11 月 24

通貨の変動は、想像以上に激しい。40年前のニクソンショックまで1ドルは360円、最高値は75円32銭、円高トレンドが続いている。360度である円が拡張され、ドルの価値が5分の1に収縮したのである。ニクソンショックによりブレトンウッズ体制が崩れ、スミソニアン体制に変わったり、また固定相場制から変動相場制に移ったり、さらにプラザ合意により大きく円高に誘導されたのである。それは明らかに戦略的になるべくしてそうなったのである。

リーマンショック前、1ドルは、110円辺りで推移していた。それが、みるみる内に円高に拍車がかかり、ドルの価値が8年前のドル高に比べ半分近くに落ちたのである。米国が戦略的に金融・財政政策を発動させなければ自然発生的にこのような変動が起こるとは考えられない。円高に誘導された本質はどこに起因しているのだろうか。

第一に、マネーサプライが気にかかる。ドルとユーロの供給量に比較し、円がその半分以下になっている。お札を無造作に増刷すればその通貨の価値が下がる。基軸通貨であるドルとユーロは、リーマンショック以来の2倍程度増刷された。財政支援策として急激に刷られたのである。当然のことながら相対的に円の価値が上昇する。

現在、ドルの市場流通量は、2兆ドル、円は100兆円である。単純に考えるとマネーサプライの需給の関係では、1ドルは、50円となる。8年前、1ドル135円であったので、135円と最高値の75円の平均をとればだいたい100円である。100兆円の円を増刷し、円の流通量が200兆円になれば、自ずと100円辺りに戻ると考えられる。

日本の経済は、失われた20年と言われ 中国に世界第二の経済大国の地位を譲ったが、まだまだ底力は、相当なものである。また、円換算で経済成長を観れば、成長率は停滞しているよに見えるがドル換算では、かなりの成長率のように誤解してしまう。

戦略的に為替変動が操作されている状況においては、通貨が強いからといってその国の経済が強いとは考えられない。世界の基軸通貨がドルに続きユーロであり、加えて、円が評価されているなら、ドルとユーロと円が勢力均衡する金融政策をとることにより、円の独歩高を回避することが可能となる。それは、円の量的緩和策であり、ドルとユーロに協調しながら円を増刷することである。

第二に、現在の世界経済危機は、米国と欧州の財政破綻に端を発している。日本もギネス級の財政赤字を抱えているが相対的にみて東アジアの経済圏にある日本の不安定要因は低減される。中国の外貨準備高は、4兆ドル以上あり、ドル一辺倒であった中国の外貨準備が円などに分散されており、中国の円買いが円高を支えていると言われている。

世界経済は、北米、ヨーロッパ、東アジアの三極で構成されている。21世紀はアジア・太平洋の時代と言われているが、ドルやユーロの基軸通貨があるにもかかわらず東アジアの通貨は発展途上である。円高の一因は、将来のアジア通貨への布石とも考えられる。

第三には、米国とヨーロッパの経済が成熟しているから潜在性の高い中国をはじめとするアジア市場に浸透するためにドルとユーロの価値を下げ、輸出主導型の金融政策を目指しているように考えられる。米国はすでにゼロ金利政策を行っているので、ドル安に煽る政策としてドルの増刷を行っている。

基軸通貨が増刷しているので、それに次ぐ円が同じ割合で増発されてもハイパーインフレは発生しないと考えられる。円高でデフレのこの願ってもない状況の中で、円を増刷し、その金利が発生しない資金を東北の復興支援や原発問題に関するエネルギーの安全保障に投下する絶好のタイミングではないだろうか。ドルの流通量にあわせて100兆円が増刷されるなら、復興支援などを差し引いても国民の一人一人に50万円を分配することが可能となろう。このように円高を是正すると同時に国民に恩恵を提供する政策が望まれているのではないだろか。