影響をおよぼす。
①顧客の期待が変化する
②データによって製品の質が向上し、資産の生産性が改善される
③企業が新らしい形の協力関係の重要性を理解し、新たなパートナーシップを形成する
④経営モデルが新たなデジタルモデルへ移行する
14・第四次産業革命の特徴は、現実世界と密接なつながりを持ったグローバル・プラットフォームを生み出したことである。プラットフォーム戦略は、収益性に優れると同時に破壊的でもある。2013年の時価総額トップ30銘柄のうち14がプラットフォーム中心の企業だった。
15・新たに出現する環境への適応のためのは以下の四つの知性を育成し、応用することが重要である。
①状況把握の知性(精神)ー知識を理解し、応用する能力
②感情的知性(心)ー思考や感情を処理し、統合する能力。
③啓示的知性(魂)ー公益のために変化をもたらし、行動するための個人および共通の目的意識や信頼感、その他の美徳を活用する能力
④物理的知性(肉体)ー自身の健康や幸福だけでなく、個人およびシステム双方の変革に必要なエネルギーを注ぐ、私たちの周りにいる人々の健康や幸福の追求と維持する能力
16・人間を中心に据えた、人間が優先される未来を形作ることが大切である。人々に権限を移譲し、すべての新技術は何よりも人間が人間のために作り上げたツールであることを絶えず自覚する必要がある。
17・イノベーションと技術の中心に人間性と公益追求を据え、それにより持続可能な発展を実現させる未来に向けて、ともに責任を負わなければいけない。

いま世界の哲学者が考えていること』岡本裕一郎 ダイヤモンド社 318項 2016・9
エッセンスをまとめました。
1・歴史を眺めてみれば、時代が大きく転換するとき、哲学が活発に展開されている。
2・20世紀の後半、人類史を決定的に転回させる、二つの技術的な変化が起こった。一つはBT(バイオ・テクノロジー)革命、もう一つはIT(インフォメーション・テクノロジー)革命である。
3・IT革命が社会に大きな影響を与えた例として、2010年にチュニジアから始まり、その後、エジプトへ飛び火し、やがてアラブ全体へと波及した民主化運動(アラブの春)がある。
4・SNSは民主化のツールというだけでなく、監視の手段としても利用されている。マイナンバー制は監視社会を生む。ITが生み出した自動監視社会。社会はコントロールされる
5・物理学者のホーキング博士をはじめ多くの著名な人々が、人工知能の発達に警笛を鳴らしている。この未来予測は、カーツワイルの「技術的特異点(シンギュラリティ)」の概念から出ている。
6・特異点とは何か。テクノロジーが急速に変化し、それより膨大な影響がもたらされ生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来るべき未来のことである。カーツワイルは、その「技術的特異点」の年代を2045年と特定している。
7・オックスフォード大学の二人の研究者、フライとオズボーンは「雇用の未来ーコンピュータ化によって仕事は失われるのか」という論文を発表。702の職種がコンピュータ化によって今後どのようになるのかという分析において、アメリカの全雇用のおよそ47%がきわめて高いリスクでコンピュータ化によって失われる。
8・イギリスで産業革命が進展していた頃、機械によって大量の失業が発生したことはよく知られている。マルクスの「資本論」では、労働手段は機械になったとたんに労働者自身の競争相手になる。道具の操作が機械に奪われると、労働者はとたんに使用価値と同時に交換価値をも失うと述べられている。
9・今日失業すると予測される仕事は、会社のホワイトカラーや医者や弁護士や教師といった知的労働に携わる仕事にまで及ぶ。
10・20世紀末から膨大な「ビッグデータ」が蓄積され、それにもとづいて人工知能は「機械学習」や「ディープラーニング」を行うことにより自己進化していく人工知能が開発され始めている。
11・最近の技術的なトレンドとして、「I oT」つまり「モノのインターネット」が急速に導入されつつある。人間を介すことなく、モノ同士で相互に通信し合い、アクションを起こすわけである。
12・マルクス主義にもとづいて社会を建設した国家が、20世紀の終わりにはことごとく崩壊し、「社会主義」は資本主義にのりこえられたように見えた。資本主義と社会主義の対立(冷戦)が終焉し、政治学者のフランシス・フクヤマが「歴史の終わり」と呼ぶ事態となったわけである。
13・ピケティは『21世紀の資本」において、格差拡大にかんして、「r(資本収益率)>g(経済成長率)により、世界的に格差が拡大すると述べている。1910年のヨーロッパでは、上位10%の人々が、全体の90%の富を占めており、1910年から50年あたりまで格差は縮小し1970年ごろまで続くが、その後、再び格差が拡大している。
14・資本主義はマルクスの想定を超えて生き延び、20世紀を迎える頃には「金融資本」と結びついた「帝国主義」が成立し、さらに21世紀になると新たな段階に到達した「グローバリゼーション」となったのである。
15・グローバリゼーションには、極めて深刻な「パラドックス」が潜んでいて、その理解なくして未来は展望できない。国民民主主義とグローバル市場の間の緊張に、どう折り合いをつけるのか。
16・われわれは三つの選択肢を持っている。国際的な取引費用を最小化する代わりに民主主義を制限して、グローバル経済が時々生み出す経済的・社会的な損害には無視を決め込むことができる。あるいは、グローバリゼーションを制限して、民主主義的な正統性の確立を願ってもいい。あるいは、国家主義を犠牲にしてグローバル民主主義に向かうこともできる。これらが、世界経済を再構築するための選択肢である。

哲学者図鑑』富増章成 かんき出版 270項 2016・9
エッセンスをまとめました。
1・基本的には歴史の思考パターンがある。
①古代ー知るための理性
②中世ー神に従う理性
③近代ーより論理的な理性
④現代ー理性を批判するロジック

古代
2・ソクラテス 
質問の連続で、わからなかったことがジワジワわかってくる。
3・プラトン
イデア論 本当のことは、現実の世界を超えたところにある。
4・アリストテレス
人生全体が勉強のかたまり。勉強しているときが一番幸せ。
5・エピクロス
死ぬことなんか恐れないで、明るく生きよう。
6・ゼノン
我慢すればするほど、心が鍛えられて最高の気分。
7・キケロ
老年期が人生の頂点。
8・釈迦
余計な執着を捨てればほとんどの苦しみには解決する。
9・孔子、孟子
人間に一番大切なものは、愛と礼儀である。
10・老子、荘子
老荘思想 無為自然にふるまえば、すべては勝手にうまくいく。

