10月 31
5年前、ワシントンのシンクタンク(ブルッキングス研究所、ジョージワシントン大学)の研究員として、東アジアグランドデザインの構想を描いていた。当時、多くのシンクタンクの研究所が、米国発の証券市場の大暴落、大企業の倒産、基軸通貨であるドルの暴落についての予測を行っていた。そして、その予測、証券市場の大暴落や企業の倒産は、見事に的中した。それも百年に一度といわれる予測を超えるスケールであった。
しかしながら、その証券市場の激変も日本を除くアジアにおいては、1年以内に回復した。今年の春を底に、欧米においても回復基調が継続している。知る限りでは、ポスト証券市場の崩壊が、これ程の短期間で達成されるとの予測はなかったように思う。
この教訓から学習できることは、世界規模で株や通貨が大暴落しても、いつまでもそれが続くわけでもなく、ある程度、リバウンドするものであるということである。そこで今、ここで考察したいのは、基軸通貨であるドルの地位低下に伴う、アジア共通通貨の将来像並びに世界通貨の誕生についてである。
三極の通貨システム
ワシントンのシンクタンクのバークステン所長は、「今後20年から30年の間に、国際的にはユーロとドルの二極通貨体制が誕生するだろう。そして、40-50年後には、中国の人民元が第三の極として台頭し、三極の通貨システムができる」と約2年前に予測している。
この予測は、予測を遥かに超える速度で実現される兆しが見られる。第一、オバマ政権は、国際協調主義を掲げ、経済の相互依存関係を深めている。第二、日本や中国をはじめとするアジアの過剰貯蓄の国と、米国の過剰消費国の組み合わせにより、グローバルな不均衡のバランスがとれることから、ドルと将来のアジア共通通貨の協調の可能性が模索されている、第三、G8やG20に加え、ドル・ユーロ・アジア通貨の三極体制を考慮に入れたG4(米、EU,日本、中国)のサミットが動き出している、第四、米国の軍事力の相対的な低下、米国の金融センターの役割が薄れ、基軸通貨であるドル離れが加速し、他の通貨との協調が促されている。
現在、世界の基軸通貨はドルであるが、EUの拡大とユーロ以外のロシアや中東・アフリカ諸国のユーロ圏への関係を深めていることから、世界の取引通貨の割合は、ドルのシェア(45%)が低下傾向にありユーロのシェア(35%)が増える傾向にある。ポンドを加えると、世界の取引通貨の9割は、ドル、ユーロ、ポンドが独占している。
これらの通貨を持つ国々は、ポスト世界金融危機の回復が、日本を除くアジア諸国と比較すると遅れている。東アジアの経済パワーや東アジアの金融システムが過小評価されていることは明らかであり、ドル・ユーロに並ぶアジアの共通通貨の構築は、世界経済の進展に不可欠であると考えられる。
30年近く前のマレーシアのマハティール首相による、東アジア経済協議体構想、12年前に東アジアの経済危機や昨今の米国発の金融危機の教訓を経て、ついに鳩山首相の東アジア共同体の提唱と東アジアの結束が世界的に認知されたようである。
近未来の予測では、世界の経済力は、米・EU・東アジアの三極に三等分され、その後、東アジアが世界の50%の経済力を持つことになると考えられる。アヘン戦争前に中国一国が世界の30%の経済力を持っていたと考えると、当然の成り行きのように考えられる。恐らく、ドルの地位が低下したり、アジアに共通通貨が生まれても、本質的には、国際協調主義を名目とする米国の背後に存在するユダヤ資本や中国の背後にある華僑の資本が重要なプレーヤーになると考えられる。
世界の通貨が、ドル、ユーロ、アジア共通通貨の三極になった後に、クレジットカードが世界のどこでも通用するように新たな世界を一つにする世界通貨が、20-30年後に生まれているように予測する。