6 月 11

鳩山首相辞任に伴い日本の政局が揺らいでいる。外に目を向け
ると、北朝鮮の攻撃で韓国の哨戒艦が沈没し、日本の目と鼻の
先にある朝鮮半島の緊張が極めて高まっている。このような内
外の不確実要因が同時に進行するという喫緊の状況の中、内外
の情勢の変化を読み解き、日本の羅針盤を明確に描くことが大
切である 。

米軍の県外移設という鳩山首相の公約が破棄されたということ
は、アジアに軸足を置くという政策から、再び日米同盟重視に
振り子が戻されたことを意味する。その背景には、中国の驚異
的発展に伴う経済的・軍事的脅威と、北朝鮮が示す南北関係の
全面閉鎖や不可侵合意の全面破棄、そして北朝鮮を孤立させる
ための国 際社会の包囲網づくりなどがある。

ベルリンの壁が崩壊し20年以上経過したが、未だ朝鮮半島には38
度線を境に冷戦構造が残存している。しかし、その勢力均衡の
構造も中国の突出した発展により徐々に崩れようとしている。
的確に表現すると上海を中心とする経済的ネットワークの拡張
のみならず、上海協力機構が示す中国、ロシア、中央アジア、
そして次第にインド、イラン、モンゴル、東南アジアをも包括
する安全 保障体制が構築され、ひいては、その勢力は朝鮮半
島にも及ぶ可能性が増しているのである。

日本が示す東アジア共同体は、ユーラシア大陸の中心に位置す
る中国パワーにより飲み込まれてしまう可能性も否定すること
はできない。つまり、米国発の世界経済危機とヨーロッパを覆
うギリシャやスペイン等の問題は、相対的に中国勢力の向上に
寄与しているのである。

それが世界の潮流である。米国もヨーロッパも中国と緊密な関
係を保つことで相互補完的な繁栄が実現できると考えているの
である。そのように多角的視点で日米中の三角関係を考察する
と、日本が米国を重視するか中国を重視するかという選択の問
題でなく、米中の連携が強化されることにより日中関係と日米
関係も恩 恵を受けることができるという柔軟な外交戦略を実
践することが肝要であろう。

日本と中国の両方の大学で教えている中国人の友人が、最近の
上海の発展に接し、「この20年の間、日本は何をしてきたのか
」と経済発展における日中の明暗にため息をつきながらも内心
喜びの笑顔を浮かべていた。明らかに日本は、更なる経済発展
の好機を見事に逃してきたのである。つまり、日本が安全保障
のみならず経済分野においても米国への依存が高すぎたことが
、経済発展を遮断してきたのであろう 。更に、米国の共産主
義封じ込め政策の恩恵を受けてきた日本が、日本の戦略的思考
を麻痺させたのかも知れない。

日本を取り巻く国際情勢は激しく変化している。そんな時、日
本は米国への連携を高める極を大切にすると同時に中国との協
力も高める極を同時並行的に推進することが求められている。
一方の極に傾くのでなく、両極のバランスを考え広く柔軟性の
ある政策が必要なのである。

中国には、北京を中心とする共産主義のパワーがあり、上海を
中心とする経済発展に関わるネットワークチャイナがある。二
つのパワーが調和しているのが中国の発展の源泉である。同じ
ように、日本にも、とりわけ安全保障の側面においては米国依
存が得策と考える勢力があり、同時に21世紀はアジアの時代と
考えアジアを機軸に置く勢力がある。要は、この二つの勢力を
調和させる戦略を示す羅針盤が不可欠なのである。