中世・近世
11・アウグスティヌス (ローマ帝国、4-5世紀)
人は心の中で、永遠の存在に憧れている。
12・トマス・アクィナス (イタリア、13世紀)
スコラ哲学 神の存在を証明した後は、謙虚に神を信じよう。
13・ピコ・デラ・ミランドラ (イタリア、15世紀)
ルネサンスの人文学者 人間は自由意志によって神にも動物にもなることができる。
14・マキャベリ (イタリア、15-16世紀)
為政者は政治と道徳を切り離さなければならない。
15・デカルト (フランス、17世紀)
大陸合理論 考える私は、考えるだけの存在で不滅の実体だ。
16・スピノザ (こオランダ、17世紀)
大陸合理論 人生は過去も未来もすべて決定していると達観しよう。
17・ライプニッツ (ドイツ、17-18世紀)
大陸合理論 すべては予定調和されているから大丈夫。物体の究極の単位を「モナド」という。
18・ベーコン (イギリス、16-17世紀)
イギリス経験論 科学的な方法は、実験のデータを総合すること。
19・ロック (イギリス、17世紀)
イギリス経験論 生まれたときは、心はまっさらな白紙である。
20・バークリ (アイルランド、18世紀)
イギリス経験論 物質は情報のかたまりで、世界はバーチャル空間だ。
21・ヒューム (イギリス、18世紀)
イギリス経験論・懐疑論 因果関係なんて、単なるおもいこみ。一寸先は闇?
22・パスカル (フランス、17世紀)
人間は考える葦だから、宇宙よりも偉大なんだ。
23・ルソー (フランス、18世紀)
啓蒙思想 すべての人が参加できる理想社会をめざせ。
24・カント (ドイツ、18世紀)
道徳哲学・理性批判 『純粋理性批判』『実践理性批判』
自分で自分をコントロールできることが真の自由だ。
25・ヘーゲル (ドイツ、18-19世紀)
ドイツ観念論  『精神現象学』矛盾があるから、どんどん真実に近づいていくことができる。
26・ショーペンハウアー (ドイツ、18-19世紀)
ドイツ観念論 人生の苦しみを乗り越える方法はこれしかない。

現代 実存主義、現象学、社会主義

27・ベンサム (イギリス、18-19世紀)
量的功利主義 快楽の量を計算して、それが最大になればよいのだ。
28・ミル (イギリス、19世紀)
量的功利主義 『自由論』快楽にはいろいろな種類があるけれど、高級な快楽をめざせ。
29・ジェームス (アメリカ、19-20世紀)
プラグマティズム 実際的な効果があれば真理だから、とりあえず行う。
30・デューイ (アメリカ、19-20世紀)
プラグマティズム  『民主主義と教育』使える哲学と使えない哲学があるから、とっかえひっかえ使え。
31・マルクス (ドイツ、19世紀)
『資本論』歴史のゴールは共産主義社会だというシナリオがある。
①原始共産制
自然経済。階級が存在しない。
②古代奴隷制
生産経済。富の蓄積により、階級が発生。奴隷を使役。
③封建制
支配階級は奴隷的農民から生産物地代を得る。商品流通が展開。
④資本主義制
資本の蓄積を基礎として、産業資本による自由経済。恐慌により資本が集中。海外市場を求めて帝国主義へ移行。
⑤社会主義制
経済の人民管理。計画的に運営。
32・キルケゴール (デンマーク、19世紀)
実在主義 心の中で納得できる真実を見つけよう。
33・ニーチェ (ドイツ、19世紀)
実在主義 『ツァラトゥストラはこう語った』自分が力を持てるような考え方を、人は真実だと信じ込む。力への意志、超人。
34・フッサール (オーストリア、19-20世紀)
現象学 『イデーン』『現象学も理念』自分の心にインタビューすると真実が見えてくる。
35・ハイデガー (ドイツ、20世紀)
現象学・存在論 『存在と時間』死の覚悟によって、本来の自己をとりもどすべきことを説く。
36・ヤスパーズ (ドイツ、20世紀)
実存主義 『理性と実存』人間は乗り越えられない壁にぶつかってこそわかることがある。
37・サルトル (フランス、20世紀)
実存主義 『存在と無』『弁証法的理性批判』人間は自分で自分をつくっていく存在なのだ。
38・メルロ・ポンティ (フランス、20世紀)
現象学 『知覚の現象学』身体と世界を切り離すことはできない。身体論
40・レヴィナス (フランス、20世紀)
現象学 『全体性と無限』他人は思い通りにならないものだ。
41・アラン (フランス、20世紀)
モラリスト 『幸福論』幸福になろうと努力しなければ、幸福になれない。
現代 構造主義、ポストモダン、分析哲学
42・フロイト(オーストリア、19-20世紀)
精神分析学 『精神分析入門』無意識にあるトラウマを自覚すれば、症状は消える。無意識の中に何かがある。
43・ユング (スイス、19-20世紀)
分析心理学 『自我と無意識』すべての人の心には、集合的無意識が存在する。先祖の記憶が無意識の中にある。
44・アドラー (オーストリア、19-20世紀)
劣等感の心理学『人生の意味の心理学』 対人関係があらゆる悩みの原因である。自我を持つ衝動は自己保存の衝動である。
45・アドルノ、ホルクハイマー (ドイツ、20世紀)
フランクフルト学派 『啓蒙の弁証法』道具的理性は、目的を効率的に実現する手段のみを追求するようになり、人間自身も道具的な存在として扱うようになる。
46・ハーバーマス (ドイツ、20世紀~)
フランクフルト学派・公共哲学 『コミュニケーション的行為の論理』コミュニケーション的理性の可能性。論争から学ぶ、そして、学ぶために論争をする。また、論争するときに単に相手を批判して自分の主張をおし通すのではなく、論争相手から何かを汲み取ろうとする。
47・ソシュール (スイス、19-20世紀)
構造言語学 『一般言語型講義』言葉が世界を切り分けている。
48・レヴィ・ストロース (フランス、1908-2009)
社会人類学者・構造主義 『親族の基本構造』『悲しき熱帯』本人にもわからないルールの奥には、見えない仕組みがあった。近代的思考だけが理性的だという先入観を批判。
49・フーコー (フランス、1926-1984)
知の考古学 『言葉と物』『狂気の歴史』時代によって知の形が変わっていく。
50・リオタール (フランス、1924-1998)
ポストモダン 『ポストモダンの条件』大きな物語は終わり、小さんな物語の時代が来る。
51・ボードリヤール (フランス、1929-2007)
社会哲学・記号論 『消費社会の神話と構造』記号(ブランド)で相手に差をつける消費生活とは。
52・ドゥルーズ (フランス、1925-1995) 、ガタリ(フランス、1930-1992)
ポストモダン 多様な価値を見いだす。資本主義はノマド(遊牧民)。
53・デリダ (フランス、1930-2004)
ポストモダン 『声と現象』コピーがオリジナルに影響を与える。
54・アルチュセール (フランス、1918-1990)
マルクス主義・構造主義 『資本論を読む』『マルクスのために』いつの時代にもマルクス主義は科学的な理論として通用する。
55・ハンナ・アーレント (ドイツ、1906-1975)
政治哲学 『全体主義の起源』大衆が独裁者に任せきりになると、大衆自らが悪を起こす。
56・バルト (フランス、1915-1980)
モードの記号論 『モードの体形』ファッションを哲学的に語ることができる。
60・ベンヤミン (ドイツ、1892-1940)
フランクフルト学派 『パサージュ論』メディアが発達すれば、民衆が参加できるので、ファシズムへの対抗手段が生まれる。
61・ネグリ(イタリア、1933~)、ハート (アメリカ、1960~)
グローバリゼーション 『帝国』『マルチチュード』新たな敵である(帝国)に対抗する方法。
62・ロールズ (アメリカ、1921-2002)
政治哲学 『正義論』自分の立ち位置をヴェールで遮断すれば正しいことが見える。正義、格差原理
63・フランクル (オーストリア、1905-1997)
『夜と霧』どんなことがあったとしても、人生には必ず夢がある。意味への意志。
64・ラッセル (イギリス、1905-1997)
分析哲学・論理学 『数学原理』記号論理学を使えば、真偽がわかる。
65・ウィトゲンシュタイン (オーストリア、1889-1951)
分析哲学 『論理哲学論考』語れないことについては沈黙するしかない。

