12月 19
 沖縄の問題で日米同盟が揺らいでいる。日米の安全保障が動揺している内に、国内の問題はさておき中国・ロシア・中央アジア・インドなどの連帯を強化する上海協力機構の動きが心配である。この問題を解決するためには、太平洋を挟む日米の協力のベクトルを高めるのみならず、とりわけ沖縄のインフラ整備を強化し、ひいては47都道府県で最下位といわれる沖縄の県民所得を倍増する経済刺激策が必要だと考える。
 
 ハワイには、米軍の陸海空の基地が集中している。ホノルルの東西センターに勤務していた頃、陸海空のそれぞれのゴルフコースでプレーし、改めて米国の軍人に対する優遇策を垣間見た。50番目の州であるハワイは、米国の中でかなり一人当たりの所得が高いと思う。
 
 ハワイが米国の最南端であり最も新しい州である。それに類似するのは沖縄である。加えて、太平洋戦争の傷跡が今も残っているのは、この地である。違いは、極端な所得の格差である。
 
 安全保障の観点で沖縄は、米軍基地の拠点として日本のために貢献してきた。にもかかわらず沖縄県民の所得が最下位なのは、自民党の大失策である。沖縄の戦中、戦後の犠牲が米軍基地移転と関係があるとすると、新政権が、明確に示すべき第一のビジョンと実践は、例えば、十年で沖縄県民の所得を倍増することではないだろう。
 
 3年ほど前に普天間基地の海兵隊8千人がグァムに移動する審議をキャピタルで公聴したとき、グァムの下院の議員が、米軍の誘致に伴う経済刺激策を提案し、グァムをハワイのように豊かにするという発言に接した。観光産業が主流で製造業など地球環境に相応しくない産業育成に制約があるハワイやグァムなどの島にとって安全保障の一翼を担うことで、生活水準を向上させることは賢明な政策であると考えられている。
 
 安全保障は、国家の存続にかかわる意志であり、限定された地域の世相に流される意思により決定されてはいけないと思う。戦後、日本の安全保障を語る場合に忘れてはならないのは、戦後間もないころに国務省の政策部長であったジョージ・ケナンが匿名で米国の外交雑誌に投稿した「X論文」のソビエトの源泉と共産主義封じ込め政策である。この米国の政策により、敗戦国、日本が朝鮮戦争の特需などを通じ、戦勝国である中国やソビエトよりも経済発展を成し遂げることができた。同時に、東アジア共同体が提唱されながらも周辺諸国としっくりいかないのは、戦前の日本の侵略行為以上に、米国の傘のもとで経済発展を遂げた日本へのジェラシーが影響していると考えられる。
 日本の戦後復興は、米国の政策によるところが大きくまた、沖縄返還は、日米の秘密協定のみならず、同盟国としての日米の信義がある。その信義が揺らぐようなことになれば、周辺諸国の日本へのジェラシーが爆破し、日米双方や東アジア共同体への実現も遠ざかる。
 
 今、日本が為すべきことは、沖縄県民、国民、米国の三者が満足する政策を打ち出すことである。それは、ハワイをモデルとした沖縄を築きあげることだろう。それには軍事基地と環境産業の共存、並びに上海協力機構のような東アジアのシンクタンクの拠点や国連の専門機関を構築することも考えられよう。将来的には、米軍の負担を減らし、自衛隊と国連の多国籍軍による集団安全保障の道、或いは、戦争を未然に防ぐ予防外交に徹した経済協力などを主体とした協調的安全保障への理想もあろう。
12月 10

名古屋学院大学 2009年12月2日 

多角的・重層的視点で世界の中の日本を展望

東アジア共同体構想

ワシントンのシンクタンクで習得した歴史の潮流の解読法と哲学的戦略思考

 

京都市生まれ。関西学院大学卒業後、日本企業から新入社員で戦時中のバグダッドに駐在。その後、ロータリー財団大学院奨学生として南アフリカに留学。外務省の国連の登竜門である、JPOを経て、国連工業開発機関(UNIDO)の正規職員。西アフリカのリベリアと本部ウィーンで勤務。ハワイの東西センター、ワシントンのブルッキングス研究所、ジョージワシントン大学の研究員を歴任。大学卒業後、30年かけ、日本企業、国際連合、ワシントンのシンクタンクで勤務しながらイラク、オーストラリア、南アフリカ、リベリア、オーストリア、米国のフィールドで吸収したことを語る。

独立性と現状分析に留まらない将来への具体的なビジョン構築

Independent research shaping the future , Independence , Quality,Impact.

