7 月 05

世界と比較して日本の消費税は低い。少子高齢化社会に対応した「大きな政府」に伴う消費税増税は否定すべきでない。しかし、民主党の公約違反も然りであるが、増税前にいくつかの税収を増やす戦略を語らずして何が民主国家であろうか。

三人の経済学者の視点で問答してみたい。
まずは、自由貿易と比較優位を唱えた古典経済学派のデビット・リカード。「リカード中立命題」で示されているように福祉政策などを含む財政政策は将来の更なる増税を引き起こすことが予測されるので国民は消費を控えるので経済成長が妨げられる。不景気や将来への不安が蔓延する状況の中で、一般市民の生活に直結する消費税を上げることは何のメリットもないと考えられる。

第二は、レーガン政権の双子の赤字の解消に貢献したマネタリストでノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン。増税や財政主導で経済に渇を入れるのでなく、貨幣の供給量を一定のルールに則って増加させることで経済成長が達成されるという視点。

円が実力以上に評価されているのは、単純に円のマネーサプライと比較してドルとユーロの市場への供給量が2倍ほど多いことに起因している。とすると、円のマネーサプライをドルとユーロの供給量に一致させ一定のルールに従って増加させることにより極端な円高の是正が可能となる。マネーサプライを増加させることで相対的に円の価値が落ちる。このような政策を実施できるのも円高という状況にあるからであり、そのメリットを活用できる絶好のタイミングである。

マネーサプライを増加させてもそれが消費や投資に回らなければGDPは増えない。GDPは、消費、投資、政府支出、輸出と輸入の差である。従って、経済を活性化させるためには、マネーサプライの増加分が貯蓄に吸収されるのでなく市場に出回らなければならない。

マネーサプライの増加分を市場に供給する方法はあるのか。3・11により人命やインフラの被害のみならず、たんす預金として貯蓄されていた莫大な円が海に消えた。仮にその額が数兆円と仮定すれば、その同額を印刷し、復興支援として各家庭に提供すれば良いのではないだろうか。そして、そのために増刷されたお金は、必然的に消費に回すように規制を加える。3・11で消滅した現金は、本来市場に出回るお金であるので、それを補充するために増刷されたお金は復興支援のための正義であると考える。

第三は、トービン税の実現にある。 1981年にノーベル経済学賞を受賞したジェームス・トービンは、為替投機の抑制のために外国為替取引に対して定率の税を課すトービン税を提案している。毎日36兆円売買される日本円の外国為替に1%の税金をかけるだけで、日本政府は年間132兆円の税収を得ることができるのである。

現在の国税と地方税を足しても100兆円である。消費税を1%上げても2兆円である。経済の不安定要因の本質は、金融のギャンブルにある。投機を抑制することにより、世界経済は実体経済で動く。市場経済には限界がある。故に、余りにも無謀な投機による市場経済を抑制するトービン税の導入により、日本経済の復興と世界経済の秩序が構築されるのである。日本は余りにも急速に資金を蒸発させたが、トービン税の導入により、それを取り戻すことができるのである。

少子高齢化の問題を解決するためには消費税は必要であろう。しかし、リカード、フリードマン、トービンが提唱している政策の一部をタイミング良く戦略的に実施することが現在の日本の閉塞感を打ち破り楽観的な市場を形成する意味でも期待されているのではないだろうか。これらを試行錯誤してから消費税増税を実施したほうが福祉に必要な財源が確保されると考えられる。