キミの人生だ・・・いいものにしよう!』未来学の専門家がキミの未来を予測し、デザインするかを教えてくれる。ヴェレン・ウィールライト博士 著 、水田和生 訳
PERSONAL FUTURE NETWORK 274項 2013・7

エッセンスをまとめました。
1・記録された数千年に渡る歴史によれば、人類は未来について知りたいと思ってきた。
2・シンクタンクは予測理論を発展させてきた。
3・未来は固定されていない、或いは予め決められていないとすれば、一つ以上の未来が可能なはずである。結果的に、今、現在とる行動によって未来を変えることができるという認識に達する。
4・未来予測の方法
①今どこにいるかを見る
②シナリオを書いて未来を探査して見る
③未来を創造するー自分が生きたい未来
5・人生に関する地図(幼年/幼少/思春期/青年/中年/独立年/脆弱、介護、終末)では、一つ一つ重要な局面を持つ。
6・利害関係者
①キミの人生に興味を持つ人
②キミの人生を変えたり、影響力のある人
③キミの人生の出来事で影響を受ける人
7・未来は変化である。
8・全ての人が重層的な人生を送っている。
9・人生における六つの力、領域
①活動(学校、仕事、スポーツ、趣味など)
②財政(収入、支出、投資など)
③健康(肉体的、精神的)
④家屋(住居、近隣、地方、国、地域は気候)
⑤社会(家族、友人、知人、同僚など)
⑥移動手段
10・傾向は変化を示唆する。過去から現在へと変化を示す傾向線があれば、傾向についての未来を考えることができる。
11・何でも起こりうる。未来研究者は、未来に起こるかもしれない事件が起こりうる、起こるかもしれない、そして、起こることは殆どないということについて考えなければならない。
12・人生の質の測定について、五段階に分ける(最高、良好、普通、下降、最悪)
13・力の種類 STEEP(スティープ)
①Social(社会的な変化)
②Technology(技術的な変化)
③Economy(経済的変化)
④Environment(環境的変化)
⑤Politics(政治的変化)
これらの事象は関連している。
14・現実の四つの局面 SWOT分析
未来について思考する過程で出てくる変化について考える時に役立つ道具。
①Strength(強さ)
②Weakness(弱さ)
③Opportunity(機会)
④Threat(脅威)
15・ビジョンは行き着く所。
16・戦略とは「如何にするか」ということ。
17・戦略計画案は長期にわたって段階的に実行されなければならない。
18・バックキャスティング
未来から現在を見る。そして未来の自分のビジョンを完成させるために今、何をしなければいけないかを考える。
19・変化に対する問いかけは、ジャーナリストがその初めから使っている伝統的な方法を使えばいい。即ち、誰が? 何を? 何時? 何処で? 何故?
20・教育者は、学生が時間に対する展望を持ち、長期的未来に関する教育の影響力を学生が理解するように努力しなければいけない。組織では、長期的展望に関する思考が出来るよう全てのレベルで訓練することが重要である。

女子の本懐 市ヶ谷の55日』小池百合子 文藝春秋 254項 2007年10月第1刷発行、2016年10月 第7刷発行
エッセンスをまとめました。
1・規模の違いがあっても、組織のマネジメントは共通している。組織としての大目的を設定し、それを共通し、人材を活用し、具体的な任務を遂行する中で、大目的を達成する。このことに尽きる。
2・防衛省の大目的は「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つこと」である。その任務は陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊を管理、運営し、その事務を行うこと。そして、自衛隊は、「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」ものであり、いずれも、防衛省処置法、自衛隊法に定められている。
3・第十六代大統領のエィブラハム・リンカーンのゲティスバーグ演説「人民の、人民による、人民のための政府」の演説の言葉を胸に刻んだ。
4・友人のマイケル・グリーン上級顧問が実現してくれたワシントンのシンクタンクCSISの講演の冒頭、「私を日本のライス長官と呼ぶ人もいる。どうぞ『マダム寿司』と呼んでください」と笑を取った。英語でのスピーチの鉄則は、ジョークをはさむことだ。
5・私はマハトマ・ガンジーの「七つの大罪」という考えに共感を覚えている。七つの大罪とは、①哲学なき政治、②道徳なきビジネス、③労働なき富、④人格なき教育、⑤人間性なき科学、⑥論理なき快楽、⑦献身なき宗教、である。どれ一つとっても、現代の国際社会の現状をばっさり斬る項目ばかりだ。
6・経営学者ピーター・ドラッカー氏は、大統領のルールとして、「したいことではなく、しなければならないことをせよ」という。
7・小さな貿易会社を営み、石油取引にも関わっていた父は、「日本のアキレス腱は資源に恵まれないことだ」「金さえ出せば、石油が確保できると思ったら大間違いだ」と私や兄に言い聞かせていた。世界戦略について講演するからと、大きな模造紙に世界地図や、石油の流れを示すグラフを描くため、紙の四隅を子供たちに抑えさせた。母からは、「自分の一生なのだから、好きなことを究めなさい」「人と同じことをしたからといって、あなたが幸せな一生を送れるわけではない」と、オンリーワンの精神と自己責任を教えられた。
8・日本という国は、二度のオイルショックで経験したように、国家的な危機意識を企業や国民が共有した時に、脅威的な力を発揮することは証明済みだ。戦後の焼け野原から、不死鳥のように蘇り、世界第二位の経済大国になったのも、国家的な危機意識がなせる業だったのではないか。今こそ、世界をリードするためにもグランドデザインが必要だ。「不都合な真実」を直視し、「好都合な真実」に転換することこそ、日本のお家芸なのだ。
9・高齢者が増え、医療費がかさみ、年金の受給者が増える流れは、加速すれども、急に改まる望みは薄い。足し算ばかりである。しかし、今こそこうした算術的発想から、科学的な発想への転換が必要なのではないか。パラダイム・シフトである。
10・2006年10月、世界銀行の元総裁であるエコノミストのニコライ・スターン氏が、「今すぐ、地球温暖化の進行を食い止める努力を始めなければ、世界経済は壊滅的な打撃を受ける」という『スターン報告書』を発表した。「世界がこのまま温暖化に手を打たなければ、経済的な損失は810兆円に達する。その規模は20世紀の大恐慌や二回の世界大戦並みかそれ以上のダメージであろう。毎年、世界中で合計4兆円の対策を行えば、打撃は回避できる」
11・アラブでの取材が縁で、評論家の竹村健一氏がホストを務める朝の生番組「世相講談」のアシスタント役が回ってきた。竹村氏のもとで、六年半にわたってテレビメディアの特性を学び、ゲストの貴重な話を伺い、それはエキサイティングな毎日だった。
12・戦後、アメリカの占領政策に「3R、5D、3S」というものがあった。
①3Rは基本原則、5Dは重要施策、3Sは補助政策である。3Rは、復讐(Revenge)、改組(Reform)、復活(Revive)。
②5Dは、武装解除(Disarmament)、軍国主義の排除(Demilitarization)、工業力の破壊(Disindustrialization)、内務省や財閥などの解体(Decentralization)、そして民主化(Democratization)である。
③3Sは、性(Sex)の開放、映画・テレビなどのスクリーン(Screen)、最後にスポーツ(Sport)である。
日本を骨抜きにし、二度と米国に対し、はむかわない国にする。
13・戦前、戦後の歴代総理の指南役と言われた安岡正篤氏が「思考の三原則」をあげている。
①目先にとらわれず、できるだけ長い目で見る。
②物事の一面にとらわれず、できるだけ多面的に、できれば全体的に見る。
③何事によらず枝葉末節にとらわれずに、根本的に考える。
14・政治の役割は、国家の「大義」を高らかに掲げ、大義に国民が「共感」を抱ける工夫をする。そして、着実に「大義・を実現することだと、改めて自覚したい。
15・国力の方程式
元CIA副長官でジョージタウン大学教授のレイ・クライン氏によると、
P=(C+E+M)×(S+W)
つまり、国力=(人口と領土+経済力+軍事力)×(戦略+実行する意思)。
前半はハードパワーであり、後半がソフトパワーであり、この二要素を掛け合わせたものが国力だという。
16・フィンランドの例は、国家戦略とは、不利を有利に、ネガティブをポジティブに変える作戦の集大成であり、そのための総合的な政策と実行力がモノをいうということを教えてくれる。
17・国家の戦略において、必要な施策を進めるとともに、国民とその意思を共有していかなければならない。論理に留まらず、共感できる部分がなければ、国民の協力は得られず、結果的に国家の意思が脆弱なものとなる。
18・国家の安全保障には、かねてより提唱している「大義と共感」に加え、「信頼」が求められると考えている。ここは「敵を知り己を知れば、百戦危うからず」という孫子の兵法を胸に、国力の方程式作りが急がれる。そのことこそが政治の責任せある。「百戦」を起こさないた