Think感性で考え、Learn 理性で学び、Lead世の中に伝える

未来から現在を照らす 多角的視点クローズアップとロングショット 

4つの理由で分析 現実的理由、本質的理由、道義的理由、発表された理由

 

 

 

 歴史の潮流を解読する

1.文明の視点

トインビー 歴史の研究 700 年ごとに東西の文明の繁栄・衰退

4大文明 エジプト・メソポタニア 西へ移動、インダス・中華 一定の位置に留まり放射線状に拡大 21世紀はアジア・太平洋の時代

 

2.宗教の4つのパターン

一神教 (ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)、宗教が混沌としている(インド)

宗教を正式に認めない(中国)、多神教 同時に複数の宗教を崇拝 (日本)

 

3.景気循環

コンドラチョフの50年景気変動 戦争・イノベーション・通貨の供給量・資源の需給

グズネッツの波 (建築循環) 約20年サイクル

ジュグラーの波 (設備循環) 約10年サイクル

キチンの波 (在庫循環) 約40ヶ月サイクル

 

4.国際政治・国際社会像

主権国家体制 1648年 ウェストファリア条約

国際共同体 国境を越えた利益や価値を意識、国際機構

世界市民主義 (cosmopolitanism,国際社会における基本単位は個人、平和は世界の統一によって達成

 

5.国際関係

 現実主義 (Realism)、自由主義(liberalism)、グローバリスム(Globalism

 

6.安全保障

覇権安定型、勢力均衡型、集団安全保障、協調的安全保障

 

 

東アジア共同体構想

東アジアの歴史の潮流 

セポイの乱(インド、1857)、南北戦争(1861-65年)の影響 明治維新(1968年)

日清戦争(1894年)、日露戦争(1904年)、日韓併合(1910年)、辛亥革命(1911年)

満州事変(1931年、リットン調査団、国際連盟脱退)、太平洋戦争(1941-45年)

朝鮮戦争(1950-53年)、冷戦終焉(1989年、天安門事件 6月)

 

孫文の大アジア主義 西洋の覇道と東洋の王道

中江兆民 三酔人経綸問答 豪傑君・洋行帰りの紳士、南海先生

岡倉天心 東洋の理想 アジアは一つ 分断と統治

和魂洋才・和魂漢才・和魂萬才

 

北東アジアグランドデザイン 空間開発計画 

上海協力機構

朝鮮半島の問題 ソフトランディング、ハードランディング、現状維持、核を保有

 

ビジョンを描くための哲学的戦略思考

 

1. ドゥルーズ(20世紀、フランス)は、遊牧民(ノマド)的思考として一元的・固定的な考えに陥ることを批判し、多角的・重層的視点で思考することの重要性を説いている。クローズアップとロングショットの両方の視点で、世の中の現象を把握することが大切である。

 

2.弁証法で世相を展望

 国連やワシントンのシンクタンクで学んだことは、建設的な議論を通じ、ベストのシナリオを創造することであった。ヘーゲル(18-19世紀、ドイツ)の弁証法は、正論・反論・双方の長所をミックスさせた排他的でない議論の重要性を説いている。

 

3.プラグマティズム(実用主義)

 ジェームス(19-20世紀、アメリカ)は、物事の真理を実際の経験の結果により判断するがプラグマティズムの戦略的思考の重要性を説いている。マキャベリ(15-16世紀、イタリア)は、理想と現実を握手させるためには、柔軟性のある多種多様な行動が必要であると述べている。

 

4.予定調和説・性善説

 ライプニッツ(17-18世紀、ドイツ)は、予定調和説に則り、最終的には世界は最善の道を歩むと説いている。ビジョンを描くにあたり、「宇宙の目的」に従った、協調・共生への哲学が根底になければいけない。

 

5.自然との共生

 スピノサ(16-17世紀、オランダ)は、自然界の万物に神を見出すという東洋的な見方を示している。この汎神論の見方は、現代社会における宗教・文明の対立構造を調和させるパワーを秘めている。老子(紀元前5-4世紀、中国)は、「上善水の如し」と人工的なものは悪で、自然の大切さを伝えている。 </ SPAN>

 

6.本質を探究

 ベーコン(16-17世紀、イギリス)は、4つの先入観(主観、独断、伝聞、権威)を排除することで実用的知識を得ることができると説いている。

  

12月 01
京都に訪れる観光客は、京都市の人口の30倍の年間5千万人。この数字が現しているように日本人の精神支柱となる日本の文化や伝統を担う京都への評価が年々高まっている。また、グローバリゼーションが進展する程、世界の中の京都の役割が注目される傾向にある。
 
先進国、途上国を問わず多くの魅力的な土地で生活した。特に、世界で最も住みたい街に選ばれたウィーンでの5年間は、文化の香りに思う存分浸ることができた。そのウィーンと比較しても、京都はウィーンに勝るとも劣らぬ世界のトップの地位にあると思う。例えば、自然を比較するとウィーンの森とドナウ川、京都盆地を囲む山と鴨川。文化においては、建国千年の根底にあるハブスブルク家、1200年の京都の雅の文化。これらに加え、京都には、伝統産業のみならず、任天堂をはじめとする世界的企業がある。
 
