9 月 05

本日の世界のトップニュースは、シリアの化学兵器使用への軍事制裁と福島第一原発の放射能汚染問題である。両者とも何らかの行動を起こさなければ問題は深刻化する。しかし、解決に向けた明確な戦略がない。何故、化学兵器や原発問題といった一国では到底解決不可能な問題に対して以前と比べ国際協調路線が生まれにくいのであろうか。

シリア問題に対し、オバマ政権は化学兵器でシリア国民を殺戮したアサド政権への軍事介入は道義的に正当だと考えている。しかし、オバマ政権はイギリスが軍事介入を回避したことから、大統領の権限でシリアへの軍事介入が可能にもかかわらず、議会の承認を経るという静観姿勢を今のところ取っている。

現実的に考察すると圧倒的な軍事力を保有するアメリカは、イラク戦争の反面教師として海上からの巡行ミサイルによる攻撃に留め地上軍を投入しなければ軍事介入によるイラクのような泥沼に陥ることは避けられる。軍事力を誇示したいアメリカにとってシリアが超えてはいけない化学兵器使用という一線を超えたことに対する世界の警察官の役割を正当化することが可能だろう。恐らく、アメリカにとってシリア政府か反政府側のどちらかが化学兵器を使用したという証拠よりも本質的理由としてシリアを攻撃するメリットして中東全体の戦略的思考が存在していると読む。

10年前にブッシュ政権がバクダッドに先制攻撃した時、ワシントンのシンクタンクにて、大量破壊兵器を保有しているかどうか曖昧なフセイン政権に対し9・11の報復を実行したアメリカの野蛮性のインパクトを体感した。

当時のイラク戦争の情勢と今回のシリア情勢は異なるが、現状では一般的にアメリカや国際社会の空気が紛争に干渉しない方向に向かっている。また、福島の放射能汚染の問題も日本一国では解決できないのに日本政府も国際社会も抜本的なアクションを起こしているとは考えられない。では、何故、世界は軍事的にも技術的にも危機的な事態に対処する術を示さないのであろうか。

その問題の本質には、インターネットやSNS等の情報技術の革新や多国籍企業が起因していると考えられる。外交・安全保障は国家の意思で行われるものである。しかし、インターネットを通じ国境を超えて情報が交錯する現実においては国家で行動する意味が希薄になってきていると考えられる。

18世紀終わりの蒸気機関や鉄道の産業革命を経て、19世紀後半から昨今までの自動車、飛行機、電化製品等の大量生産による産業革命が進展した。国家が経済成長を維持するために国民国家の結束を固め民主主義を推進し海外に干渉しながら輸出主導型の政策が必要であった。

輸出に限界があり次第に国際水平分業が進展することにより国内の空洞化や雇用創出の問題が顕著になった。国家が多国籍企業から税金を取ろうと考えても多国籍企業は法人税率の低いアイルランド、ルクセンブルク、ケイマン諸島等の「税金の避難所」へ逃避することが可能である。

多国籍企業は一国のスケールで行動する必要性がなく、国民はインターネットを通じて世界のあらゆるネットワークや階層とつながっている。明らかに情報技術のイノベーションは国家のフレームワークの概念を根底から揺さぶっている。

そもそもシリア問題も「アラブの春」の延長でありソーシャルメディアが起因している。イノベーションがボーダレスを創造し国家の枠で行動する意義を減少させているのである。

要するに化学兵器と放射能汚染の問題は、アメリカの単独軍事介入や日本独自による放射能汚染の解決という国家の単独主義では情勢は悪化するのみである。国家という枠を超越した「地球益」のための行動が情報技術のイノベーションと化学変化した時に国際協調主義が機能するのではないだろうか。換言すると、個人が国籍や国益を超越してイノベーションを縦横無尽に活用し、世界にネットワークを構築し、双方向に発信し「協調の理想」を構築する行為が時間が必要であっても結局は直面する困難な問題を解く新たな道を創造すると確信している。