ヒラリー・クリントン ーその政策・信条・人脈ー』春原 剛 新潮新書 239頁 2016・8
エッセンスをまとめました。
1・人類の歴史を紐解くと、その時代の男性を遥かに凌ぐパワーやリーダーシップ、そして人間的な魅力を持ち合わせた女性がいることに気が付きます。
2・この世の中に「世界女傑名簿」のようなものがあったと仮定しましょう。その冒頭にあたる「古代編」の代表選手としてはエジプトのクレオパトラや、中国の楊貴妃あるいは、日本の邪馬台国の女王、卑弥呼といった名前が連なる。
3・「近・現代編」では、大英帝国の凋落の一途を辿った英国を蘇らせたマーガレット・サッチャー英首相は筆頭候補になるだろう。伊勢志摩サミットで独自の存在感を示したドイツのアンゲラ・メルケル首相も、その一翼を担う存在だろう。しかし、それらの有力候補を押しのけて、「2017年度版」の名簿の最上位に躍り出るのは、ヒラリー・ロッダム・クリントンという異色の女性政治家ではないでしょうか。
4・米中ニ大国が世界をけん引する「G2論」に反対し、米国は日韓との同盟関係を基軸として中国に向き合う立場を鮮明にしている。
5・優れた政治家には総じて、「自分ならこの国をこう変えて見せる」という強い思いがある。
6・将来の雇用はどの分野から生まれるのか、こうした分野で活躍できる人材を育てるにはどうしたらいいのか、グローバル社会で戦える競争力をつけるにはどうしたらいいのか、などの課題が重要である。
7・哲学的な信念とプラグマティズム(実践主義)を持ち合わせ、状況に応じて自らの姿勢や対応を変えられる有能な政治家としての才能がある。
8・国務長官初外交の地はアジア。
9・中国との間に不要な摩擦を引き起こすことなく、米国が『太平洋国家』であることを再び強調すること。
10・「米国の太平洋の世紀」と題したヒラリーによる外交論文、「アジアへの旋回」という外交ドクトリン
①二国間安全保障同盟の強化
②中国など新興国との実務関係の深化
③地域の多国間機関への関与
④貿易・投資の拡大
⑤広範囲に及ぶ米軍駐留の実現
⑥民主主義と人権の推進
11・米国を中心とすたハブ&スポーク構造だけでなく、同じ価値観(民主主義、市場経済など)を共有する国家同士の「横のつながり」を重視し、この強化を促すアプローチ。
12・ヒラリーは安全保障政策についてオバマ大統領と違い、かなり「タカ派」的な要素を持っていたとニュヨークタイムズは分析している。
13・ヒラリーの対中政策に一定の影響力を与えた人物の一人ジム・スタインバーグ。ハーバード大学を20歳で卒業し、イェール大学院を終了し、ランド研究所の上級分析官やブルッキングス研究所の副所長などを歴任。スタインバーグが「戦略的再保証(Strategic Reassurance)」と名ずけた新しい対中政策の中核は、米中双方がお互いに敵意も悪意もなく共存共栄の道を歩む意思があると伝え合うことによって、かつての米ソ冷戦のような二極対立構造を生み出さないというところにある。中国を「責任ある利害共有者(Responsible Stake Holder)」 として扱うというコンセプトをある種、進化させたものである。勢力協調(Concert of
Power)を下敷きにしている。協力の機会を最大限設けて、可能な限り不要な摩擦や紛争を避けるべきだという考えで、中国との間に「戦略的信頼」を醸成していくのが、ヒラリーの対中外交の要諦となる可能性極めて高い。