尽きることなく京都の魅力を描くことができるが、同時に奇妙なこともある。紅葉のライトアップで有名な某寺院を訪れたとき、拝観料が千円という高額であることと、仏教や日本文化についてお寺のお坊さんから講話や説明を受ける機会がほとんどないことである。少なくとも欧米の教会では、キリスト教のみならず文化についても学ぶ機会があった。
 
京都のお寺は、観るものであって、聞いたり学んだりすることができる場でないのだろうか。日本では年間3万人の人が自殺し、精神科医の診察を受ける患者が増えている。このように健全でない社会においては、西洋医学としての精神科医の役割のみならず、日本人がずっと頼ってきたお寺の精神面におけるサポートが求められているのでないだろうか。
 
そんな疑問を持っている時に、京都の哲学の道の近くにある法然院第31代貫主の梶田真章さんの講話を拝聴する機会に恵まれた。まず、心地よいありのままの自然の空間に満たされた法然院の拝観料はなく、1時間強の梶田さんの講話が無料なのには驚いた。さらにその講話も一方的なお話でなく、最初に質問がありますかと問いかけられ、それを丁寧にお答えされる様子は、まるでワシントンのシンクタンクのようでもあった。
 
「仏教は、人生をいかに楽に楽しく生きるかを教えてくれる知恵なのです」、「自分の好きなことややりたいことを考え、追求し、あなたがあなたとして生きていくだけでよい」と説かれる梶田さんのお話は、実に分かりやすかった。アインシュタイン流に言えば、「真理は単純で美しい」と思った。
 
法然院には、文学者の谷崎潤一郎、哲学者の九鬼周造、経済学者の河上肇らの墓がある。偉人が親しんだ法然院は、まさに考える空間に満ちており、貫主と直接対話ができ、今を生きるヒントを得られる開かれた共同体なのである。
 
景観や伝統文化に魅せられて京都におびただしい数の観光客が、訪れる。そして、京都は観光に磨きをかけ利益を上げる。お寺においては、高額の拝観料を取るところが主流であるが、法然院のように拝観料もなく、講話も聴けるところもある。それはそれで、ありのままでよかろう。
 
世界の中の京都の役割を考察した時、5千万人という内外の観光客に中国の古典にある「観国之光」の本来の意味である「その国の文化を観察して良く知る」に従い、仏教の精神性や宗教性や日本文化の教養を伝え、世界に発信することが重要であろう。現代資本主義が示す市場経済のお金の概念でない、法然院のような信頼や尊敬をベースにした精神性の共同体は、貨幣を超越するのではないだろうか。
12月 01
NHK大河ドラマの影響もあり世の中は坂本竜馬ブームである。想えば40年近く前に、司馬遼太郎の「竜馬が行く」を読んだことは実に貴重なことであった。竜馬の自由な発想と行動に憧れ、常に人生のターニングポイントに直面した時に竜馬なら如何に生きるかを問いかけてきたものだ。
 
きっと竜馬なら世界を翔けながら、途上国の貧しい人々に会ったら、温かい手を差し伸べ、経済発展へシナリオを描いたであろうし、また紛争や戦争で苦しんでいる人があれば、平和へのビジョンを提示し、自ら命がけで汗をかいたであろうと考えたものだ。
 
竜馬ならきっと世界を相手にスケールの大きなビジネスで財をなしたかもしれないし、また世界平和のために国連で働き、日本という枠を超越し地球にために働くことに興味を持ったかもしれない。竜馬の明治維新の時代と比較し今は非常に恵まれた時代であり、情熱と自立と貢献の覚悟さえあれば、世界を舞台に活動することは可能なのである。
 
とにかく世界に出たいという想いが、戦時中のバグダッドをはじめ、水道も電気もないアフリカの奥地の生活を経て、国連で勤務したり、平和構想を練るワシントンのシンクタンク(政策研究所)での経験を積む起爆剤になった。夢想と現実を握手させるのは、情熱と意思であると実感している。
 
グローバリゼーションに活かす伝統・文化の重要性
この二十数年のグローバルな生活を経て、今は、故郷の京都で、京都から世界に少しでも地球益のためのメッセージを発信したく考えている。世界の現場で直覚したことは、世界は想像以上の速度でグローバリゼーションが進化しており、そして同時にその地域やその土地の伝統や文化の重要性が高まっているということである。例えば、ビジネスの世界、特に大量生産や機械化が可能な分野は、中国やインドのように豊富で安い労働力を持ち、市場が大きいところの生産が有利であり、恐らく日本は工業化においては、現在の地位を維持することはできないと考えられる。
 
