10月 17

日中間には戦略的互恵が存在し,両国のwin-winが導かれるための外交手腕が期待されている。
しかし、戦略的な対立が日中関係の溝を深化させているのが現実である。
中国船が日本の領域を侵害したので、日本は、国内法に則りその船の船員を拘束した。
当然のことながら、原因と結果があるように、中国船員を拘束することから発生するであろう
問題を予測できたはずである。

ワシントンのシンクタンクで習得したことは、平和のためのシナリオを描くことと、
最悪、最善、落とし所など、多角的なシミュレーションを想定することであった。
今回の尖閣諸島問題は、中国が挑発したものの日本が拘束という口火をきった。
碁でいうと日本が先手を切ったのである。
民主党のリーダー選出に伴う、外交の空白があったかもしれないが、
少なくとも安全保障に関わる分野においては、尖閣諸島問題に対応する国家戦略の
シュミレーションが描かれていることを信じたい。
日清戦争以来の領土問題のとげが生み出した日中関係の本質的な解決策はあるのであろうか。

中国漁船を拘束、軍事管理区域に侵入したとして日本人4人が拘束、
ハイテク製品に不可欠なレアアースの対日輸出禁止、中国人船長を処分保留のまま釈放、
拘束された日本人の3人が釈放。
この様な駆け引きが続くなか、日中を取り巻く国際環境の変化は、
日米安全保障条約と沖縄の基地問題の重要性の認識、対日領土問題を抱える中露の接近、
竹島問題を抱える韓国が領土問題で中国に接近、尖閣諸島の領土問題の歴史認識で台湾と中国が接近、
東南アジア諸国は、南沙諸島問題で中国の強硬な姿勢が予測できることから日本に接近。

日本国内に於いては、中国脅威論が高まると同時に、国防体制を根本的に考える機会とし、
日本の安全保障を一層米国に依存する必要性があるとの考えと同時に、
独自の国防体制を強化させるという考えが交錯している。
政党を超え、安全保障問題で保守とリベラルの対立軸が明確になりつつあり、政治の分裂が深刻化している。
一方、中国に於いては、日本との領土問題をクローズアップする程に、
中国国内の結束が高まるという日本とは逆の方向に向かっている。

世界2位と3位の経済大国が領有権の問題で対立することで、漁夫の利を得るのは、
東アジア市場のシェアを伸ばそうとする欧米ではないだろうか。
加えて、日中間の緊張が高まることで米国の基幹産業である軍需産業が活性化されるのではないだろうか。

21世紀はアジア太平洋の時代であり、とりわけ世界は中国を注視している。
中国のパワーが上昇し、日本のパワーが下降している。
恐らく近代で中国が最も優位な位置にあるのが今日の日中関係ではないだろうか。
従って、欧米の対アジア戦略を解読し、アジアの中の日本、世界の中の日本を客観的に展望し、
日中のwin-winを創造しなければいけない。

短期的には、日米の絆をより強固にし、中長期的には中国の拡張政策を抑止する
日本独自の世界が賞賛する安全保障を描く必要がある。
その骨格は、国家と地球を同時に守るという新しい安全保障である。
日本列島周辺に地震ベルト地帯が集中している。
将来、必ず大地震が発生する。自然災害が発生した時に、早急に出動できる救助隊(リスキュー隊)があれば、
大地震の被害を最小限に食い止めることが可能となる。

例えば沖縄にその救助隊を置く。それは、世界で自然災害が発生した時に、
出動できる救助隊とし、その救助隊は多国籍で構成する。
具体的には、2025年を目処に米軍の沖縄撤退を目指すと同時に、
世界のコンセンサスを得て、国連の機関として地球リスキュー隊を創設する。
その部隊は、発生するであろう日本の大地震を救済すると同時に、
中国や世界で発生する自然災害にも貢献する。

核兵器の廃絶が提唱され、従来の国家を軍事力で守るという考え方にも変化が観られる。
国家間の領土問題解決には、どの国も共通する地球規模の自然災害に地球益としての
戦略的互恵を築くことが求められているのではないだろうか。
とどのつまりは、国家を守るためには、軍事力が必要であるが、その軍事力が
自国を守ると同時に世界を守るというパラダイムのシフトが肝要なのである。
これが欧米の安全保障ではなく、日本的な世界で通用する安全保障になることを期待したい。