ハーバードの人生を変える授業 2』タル・ベン・シャーハー だいわ文庫 366頁 2016・5
エッセンスをまとめました。
1・人の考え方がいちばんよく表れるのは、言葉ではない。その人がする選択である。
2・仕事を天職と考える。
建築現場の近くを通りかかった人がが、そこで作業している人に、いま何をしているのかと質問しました。最初の作業員は「レンガを積んでいるのだ」と答えました。二人目の作業員は「壁をつくっているんだよ」と答えました。そして三人目の作業員は「神を讃える大聖堂をつくっているのさ」と答えました。
人が仕事を通じ何かを得たり感じたりするかは、その人がどこに気持ちを向けるかによって変化する。
3・人間にとって「認められること」は、植物にとっての太陽である。
4・Win・Winによってみんなに利益をもたらすような結果を求めるなら、人間関係が改善され、人生をもっと楽しめるようになる。
5・経験に投資する。どれだけたくさん持っているかではなく、どれだけたくさん楽しむか、それが幸福を形づくる。
6・あらゆる経験、あらゆる相手から学ぶ。
7・いまを生きる。永遠とは、「いま」を織りなしたものである。
8・やりたいことをする。その日をどのように過ごすかは、とりもなおさず人生をどのように過ごすかである。
9・身近な人を大切にする。
10・適度なところでよしとする。
11・グローバルに考え、ローカルに行動する。
12・未来を創造する。何事も最初から運命づけられているのではない。過去に経験した困難が、新たな始まりにつながることもある。
13・人生は急ぐには短すぎる。
14・可能性に挑戦する。大胆に行動すれば、一時的に足場を失う。大胆さがなければ、自分自身を失う。
15・なりたい自分になる。自分に対して持っているイメージが運命になる。
16・楽観主義者はすべての困難な中に好機を見出す。
17・人生をシンプルに視点を変える。
18・主体的に動く。自分で人生をコントロールできていると強く感じられることが、他のどんな外的要因よりも幸福感を高める。
19・視点を変える。困難な時期をすばらしい経験に変えることが、人生での大切な技術かもしれない。雨を嫌うか、雨の中で踊るか、私たちは選択することができる。
問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論』エマニュエル・トッド 文藝春秋 254項 2016・9
エッセンスをまとめました。
1・今日、先進諸国が新たな歴史的転換期に近づき、新たな局面に入ろうとしている。
①第一局面は、1950年から1980年までの経済成長期。この期間にヨーロッパと日本はアメリカに追いつき、消費社会が到来した。
②第二局面は、1980年から2010年までで、経済的なグローバリゼーションを経験。このグローバリゼーションは、ここ数世紀のさまざまな世界的潮流と同様、アングロ・サクソン、すなわち英米によって推進された。ソ連や中国の共産主義はそれに抵抗し得なかった。③2010年以来、第三局面に近づいている。グローバリゼーションのダイナミズムが底をついてきているのが兆候。アメリカとイギリスは、「グローバリゼーション・ファティーグ[疲労]」に苦しんでいる。
2・現下の歴史的転換は、経済に関する転換である前に、その基盤において家族、人口、宗教、教育に関する転換である。
3・現在進行形のさまざまな出来事を、長期的な視座から、フランス歴史学のアナール派的な「長期的持続」の観点から捉える。
4・テロ、移民、難民、人種差別、経済危機、格差拡大、ポピュリズム、英国EU離脱、トランプ旋風といった今日的現象は、グローバリゼーション・ファティーグ、すなわちグローバリゼーションの限界とその転換に関わっている。いずれも、サッチャー・レーガン登場以来の数十年、英米主導で進められてきた「ネオリベラリズム&グローバリゼーションの終焉の始まり」を示す兆候である。
5・トット氏の研究は、対立する二つの考え方の対話=緊張の間にある。一つはイギリス型の文化相対主義で、もう一つはフランス型の普遍主義である。
6・日本は、日本回帰の時期を迎えている。日本人は、ヨーロッパのあずかり知らぬところで自立的な発展を遂げた江戸時代を懐かしんでいる。
7・イギリスは「ドイツに支配されているヨーロッパ」に対して立ち上がった。イギリスがEUを離脱した第一の動機は、移民問題ではなく、英国議会の主権回復だった。
8・アングロサクソン国家のイギリスとアメリカは、グローバリゼーションを引っ張てきたトップ2ヶ国である。結果として経済格差が最も大きくなっている国でもある。自らが打ち出したグローバリゼーションに最も苦しめられた結果、旧来的なナショナルな方向へバランスを戻した訳である。
9・政治や経済などさまざまな面で、フランス、イギリス、アメリカは、より自由主義的である。なぜそうなるかといえば、彼らの家族構成がそう促しているからである。言い換えれば、「自由」を「強制」されている。「絶対核家族」のアングロサクソン世界の平均的個人は、予め「自由」に向かうように決定づけられており、権威主義を許されていない。10・家族構造が政治的行動を決定するという私のテーゼ。
11・「プロレタリア階級こそ重要だ」というマルクスの考えに対し、「中産階級こそが歴史の鍵を握っている」と考えている。
12・日本はドイツやスウェーデンと同様なまったくのノーマルな直系家族の社会である。
13・グローバリゼーションが進んでも、文化の差異は残る。たとえば、出生率を見ると、アメリカとフランスは約2.0であるのに対し、ドイツと日本は約1.4です。これには家族システムの違いが影響している。父系的権威主義が強いドイツと日本では、女性と仕事と子育てを両立させるのが難しく、出生率が低下し、それが問題視されても、なかなか突破口を見出せない。
14・同じ直系家族の日本とドイツの間にも大きな違いがある。「外向き拡張志向で移民を受け入れるドイツ」と「内向き孤立志向の日本」という違い。
15・日本の文化を維持するためにも、日本はもう少し移民の受け入れや、女性が職業生活を営みながら子供を生み育てられる仕組みを取り入れる必要がある。
16・しばしば「個人」と「国家」は対立させられるが、国家が大きな役割を果たすことと、核家族システムもなかで個人が個人として生きることは、矛盾するどころか、実は相互補完的である。フランスの個人主義は強力な国家の存在によって成立している。
17・それに対し、直系家族の場合は構造が核家族よりも複雑で、家族内の連帯がより大きな役割を果たし、そのぶん核家族ほど国家を必要としない。直系家族の社会文化では、多くもことが国家でなく家族に依存している。
18・英米系の地政学者は「海洋勢力」[日米英]と「大陸勢力」[中露]を区別するが、日本はこの二分法に陥るべきでない。アメリカは、もはや「世界の警察官」でない。その意味で日本は自主的な防衛力を整える必要がある。安全保障は、過去の歴史と区別してプラグマティックに考えるべきである

どうなる世界経済 入門 国際経済学』伊藤元重 光文社新書 265項 2016・10
エッセンスをまとめました。
1・通商交渉には、基本四つの類型がある。
①マルチラテラル(多国間)
②リージョナル (地域間)
③バイラテラル(二国間)
④ユニラテラル(一方的行動)
2・1929年10月24日、ニューヨーク株式市場の大暴落(暗黒の木曜日)に端を発した不況は、瞬く間に世界中に広がった。株価の大暴落、失業の拡大、銀行も倒産、南米では多くの国が債務返済不能に陥った。大きな要因は、アメリカが自国を守るためにスムート=ホーリー法という関税に関する法律を制定して、二万点以上の輸入品の関税をすさまじく上げた。対抗策として多くの国がアメリカからの商品に高い関税をかけて報復し、結果としてアメリカの輸出は一気に半分以下に減った。
3・それから、イギリスとフランスは自国と植民地と友好国を守るために、いわゆるブロック経済の体制をしいた。イギリスは、エジプト、インド、オーストラリア、カナダなどと組んで、そのブロック内は関税ゼロ、外に対しては高い関税をを課すという施策に出た。
4・このように国内 マーケットを守るために、外からの貿易を制限したわけであるが、結果的には大恐慌はさらに悪化していき、貿易を縮小させて、世界経済の傷をさらに深くした。この時の最大の反省点は、各国が関税自主権によって勝手に関税を上げるという状態が保護主義に結びついたということ。
5・日本政府の借金は1000兆円を超えて、いまやGDP比で200%を超える政府の借金がある。日本政府は大きな借金を抱えている一方で、1980年代前半から30年以上にわたって経常収支の黒字を続けてきたので、オールジャパンでみると海外に対して多くの資産を保有していることになる。
6・日本は、2011年頃から貿易収支は赤字が続いているが、経常収支は黒字である。海外に対する債権の純増で資産が積み上がって、それに対する利子や配当などが入ってきて貿易赤字を埋めている。
7・国内総生産+輸入=消費+投資+政府支出+輸出
日本の物やサービスにおける総供給(左辺)と総需要(右辺)
左辺の供給チャネルは二つしかない。すなわち、国内で作る=国内総生産か、外国から輸入するか。この二つの和が日本における総供給となる。
左辺の需要サイドは、家計、企業、政府、外国の人。
8・トリレンマの関係。同時に三つを実現することができないという定理がある。
①為替レートを固定する。
②独自の財政金融政策を実行する。
③自由な貿易や投資を認める。
9・世界大恐慌、ブロック化、通過切り下げ
10・金融マン・リカードが唱えた輸出入の原則 海外から輸入するより国内で作ったほうが有利なものは国内で作って、国内で作るよりも海外から輸入したほうが有利なものは海外から輸入するのがよい。リカードはこれが貿易の原則であるとして理論化し、比較優位の理論が生まれた。
11・比較優位=サプライサイドの議論
比較優位サプライサイドの議論は、その国が、あるものを作るのに費用がどれだけかかるかということを比較することによって、より有利なものを作ってそれを輸出し、コストがかかりすぎるものは他国から輸入する。これにより国際的な分業が進み、全体として利益を得ることができるというもの。
12・グラビティ・モデル=ディマンドサイドの議論
現実の貿易はディマンドサイドの議論が重要。引力の法則は、二つの物質に働く引力は距離に反比例し、そして重量に比例する。これを国際貿易にあてはめると、二国間の貿易額は、両国の距離が近いほど大きくなり、また両国の規模が大きいほど大きくなる傾向がある。
13・日本の貿易構造のウエイトは、消費財、中間財・資本財、サービス。
14・ある経営学者が中国での自動車生産のすべてのプロセスを調べたところ、全体の約30%は日本の中間財・資本財が使われている。
15・国際的なグローバル・バリューチェーンが展開している。一つの製品が原料から製品部品、組み立てにいたるまでのプロセス、いくつもの国の間で、原料、部品が移動するケースもいまや少なくない。
16・I Phone6の部品供給メーカーの例
液晶パネルージャパンディスプレイ、シャープ
カメラーソニーなど
高周波部品ー村田製作所、TDK、太陽誘電など。
17・コストいくらでこれを作るかなど考えない。これを100円以下で作るのは、何個作ればよいかを考える。コストを見て価格を決めるのではなくて、価格を決めてそのうえで調達を考えるというスタイルに変わってきている。
18・ミドルインカムを超えて成長するためには、技術革新を生み出し、新しいビジネスを創出したり、産業を革新していくことが必要である。

