11月 15

電車に乗ってまわりを見回して見ると常に半数以上の人が携帯とにらめっこをしている。人々が一日にメディア(マスメディア、ソーシャルメディア)に接する時間は平均6時間と言われている。24時間の内、8時間は睡眠などの生理的に必要な時間、生きるために働く時間を8時間とすると、残り8時間。その内6時間をメディアに接している時間とすると、メディアがいかに重要であると同時にメディアにより洗脳されているかが想像できる。

メディアを介し様々な情報が洪水のように溢れている。何かインパクトのあるニュースや現象が起こればどのメディアも集中的にその報道をクローズアップさせる。それらの報道は新聞社やテレビ局の保守やリベラルといったイデオロギーの差もあるが概ね同根である。

世の中の根源をなす情報は、記者クラブを通じ発表された情報が他社との競争の中で少しでも早く記者がまとめ発信されたものが受け手である我々に伝達されるのである。考えてみれば、官僚が数百ページのペーパーを作成し、記者クラブにおいてはその要約である数ページのペーパーをもとに記者がまとめるのである。全て編集され、商業というスポンサーが影響している情報が世の中に伝わるのである。

日本人の記者により編集された情報が日本人に伝達されるのである。日本国内の問題を別にして、北方領土、竹島、尖閣諸島の領土問題についての情報を受け手である我々が読み解くにあたり現状のメディアのあり方ではかなり洗脳されて当然ではないだろうか。

そこでメディア情報をクリティカルに分析する能力であるメディア・リテラシーを向上させることが重要となる。社会を変えることは難しいが一人一人がメディア・リテラシーを理解することで自ずと社会も変化するのではないだろうか。何せ一日の大半をメディアに接しているのだから、「メディアとは何か」「メディア・リテラシー」について考えることは本当に大切である。

メディアは3つしか伝えない。それは「真実と噂と嘘」である。また、マクルーハンの「メディアはメッセージである」が意味深い。オーディエンスである我々が我々の頭で考えることが如何に重要であるかということを伝えているのである。

メディアをThinkする、考えクリティカルに分析する習慣をつけるために先人が生み出した哲学的思考が役立つ。特にアリストテレス、ベーコン、トゥルーズ、フリードマンの思考法には価値がある。

原因について考えるアリストテレスの四原因説(質量因、形相因、作用因、目的因)。例えば、尖閣諸島の問題を考えるにあたり、質量因では、中国の質と量、13億の人口を有し世界第二の経済大国で経済成長が8-10%で、軍事力を分析し、形相因では、漢民族の本質や行動様式を分析し、作用因では、尖閣諸島問題のルーツはどこにあり何がそれを動かしていのかを分析し、目的因では、尖閣問題を通じ中国が最終目的とするところを分析する。

ベーコンの考察は4つの偏見(主観、独断、伝聞、権威)を排除することにある。尖閣問題に立脚すると日中の一方から見た4つの偏見を排除することにより全く異なった視点で領土問題が展望できると考えられる。

トゥルーズのノマド(遊牧民)の思考である多角的・重層的に「世界の中の尖閣諸島」として展望すれば、日中が誰も住んでいない諸島を通じ争うことのメリットとデメリットがどこにあり漁夫の利としてどこかの国が利益を得るという異なった考えが見えてくる。

ニューヨークタイムズの外交コラムニストである、フリードマンの4つの理由(発表された理由、現実的理由、本質的理由、道義的理由)で尖閣問題を解読。ワシントンの保守シンクタンクであるヘリテージ財団で石原氏が問題を発表し、現実的に国有化問題や資源問題がこじれ中国で反日デモが激化し日本経済に悪影響が出て、本質的には日中の歴史問題から中国の覇権主義へと国際情勢の変化への影響が複雑化し、道義的には、歴史問題で処理されていない人道的問題等が出てくると考えられる。

このように哲学的思考で尖閣諸島などの領土問題を考察するとメディア・リテラシーに磨きがかかり、現在の日本のナイーブさが見えてきて、領土問題や歴史問題で対立するこの虚しさに気づき、建設的な戦略思考を構築する必要性が芽生えると考えられる。メディアを問い直し、自分の頭で考えメディアを通じ社会を変える変革期にあるのではないだろうか。