しかしながら、機械化や大量生産ができない分野である、手作りであり匠の技と伝統が活かされたアナログ式のものや知恵は重宝されると考えられる。恐らく、グローバリゼーションが進む世の中において、日本の経済発展において必要なことは、世界で最高の素材と最も効率的な生産をミックスさせ、加えて日本独特の創造性に満ちた知恵を総合させることだと考えられる。
 
総合的・統括的に創造しプロデュースする能力
人類の歴史は、狩猟・採集の時代、農耕の時代、産業・工業化の時代に変遷し、特にここ2、30年は情報技術が主流となり、今後、これらすべてを総合的・統括的に創造しプロデュースする能力が必要とされる時代が到来していると考えられている。
21世紀の今日、最も必要とされる能力は、地球全体を眺望し、人類の歴史、哲学、宗教、科学技術などすべてを総合し、協調・調和させることにあると考えられる。このような能力を習得すべく、日本のみならず世界の大学や研究所の門をくぐったが、現実には、概してアカデミックな分野においては、経済学、政治学、理科系、文科系といったように細分化・専門化された分派した体系が主流であった。
 
このような学問に満足できず、生きとし生けるもののすべての源底に共通する学問と実践の探究をよりグローバルに行ってきた。そして、ますます創造やプロデュースが必要とされる世相においては、千様万態の学問を融合させた普遍的な新しい学問を習得できる環境が必要であると考えられる。
 
そのような学問の環境が日本になければ世界の大学から学べばいいし、それでも納得しなければ、自分でそれを創造すればいいと思われる。最終的には、学問は、他力本願的に供給されるものでなく、自学自習することに価値があると思われてならない。
 
論理的であろうと非論理的であろうと、知的直観、経験的直観などすべての五感を活用して、地球益のためにベストを尽くすことが大切であろう。竜馬の魅力は、そのような日本人的な柔軟な思考と行動力を備えている点にあると思われる。2010年は竜馬ブームで、現在の就職難とか不景気が吹っ飛ぶことを期待したい。
10月 31

   5年前、ワシントンのシンクタンク(ブルッキングス研究所、ジョージワシントン大学)の研究員として、東アジアグランドデザインの構想を描いていた。当時、多くのシンクタンクの研究所が、米国発の証券市場の大暴落、大企業の倒産、基軸通貨であるドルの暴落についての予測を行っていた。そして、その予測、証券市場の大暴落や企業の倒産は、見事に的中した。それも百年に一度といわれる予測を超えるスケールであった。

 
 しかしながら、その証券市場の激変も日本を除くアジアにおいては、1年以内に回復した。今年の春を底に、欧米においても回復基調が継続している。知る限りでは、ポスト証券市場の崩壊が、これ程の短期間で達成されるとの予測はなかったように思う。
 
 この教訓から学習できることは、世界規模で株や通貨が大暴落しても、いつまでもそれが続くわけでもなく、ある程度、リバウンドするものであるということである。そこで今、ここで考察したいのは、基軸通貨であるドルの地位低下に伴う、アジア共通通貨の将来像並びに世界通貨の誕生についてである。

 
 三極の通貨システム
 ワシントンのシンクタンクのバークステン所長は、「今後20年から30年の間に、国際的にはユーロとドルの二極通貨体制が誕生するだろう。そして、40-50年後には、中国の人民元が第三の極として台頭し、三極の通貨システムができる」と約2年前に予測している。
 
 この予測は、予測を遥かに超える速度で実現される兆しが見られる。第一、オバマ政権は、国際協調主義を掲げ、経済の相互依存関係を深めている。第二、日本や中国をはじめとするアジアの過剰貯蓄の国と、米国の過剰消費国の組み合わせにより、グローバルな不均衡のバランスがとれることから、ドルと将来のアジア共通通貨の協調の可能性が模索されている、第三、G8G20に加え、ドル・ユーロ・アジア通貨の三極体制を考慮に入れたG4(米、EU,日本、中国)のサミットが動き出している、第四、米国の軍事力の相対的な低下、米国の金融センターの役割が薄れ、基軸通貨であるドル離れが加速し、他の通貨との協調が促されている。
 
 現在、世界の基軸通貨はドルであるが、EUの拡大とユーロ以外のロシアや中東・アフリカ諸国のユーロ圏への関係を深めていることから、世界の取引通貨の割合は、ドルのシェア(45%)が低下傾向にありユーロのシェア(35%)が増える傾向にある。ポンドを加えると、世界の取引通貨の9割は、ドル、ユーロ、ポンドが独占している。
 
 これらの通貨を持つ国々は、ポスト世界金融危機の回復が、日本を除くアジア諸国と比較すると遅れている。東アジアの経済パワーや東アジアの金融システムが過小評価されていることは明らかであり、ドル・ユーロに並ぶアジアの共通通貨の構築は、世界経済の進展に不可欠であると考えられる。
 