哲学用語図鑑 ビジネスにも交渉にも役立つ、教養としての哲学思考』 田中正人 プレジデント社 351項 2015・3 第1刷発行、2015年第9刷発行
エッセンスをまとめました。
1・無知の知
ソクラテスは「知らないより知っていると思っている人」より自分のように「知らないのを知っている人」の方が賢いと考えた。
2・魂の三分説
プラトンにとって、人間の魂は理性・意志・欲望の3つから成る。これを魂の三分説という。そしてそれぞれ頭部・胸部・腹部に宿ると考えた。それが正しく働くと、それぞれ知恵・勇気・節制の徳となる。知恵・勇気・節制に正義を加えた4つの徳を四元徳という。
3・アリストテレスは世の中のすべての物事は4つの要因
①形相因(その物の形)
②質料因(その物を作っている材料)
③目的因(その物が目指すもの)
④作用因(その物を変化させる要因)
4・ストア派
欲望を理性(ロゴス)で制限して、禁欲的に生きるように心がけると(ストイックに生きる)、自然に調和できる。
5・エピクロス派
エピクロス派の平常心の保ち方はストア派のように禁欲的でなく、むしろ快楽を肯定する。エピクロス派にとって、平安な心の境地への到達の条件は①死の恐怖を取り除くこと、
②最小限の欲望を満たすこと、③友情を大切にすることの3つである。
6・スコラ哲学、三元徳上位説
アウグスティヌスは、プラトンの四元徳の上にキリスト教の三元徳である「愛」「希望」「信仰」を乗せた。
7・イギリス経験論
ベーコン、ロック、バークリ、ヒューム
イギリスでは、知識や観念はすべて五感(聴覚、視覚、触覚、味覚、臭覚)を通じて得た経験によるもので、生まれ持った知識や観念は存在しないという考え方が発展。おもに帰納法によって正しい知識を身につけられると考えた。
8・大陸合理論
デカルト、スピノザ、ライプニッツ
デカルトは、人は生まれながらにして神や善悪といった観念を持ち合わせていると考え、生得観念の存在を認める。これは、人は生まれつきイデアをしているというプラトンの考えに連なる。この生得観念を頼りに演繹法によって、正しい知識を身につけていくべこだと考えた。
9・モナド、予定調和
ライプニッツ
世界を精神的な存在だと考えると、精神的存在の原子に相当する概念をモナドと呼ぶ。そして世界はこのモナドによって調和しあってできていると考えた。ライプニッツによると、モナドは世界が最善になるようにあらかじめ神によってプログラミングされている。そのモナドが予定通りに互いに調和しあい、最善の世界を創る。これを神の予定調和という。
9・モラリスト
モンテーニュは考え方や文化の違う人間に対して、偏見、独断、おごりを捨て、謙虚に相手の考えや文化を学ぶ姿勢が大切だと主張。このような考えを持つ人をモラリストという。10・ア・プリオリ(先天的)
カントは、人間には共通の経験の仕方と理性の仕方があらかじめプログラミングされていると考えた。
11・理性の二律背反(アンチノミー)
カントの純粋理性批判
理性的に考えたにもかかわらず、まったく正反対の主張が証明されるのは、経験を超えた問題に対しては理性が混乱に陥るからである。そうした理性の混乱を導くカントの議論を理性の二律背反という。
12・理論理性と実践理性
カントは人間の理性を理論理性と実践理性の二つに分けた。カテゴリーなどによって物事を認識する能力を理論理性、人間が道徳的な行いを実践しようとする理性を実践理性という。どちらも先天的に備わっていると考えた。
13・格率
自分で自分に定めた行動の法則をカントは格率と呼んだ。格率は信念と言い換えることができる。私たちが道徳的な行いをしているとき、道徳は神から与えられた他律でなく、自分で作った自律となっている。カントは道徳的であることは自律的であり、自由である。
14・弁証法
ヘーゲルの『精神現象学』
矛盾や反対の立場を受け入れ、統一していくと、最終的に絶対知に行き着く。ヘーゲルは、弁証法は人間の思考の進化だけでなく自然や社会など世の中のすべての進化の原理原則だと考えた。
15・ヘーゲルの歴史哲学講義
ヘーゲルは、歴史は根底で動かしているものは人間が絶対精神を手に入れて自由になりたいと思う意識であると考えた。そしてその意識は少数の人間が自由だった時代から、すべての人間が自由を手にする時代へと歴史を推し進め、最終的に、人倫(人間が生活するうえで行為の規範となる法と道徳とを弁証法的に総合したもの)といわれる共同体を誕生させると主張した。
16・ショーペンハウアーは、歴史は進歩しているわけではなく、変化しているだけだと考えた。
17・実存主義
具体的に生きている私のあり方を探求する思想
キルケゴール、ハイデガー、ヤスパース、サルトル
ヘーゲルにとっての真理とは、広く一般的なものをいう。これに対してキルゲゴールにとっての真理とは「私にとって真理であるような真理」、つまり主体的なもの。私にとっての真理を探求する立場を実存主義という。
18・実存の三段階
キルケゴールは、人間が真の実存に到達するための道のりを三段階に分けて考察した。
①美的実存 欲望のまま快楽を追求し、感覚的に生きる。自分を見失い、心身の疲れと空虚感によって絶望する。
②論理的実存 絶望したものが立ち直るために、自分の正義感をもとに社会貢献をして自己実現しようとするあり方。けれども人間は完全でないので、自己中心的になってしまい、やがて社会との摩擦が強くなって絶望してしまう。
③宗教的実存 けれども、人間はこの絶望を通じて最終段階である宗教的実存へ到達する。宗教的実存とは神の前にたった一人で立つ単独者であることをいう。
19・自由放任主義 (神の見えざる手)
アダム・スミスは『諸国民の富』で、個人の利益の追求は神の見えざる手に導かれ自然とみんなの利益につながると考えた。したがって、国家が市場に介入する必要がないと説いた。
20・功利主義
ベンサム、ミル。社会全体の快楽の増大や苦痛の減少を基準にして、道徳や立法の判断をするべきだとする考え方。
ベンサムは、できるだけ多くの人にできるだけ高い快楽指数が与えられなければならないと考えた。「最大多数の最大幸福」と表現し立法の基準とした。
21・マルクスの思想
①マルクスは自由な経済競争は資本家階級(ブルジョアジー)と労働者階級(プロレタリアート)という新しい貧富の差を生み出してしまうと説いた。
②労働の疎外 労働は単なる生活の手段ではなく、他者との社会生活の中で自分自身を表現できる喜ばしいものであるはずである。けれども資本主義体制では、生産手段を持たない労働者は、資本の利益追求に振り回さ、本来楽しいはずの労働が苦痛になる。これを労働の阻害という。
③階級闘争 生産力(供給能力)は技術革新により絶えず発展する。そして固定化した生産関係は増大しすぎて生産力の発展を押さえつけようとする。この生産力と生産関係の矛盾はやがて階級闘争(社会改革)を引き起こし、新しい生産関係の時代を生むとマルクスは考えた。
④上部構造と下部構造 マルクスは、各時代の生産関係による経済のしくみを下部構造、法律、政治制度や、宗教、芸術、学問のような文化を上部構造によって作られ、決定されると考えた。
⑤唯物史観 ヘーゲルは人間の意識が歴史を推し進めると考えたが、マルクスは歴史を動かすのは意識のような精神的なものではなく、物質的なものだと主張。
⑥時代は、奴隷制➡封建制➡資本主義➡社会主義➡共産主義の順に進歩するとマルクスは考えた。
21・ニヒリズム
ニーチェ『力への意志』
人々が自分の行動の目的を見失うニヒリズムの時代の到来を確信したニーチェは「神は死んだ」と宣言。このような時代の中、自分自身で新しい価値を作り出す能動的ニヒリズムという生き方と、既存の価値の損失によって生きる気力を失ってしまう受動的ニヒリズムがあるとニーチェは言う。
22・ルサンチマン
弱者が、力ではかなわない強者のことを悪に仕立て上げ、自分を納得させる心理をニーチェはルサンチマンと呼ぶ。たとえば貧しい人がお金持ちを悪だとみなすことによって精神的に優位に立とうとする。
23・永劫回帰
世界の物質量は保存され、時間は無限だとすると何度も同じ原子の組み合わせが回り、時間は円環運動をしている。歴史や進歩や前進でなく、ただ変化のみが存在する。ニーチェはこれを永劫回帰と呼んだ。
24・プラグマティズム
パース、ジェイムス、デューイ。物事が真理であるかどうかを、経験の結果により判断する哲学的態度。役に立つ知識=真理。実用主義とは、実生活で有用な知識は真理。
道具主義とは、知識はそれ自体に価値はなく、行動の役に立つ道具でなければいけない。
25・集合的無意識
ユングは人間には個人の経験による無意識のもっと奥底に、全人類に共通した集合的無意識があるのではないかと考えた。
26・現象学 フッサール
他人も自分の体も過去の思い出も、すべては自分の意識の中にあるのであって、意識の外には何もないはずである。世界は自分の主観の中だけに存在し、主観の外にはない。なのに私たちは、世界が自分の外に実在していることを当たり前のように信じている。
27・パラダイム
科学は観察や実験によって一歩づつ連続的に真実に近づいているものではない。そうではなくて、パラダイムシフトによって断続的に世界の解釈の仕方が転換される。
28・構造主義 レヴィ=ストロース
人間の言動は、その人間が属する社会や文化の構造によって規定されていると考える思想。行動の意味は、一方だけから眺めても分からない。物事はつねに二項対立を軸として捉えるべきである。現象の意味をそれ自体からでなく、それと関係する社会や文化の構造から読み取ろうとする考え方を構造主義という。
29・リベラリズム・リバタリアニズム・コミュニタリアニズム
①リベラリズム 富の再配分などを通じて経済的な弱者を救済し、福祉国家的な政策を支持する立場をリベラリズムと呼んでいる。
②リバタリアニズム ノージック、ハイエク、フリードマン 国家は暴力、窃盗、詐欺などの侵略行為を防ぐことにとどまる最小国家であるべきである。福祉的役割は民間のサービスが行う社会が理想だと考える。このような考えをリバタリアニズム(自由至上主義)という。
③コミュニタリアニズミ マッキンタイア、サンデル 共同体の道徳や価値を尊重する立場。自分たちのコミュニティの倫理や習慣(エートス)を重視する。
30・ノマド
ドゥルーズとガタリ 一カ所にとどまることなく、つねに多種多様な価値の領域を横断するのがノマド的な生き方。

ひとはなぜ戦争をするのか』 A・アインシュタイン、S・フロイト、講談社学術文庫
111項、2016・6
エッセンスをまとめました。
1・国際連盟からの提案で、誰か好きな人を選び、文明の最も大切と思える問い(人間を戦争から解き放つことができるのか)について意見交換することになりアインシュタインはフロイトを選び、手紙を出した。
2・人間には本能的な欲求が潜んでいる。憎悪に駆られて、相手を絶滅させようとする欲求が。つまり戦争は、人間の攻撃的な本性ゆえに、けっしてなくならない。
3・フロイトは、人間には「生の欲動」(エロス)と「死の欲動」(タナトス)という二つの欲動が備わっている。「生の欲動」は、生を統一し、保存しようとする欲動のこと。一方、「死の欲動」は、破壊し、殺害しようとする欲動を指す。
4・他者に投影された暴力性の問題がある。つまり、自分は暴力的な人間ではないが、他者がいまだ野蛮で暴力的である可能性がある以上、こちらも対抗上、武装して自衛するしかない。
5・人と人の間の利害の対立、これは基本的に暴力によって解決されるものである。動物たちはみなそうやって決着をつけている。人間も動物であるから、やはり暴力で決着をつける。
6・人間には権力欲がある。そして金銭的な利益を追求し、その活動を推し進めるために権力にすりよる。戦争の折に武器を売り、大きな利益を得ようとする人たちがいる。戦争を自分たちの都合のよいチャンスとしか見ない。個人的な利益を増大させ、自分の力を増大させる絶好機としかみない。
7・人間の攻撃性を完全に取り除くことが問題でない。人間の攻撃性を戦争という形で発揮させなければよい。戦争とは別のはけ口見つければよい。戦争を克服する間接的な方法が求められる。
8・人間は、指導者と従属する者に分かれる。圧倒的多数は指導者に従う側の人間である。優れた指導層をつくるための努力が必要。自分の力で考え、威嚇にもひるまず、真実を求めて格闘する人間、自立できない人間を導く人間、そうした人たちを教育するために、多大な努力を払わねばならない。
9・文化が発展していくと、人類が消滅する危険性がある。なぜなら、文化の発展のために、人間の性的な機能がさまざまな形で損なわれているからである。文化の洗礼を受けていない人種、文化の発展に取り残された社会階層の人たちが急速に人口を増加させているのに対し、文化を発展させた人々は子供を産まなくなってきている。文化の発展が肉体レベル、有機体レベルの変化を生じさせている。
10・心理的な側面から眺めてみた場合、文化が生み出す最も顕著な現象は二つ。一つは、知性を強めること。力が増した知性は欲動をコントロールしはじめる。二つ目は、攻撃本能を内に向けること。好都合な面も危険な面も含め、攻撃欲動が内に向かって行く。
11・文化が発展すると、それが究極的には「心と体の全体の変化」をもたらす。かくして戦争への拒絶は、「体と心の奥底からわき上がって」くるようになる。文化の発展を促せば、戦争の終焉へ向けて歩み出すことができる。