 30年近く前のマレーシアのマハティール首相による、東アジア経済協議体構想、12年前に東アジアの経済危機や昨今の米国発の金融危機の教訓を経て、ついに鳩山首相の東アジア共同体の提唱と東アジアの結束が世界的に認知されたようである。
 
 近未来の予測では、世界の経済力は、米・EU・東アジアの三極に三等分され、その後、東アジアが世界の50%の経済力を持つことになると考えられる。アヘン戦争前に中国一国が世界の30%の経済力を持っていたと考えると、当然の成り行きのように考えられる。恐らく、ドルの地位が低下したり、アジアに共通通貨が生まれても、本質的には、国際協調主義を名目とする米国の背後に存在するユダヤ資本や中国の背後にある華僑の資本が重要なプレーヤーになると考えられる。
 
 世界の通貨が、ドル、ユーロ、アジア共通通貨の三極になった後に、クレジットカードが世界のどこでも通用するように新たな世界を一つにする世界通貨が、2030年後に生まれているように予測する。
10月 28
 近代の歴史をひも解いてみると、列強のアジア・アフリカへの植民地化、日本の大陸進出、戦争、敗戦、貧困からの脱出、冷戦構造におけるイデオロギーの戦い、経済至上主義、米国一国主義による中東への先制攻撃、米国を震源地とする金融システムの崩壊など激変の渦中にあったことが解る。
 
 そして、世界は今、これらの教訓を生かし、大きく国際協調主義にベクトルが向かおうとしている。経済面では、特に証券市場は今年の春を底に大きく上昇基調に変化している。外交や安全保障においても、米国のオバマ大統領が核廃絶を訴えたことでノーベル平和賞の受賞につながり、世界は勢力均衡型の対立や軍事による覇権安定から、国際協調主義による平和構築に向かっている。
 
 加えて、日本が地球環境問題の先駆的役割を表明し、地球規模の経済的発展の原動力としての東アジア共同体の構築に向けた動きなど、歴史上経験したことがない巨大な上昇気流が起こっている。
 
 この歴史上最も恵まれた地政学的変化の中で、どのようにしてこれらの恩恵を享受しながら今を生き、そして将来の輝かしいビジョンをデザインするのか考察してみたい。
 
 歴史を学ぶと、我々の先祖が命がけでその時代をより良くするために努力し、未来を切り開くために貢献してきたかが理解できる。明らかに歴史の結晶と成果の上に立つ現在は、理想世界を実現できる歴史上まれなる好機に直面しているのである。このような恵まれた環境に生かされているのであるなら、日々の些細なことで動揺することなく、日本・地球のために貢献するという大きな理想を掲げることの大切さを再認識すべきだと思われる。国を愛する国益のみならず地球全体を愛する地球益や人類愛という平和を追求することが宇宙の目的に適った神の子としての我々一人ひとりの役割だと考えられる。
 
地球益としての地球環境問題
 宇宙空間にひと際青く美しく輝く地球のために微力ながらも何らかの貢献をする。このことこそ人類が理想としてきた本質である。しかしながら、現実的にそれぞれの国益や排他的な自国や自己中心的な行動により人類の理想に向けた地球益のための行動が奔流になることがなかった。経済発展のためには、資源や労働の搾取も必要と考えられ、それらの行き着く果ては、環境問題や貧富の格差や人権問題であった。
 
 例えば、中国においては、余りにも急速な経済・工業発展により、生活できない程に空気や水の汚染が進んでいる。これらの環境汚染は日本などアジア諸国へも悪影響を与えている。生態や環境と経済的発展の両立なくして中国の発展はあり得ないとの観点から、中国はグリーン(環境)の先進国へと舵とりが変化しようとしている。
 
 
 現実的に地球環境問題においては、世界は一蓮托生であり、国際協調主義や地球益のための具体的な行動が希求されているのである。そこに人類史上、最も恵まれた状況にある若者たちが将来のビジョンをデザインする可能性が秘められているのである。
 
 それらを実現するためには、地球を舞台に行動する必要がある。具体的には、国連や国際NGO,多国籍企業へのキャリアへの道がある。日本の総合的な環境技術は、世界一である。世界が求めているのは、日本の環境技術を現地の経済・社会発展のための応用と適応である。
 
 理想世界の読者が地球益のための主役となる今後50年の動きを展望すると、最も的確なビジョンを、三つに集約できる。第一は、世界は国際協調主義と地球益の大切さを認識、第二は、アジア・太平洋が世界の発展の原動力の源になる、第三は、日本の環境技術が世界をリードする。
 
 これら3つを包括するビジョンをデザインし、国連機関、多国籍企業、国際NGOなどに勤務する道を模索することにより、きっと想像を超える素晴らしい仕事が現実のものとなると考えられる。時は今、壮大な理想を掲げ思う存分努力するチャンスである。
9月 10
 政権交代は、自民党への批判のみならず、変化という世界の趨勢に則った当然の帰結である。日本という国家は、自然に恵まれた東洋の果ての島国であり、日本列島も島で構成されている。江戸時代の実例の如く、海外の依存度が低くとも繁栄できる国柄であり、地方分権に適している。しかし、戦後の日本は、外圧、特に米国の意向に従い、外圧を賢明に利用することで日本の平和と繁栄が形成されてきたと考えられる。
 
 敗戦国日本が、資本主義陣営の機軸として輸出加工型の貿易立国として発展を成し遂げたのは、優秀な官僚が明確なグランドデザインを構想し、実践したからである。そのグランドデザインは、前述したように官僚が米国の外圧を賢明にプラスに作用させたものであったと考えられる。
 
 冷戦後、時代が変化したにもかかわらず政治・官僚・財界で構成される鉄のトライアングルは、自民党・官僚主導・輸出加工を国是とし、変化に対応できぬ保身の術を貫いてきた。この失われた十数年の失策は、国家戦略の欠如に起因し、日本の官僚は優秀であるとの神話崩壊を導くものである。鳩山政権の船出にあたり、日本のグランドデザインを考察する必要がある。
 
日本社会のグランドデザイン
 先進国の大多数の国は、二大政党制による政権交代が頻繁に起こっている。保守・革新・中道が、時の社会・経済状況により変遷している。この変化の分岐点は、福祉などが充実するが増税の大きな政府か、経済発展や成長に重心を置く減税の小さな政府のどちらかの国民の選択により生み出されてきた。
 
 増税による大きな政府は、国家責任で国民を豊かにし、減税による小さな政府は、自己責任で繁栄を実現させる。日米の民主党は、前者であり、米国の共和党や自民党は、後者であり、日本も米国同様、二大政党制が理想であるとの見方もある。
 
 しかし、世界の多くの国と日本の違いは、単一民族と少子高齢化であるので、日本においては、成人まで、そして老後は、国家責任で教育や福祉の充実を徹底させ、働き盛りの勤労者に対しては、競争社会・自己責任で経済発展を成し遂げる政策、換言すると、大きな政府と小さな政府のブレンドを国家戦略とすることが賢明である。老後は国が責任を持ってくれれば、競争社会の中で思う存分仕事に打ち込めるのである。失敗も成功も時の運である。自分の意思で人生が進めることのできない成人までは、国家責任で教育の充実を図り、壮年期は自己責任、そして老後は日本国民として国家が責任を全うする。これが、日本社会のグランのデザインである。
 
地球益のためのグランドデザイン
 日本は資源を輸入し、製品に付加価値をつけて輸出で外貨を稼いできた。世界の富の配分を鳥瞰すると、日本は搾取する国であり、このベクトルを変化させなければいけない。日本の技術力を通じ、地球のために貢献することができるのは、地球環境の分野である。鳩山政権が目指す温室ガス90年度比25%削減は、外圧でなく日本の意志で、世界のトップクラスの日本の環境技術を世界に伝播し、日本と地球を豊かにクリーンにする地球益の適ったグランドデザインである。日本の国旗こそ、ソーラーエナジーや地球環境のシンボルの重要性を示している。
 
シンクタンクこそ国家戦略
 官僚が作成した縦割り行政による国家予算の策定には、国民の国民による国民のための生活向上が欠如されてきた。政・官・財のトライアングルにおいて、国民の代表としての政治が強化され、優秀な官僚を公僕とし、グローバル社会の中で企業が日本の技術力を発揮できる社会を創造する。政官財のそれぞれのパワーを国家の総合戦略として発揮するためには、市民のみならず日本のすべてのパワーを結集させ日本のグランドデザインを作るシンクタンクの役割が期待される。
9月 02
 2009年夏の終わりは、政権交代でスタートした。明治維新から140年、ついに日本の政治に地殻変動が起こり、市民のための市民による政権が生まれたのである。日本国内のみならず、世界が世界の中の日本の政権交代に注目している。米国、アジア、ヨーロッパとの国際関係と二大政党制の将来像を考察してみたい。
 
 一年前の米国は、リーマンショックの渦中にあり、民主党のオバマ旋風が吹き荒れていた。当時のオバマ候補は、共和党が推進する市場原理主義、軍事増強、減税、小さな政府に反対し、民を中心とした中低所得者を優遇する大きな政府と海外への軍事関与を抑制する政策を訴えていた。このように米国の民主党と日本の民主党には共通する政策が多く、日本の政権交代がスムーズに行われた背景には、リベラルな米国の民主党政権の中立な立場が幸いしていると考えられる。
 