LIFE SHIFT ライフ シフト 100年時代の人生戦略』リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット、東洋経済新報社 399項 2016.11.
エッセンスをまとめました。
1・人生が短かった時代は、「教育➡仕事➡引退」という古い3ステージの生き方で問題なかった。しかし、寿命が延びれば、二番目の仕事のステージが長くなる。引退年齢が70-80歳になり、長い期間働くようになるのである。
2・働く期間が長くなり、人生の途中で変身を遂げる必要性が高まれば、人的ネットワークを広げて自分とはまったく違うタイプのロールモデルを見つけ、新しい生き方の選択肢を知ることが大切になる。
3・過去200年間、平均寿命は10年で2年以上のペースで延びてきた。いま20歳の人は100歳以上、40歳の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上生きる確率が半分以上である。
4・1週間は168時間、人生70年なら一生涯は61万3000時間、人生100年なら87万6000時間になる。
5・平均寿命が延びれば夫婦の関係も変わる。夫婦の両方に所得があるほうが家計や貯蓄の面で有利なため、夫婦が二人とも職をもつ家庭が増えるだろう。
6・農村から都市への人口移動という人類史上最も特筆すべき大移住を目撃している。都市に暮らすこと、とりわけいわば「スマート・シティ(賢い都市)」に住むことを望む人が増えている。
7・ロボットや人工知能が代替できない仕事が残る。人間固有の二種類の仕事、それは複雑な問題解決に関わる能力(専門知識、帰納的推論の能力、コミュニケーションスキル)と対人関係と状況適応の能力である。
8・無形の資産が重要である。
①生産性資産 人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素。スキルと知識が主たる構成要素である。
②活力資産 肉体的・精神的な健康と幸福のこと。
③変身資産 100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる。そのために必要な資産が変身資産である。自分に対してよく知っていること、多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること、新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていることなどが含まれる。
9・ネルソン・マンデラは、「教育は世界を変える最も強力な武器」だと述べている。学ぶことは人生の重要な要素であり、その価値は所得の源になる。
10・学校教育は次第に、あらゆることの土台になる分析能力や思考の原則を築く場になっていく。そうした土台を築ければ、柔軟性とイノベーション精神を発揮し、いくつもの分野で活躍できる。
11・人間ならではのスキルと共感能力、意思決定能力、そして創造性とイノベーションの重要性が高まる時代には、新しい状況に合わせたリベラルアーツ(教養)教育がきわめて大きな経済的価値を生む可能性がある。
12・学び方も大きく変わる。「経験学習」の比重が大きくなる。教科書と教室での学習にとどまらず、実際の学習を通じておこなう学習のことである。
13・雇用主も、机上の知識だけでなく、実際の問題解決能力を持っている人物を欲しがるようになる可能性が高い。大学や大学院で経験学習の導入が進むことは間違いないが、教育機関以外の場での実践も増えるだろう。
14・加齢により脳の機能が低下するペースは、約3分の1が遺伝的要因で決まるが、残りは生活習慣で決まる。具体的には、日々の行動、コミュニティとの関わり方、人間関係の強さ、肉体的健康、食事などが関係してくる。
15・脳の機能低下を避けるために、体を動かすべきだとされる。理由ははっきりわかっていないが脳に多くの酸素が届くからなのか、成長ホルモンが刺激されるかなどである。
16・100年ライフで若々しさが強まる要因は、エイジとステージが切り離されれば、さまざまな年齢層が混ざり合う機会が飛躍的に増える。
17・レクレーション(娯楽)ではなく、自己のリ・クリエーション(再投資)に時間を使うようになる。労働時間の節約は自由時間を増やす。つまり、個人の発達を完成させるための時間をもたらすのである。過去100年間は、商業化された娯楽の消費活動を中心とするレジャー産業が台頭したが、今後は、個人レベルでの自己改善への投資活動に力を入れるレジャー産業が発展するかもしれない。
18・テクノロジーのイノベーションと長寿化の進行の影響により、教育という古い産業が大きな脅威にさらされていることは明らかだ。教育機関は四つの課題を乗り越えなくてはならない。それは、新しい学習テクノロジーと経験学習を取り入れること、年齢の壁を崩すこと、創造性、独創性、やさしさ、おもいやりを教える方法について深く考えること、そして、テクノロジーの進化に対応するための実践的な専門教育を急速に拡大させることである。

批判的思考 21世紀を生きぬくリテラシーの基盤』 楠見 孝、道田泰司 編 新曜社 283項 2015.1
エッセンスをまとめました。
1・「批判的思考」は、「相手を非難すること」と誤解されることがある。しかし、その本質は、証拠に基づいて論理的に考えたり、自分の考えが正しいかどうか振り返り、立ち止まって考えたりすることにある。
2・「リテラシー」は批判的思考を用いて情報を読み解く能力である。
3・批判的思考の概念を理解するためには、批判ー合理性ー反省性の三点を超点とする三角形をイメージするのがよい。
4・問題とは目標状態と現在の状態とが一致していない状態であり、そのズレをなくすことが問題解決である。問題解決の中核にあるのは、解の探索や検索である。
5・問題解決の流れを定式化し、そのなかにおける批判的思考について論じたものに、ブランスフォードらのIDEAL法がある。IDEALとは、問題の発見(Identifying)ー問題の定義(Defining)ー解の探索(Exploring)ー解の実行(Acting)ー結果の評価(Looking)の各ステップの頭文字を取ったものである。
6・フレーミング効果 意思を決定する場合、情報の意味する内容が同じであっても、そお問題意識の心理(決定フレーム)によって結果が異なる現象をいう。
7・批判的思考は学習と革新スキルの一つとして、創造性、問題解決、コミュニケーション、協働などを重視している。
8・思考の様式、仕事の様式、仕事の道具、世界における生活の4つのカテゴリーがある。
9・論理的思考のタイプ
①演繹推理(deduction) 一般的事実や原理から、特殊な事例または個別的な事実について推理すること。
②帰納的推理(induction) 特殊な事例または個別的な事実から、一般的事実や原理を推理すること。
③アナロジー推理 論理的厳密性は欠くが、ある領域の特殊な事例または個別的な事実に当てはまる関係を、別の領域の特殊な事例または個別的な事実に適用するような推理。
10・創造的発想 
創造的な発想を促すことを目的として開発された代表的な手法にブレインストーミングが挙げられる。ブレインストーミングは、四つの基本ルールがある。
①批判や評価は保留にする。
②大胆な発想を歓迎する。
③アイデアの量を重視する。
④アイデアを統合し改善させる。
11・MECE モレなくダブリなく。上位概念を網羅的に分解して列挙するときにMECEを考える。
12・総合的な学習
①発問 クリティカルな発問を行う。
②自主研究 個人及びグループで図書館などを活用し自主的に調査・研究する。
③省察 自己内省的に振り返る。
13・社会人基礎力における、「アクション」「シンキング」「チームワーク」は、現代日本に生きる者にとって、教養に相当する資質であると考えられる。
14・各専門分野の方法論などの専門知識をしっかり身につけ、他人からの批判に耐えうる議論を構築できる力を高めていく。
15・コンピテンシー 
業務や役割における効果的ないしは優れた行動に結果的に結びつく個人特性としてのキャパシティ、あるいは、強く要請された結果をもたらすものである。
16・ジェネリックスキル(汎用スキル)
学士力(スチューデントスキル)のなかのジェネリックスキルとしては、1)論理的思考力,2)コミュニケーション能力、3)数量的スキル、4)情報リテラシー、5)問題解決能力が含まれている。

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