 日米同盟において、より対等な関係を模索する日本民主党は、オバマ政権が掲げる外交・軍事・開発(Diplomacy,Defense,Development)の3Dを日米の包括的・戦略的互恵として新たなる日米関係を構築する必要がある。換言すると、イラク戦争の反省並びに過度の金融グローバリズムの推進をためらう米国にとって、日本が米国と協調しながら外交・軍事・開発の分野の対米依存から対等な関係へシフトすることに反対する理由はないと考えられる。
 
 とりわけ、米国の共和党は、鳩山政権が懸念する極端なグローバリズム、市場経済主義を米国の国益に背くと警告している。日本が米国の野党である共和党の意向にも耳を傾ける必要もあるが、今こそ、日米の両民主党の協調による東アジア共同体やアジア共通通貨構築を実現させる好機であろう。
 
 中国・韓国をはじめとするアジア諸国は、民主党の靖国神社を含む歴史観を支持しており、ロシアにおいては、鳩山一郎首相の日ソ共同宣言との接点があり、ヨーロッパにおいては、民主党の全方位外交や多国間の国連外交を評価している。特にフランスにおいては、自由・平等・博愛の精神から鳩山首相の「友愛」に親近感を感じている。要するに、鳩山政権の外交の機軸をなすと考えられる「勢力の調和」やソフトパワーは、世界の国際秩序構築のベクトルに適っている。
 
 日本の特徴は振り子が極端から極端に振れることである。従って、政治においてもこの4年間は小泉政権が推進した小さな政府から民主党の大きな政府へと大きく振れた。米国の民主党と共和党の二大政党制が示すように、必ず大きな政府による増税と小さな政府による減税が交互に発生する。自民党は米国の共和党と類似した中高所得者を優遇する政策並びに、企業や株式市場への刺激策による経済成長戦略を明確に示すべきである。
 
 80年代、米国が日本式経営に憧れたとき、「セオリーZ」による米国式経営と日本式経営の調和が研究・実践された。これを今の政治に生かすためには、日本は米国の共和党と民主党の優れた分野を研究し、それを日本の政治に導入する必要がある。スリムで流動的な官僚システム、教育・福祉の充実と弱者救済、経済刺激策による経済成長、地方分権などを実現するために、民主党政権は、自民党政権の負の遺産である政・官・財の癒着による膿やヘドロを徹底的に退治した後、4年後にはにヨーロッパ並みの高い消費税を導入し、低所得者層も消費税を通じた税金を払う代わりに手厚い福祉をも受けられる政策が実現されるときが到来しよう。
8月 20
 政権交代、略して「セイコウ」、英語で表現すれば「サクセス」か。とにかくかつてないほど、政治への関心が高まっている。これは実に健全な出来事である。日本の新聞や雑誌のコラムでは、アメリカの新聞等に比べストレートに意見を述べることは少ないようだが、今の日本の政治への不満を鑑みるとどうしても意見を発したくなるものである。世界観を持って世界の中の日本の政治の動向を大観してみたい。
 
 国家の総予算は正確にはいくらであるが知らないが、200兆円以上の莫大な予算の総組み換えを行うとの、何とも言えぬダイナミックな指針が民主党のマニフェストに示されている。実現されるには、多くのハードルに直面するだろが、政権が交代するということは、これぐらい何々省の縄張りを超えた前代未聞の公約の方が新鮮で興味深い。
 
 日本の常識は世界の非常識であると感じたのは、ドイツの高速道路(アウトバーン)を走っている時であった。ここでは、無料でかつスピード制限もない、まさにフリーウェーであった。一方、日本では天下の公道を走ったり橋を渡るのになぜ、高額のお金がかかるのか。10年ほど前にこの至極当然の疑問を日本で投げかけた時、高速道路には料金がかかるとか、道路の拡張や整備にはお金がかかるとの先入観に偏った返答がきたことが思い出される。
 
 世界の常識で考察すると、税金で建設された公共財は、市民生活を豊かにするためにあるのだ。にも拘らず、時間給が千円に満たないのに、高速道路を一時間走行すれば、それ以上の料金がかかるのは、全くおかしい。瀬戸内海に架かる橋を往復するのに半日分のパートタイムのお金がかかるのは何か狂っている。
 
 これらの市民生活を無視した現実は、省の利益・官僚の天下りや族議員の思惑が交錯して日本特有の政治風土により生み出されたものである。平たく表現すれば、政・官・財の鉄のトライアングルにおける、民意を反映した政治が弱体化したからこのような良からぬ慣習が常習化されたのであると思われる。
 
 来る衆議院選挙で期待されるのは、官僚や企業を中心においた市場経済至上主義から脱却し、民意を国政に反映し、「国民の幸せ、生存、繁栄」を実現するために真の政治を行う政治家を有権者一人ひとりの選択で選ぶことであろう。
 
 日本は米国に追随する条件反射的機能を備えているのであろうか。もし、そうであるとすると、自民党と民主党の一騎打ちにおいては、民主党が優位にあるように考察する。何故なら昨年11月の米国の大統領選において、民主党のオバマ大統領が圧倒的勝利を収め、共和党が敗退したからである。日本の自民党が共和党に近いとは言えないが、どちらかといえば、日米の民主党は大きな政府ということで類似しており米国の共和党と自民党は、過去の事例からも波長が合うようである。
 
 仮に米国の共和党政権が継続していたら、今回の選挙の空気も少しは保守的なものとなっていたであろう。世界を展望すれば、大多数の国において、政権交代が行われている。しかし、頻繁に行われる政権交代は、例えば資本主義から社会主義に変わり財産が没収されるというものではない。日本においても自民党と民主党のイデオロギー的温度差を実感することはない。
 
 選挙では外交・安全保障は票にならないので、どうしても経済・教育・福祉に焦点が合わされる。それは現段階では仕方がないことかもしれないが、日本から外交・安全保障に精通し、先進国・途上国を問わず、世界のリーダーと正々堂々と交渉し、平和と繁栄を構築する代議士が生み出されることにより、変化の日本が世界に示され、ひいてはそれが国民の繁栄に直結するように思われてならない。
8月 06
 決して一つのコラムがきっかけとなり世の中が動くとは思わないが、時と場合によっては、想像以上の乗数効果が生み出されることがある。先日、ニューヨークタイムズに投稿された三宅一生氏の、核兵器廃絶に関するコラムは、最も説得力のある人物により、絶妙のタイミングで率直な意見が発せられたという意味で世界を動かすインパクトがあった。広島での被爆体験と、母を亡くされた三宅一生氏が、オバマ大統領の広島訪問を訴えたのだから、インターネット時代における世界の世論は黙っていない。
 
 オバマ大統領の核廃絶に向けた道義的責任を唱えたプラハ演説がきっかけとなりG8では、核軍縮と廃絶に向けた戦略が練られた。その伏線として、オバマ大統領の広島訪問が浮上している。
 
 恐らく、将来実現されるであろうワシントンが探る劇的な広島での米国大統領の核廃絶演説は、核兵器廃絶のみならず新たなる調和的・協調的な安全保障への歴史的パラダイムのシフトが生み出される可能性がある。その本質的理由として、イデオロギーの対立の終焉、9・11に端を発したブッシュ大統領のテロとの戦争の疲弊、そして世界金融危機から回復基調にある今、安全保障の分野における世界のコンセンサスを得られる絶好のチャンスであるからである。
 
 今、なぜ広島なのか?もっと率直な主張を日本から発信すべきでないだろうか。数年前、ワシントン滞在中に出席したワシントンのシンクタンク主催の核兵器に関するセミナーでは、冷戦中5万発の核兵器が保有されたが、どうして奇跡的に一発も使用されることがなかったか。という単純な命題が発せられた。その答えを導くために、煙に巻かれてしまうような複雑な要因を排除した場合、単純明快に一つ残るのは、広島・長崎の悲惨な経験が最大限の抑止的役割を果たしてきたという事実である。という主張が根底にあった。
 
 日本では戦争放棄とか集団的自衛権とか憲法改正とか、戦後長らく明確な答えが導きだされない議論が延々と続いてきたと記憶するが、今、もっと現実的であり、本質的であり、道義的に世界平和に関するメッセージが日本から発せられても良いのではないだろうか。それは、安全保障の聖地でもある広島において、日本国民の意思で世界を平和のために動かす明確な意思・ビジョンを発信することであろう。
 
 日本を動かすためには、外圧が有効であると言われてきた。三宅一生氏のニューヨークタイムズ紙へのコラムは、日本のメディアにも影響力を及ぼした。しかし、核兵器の問題は、世界の問題ゆえに日本国内で議論されるよりもっと純粋に日本発で世界を動かすという究極的な人類愛に根ざした問題である。

 
 数年目、ワシントンポスト上で、北朝鮮問題に関し、日本の主張が掲載された。あえて具体的内容は伏せておくが、それは広告用の紙面に述べられた記事であった。それを目にしたとき、偽りなき純粋な主張は、正々堂々と紙面をお金で買うのでなく、オピニオンコラムとして掲載されることに意義があると感じた。
 
 キッシンジャー、クリントン、カーター、ゴルバチョフなどがニューヨークタイムズの紙面でタイムリーなコラムを賑わせている。一貫して感じるのは、彼らがコラムを通じて伝達する主張には世の中を動かすとする純粋な意思が存在しているということである。真実なら複雑に語る必要はない。国際情勢の変化とその潮流を読めば、確実に広島発、世界を大きくシフトさせる安全保障・外交の新たなるビジョンが発せられように感じてならない。衆議院選挙の狭間においては、あえて世界の安全保障に目を向けてみたく思う。(世相9月号掲載)