ロンドンオリンピックは、ポールマッカートニー氏のヘイ・ジュードでスタートした。高校時代に柔道部に属した者にとってこの曲は柔道を連想させる。オリンピックの中継では本場の日本の柔道が外国の「ジュードウ」に圧倒されている日本の柔道家の姿が写し出されている。
柔道で勝ってもジュードウでは負けてしまう日本人の肉体的な特徴を観察すると、金メダルが減ってもそれは日本の柔道にとって大きな問題でないと考える。なぜなら柔道がグローバルに展開するほど日本の柔道家が国際試合で勝利する確率は減るからであり、むしろ柔道の国際貢献にとって避けて通れない道だろう。
ロシアの柔道家が100キロ級で優勝し時、プーチン大統領は会場で観戦していた。柔道家であるプーチン大統領の喜びは最高潮に達したと想像する。実際、プーチン大統領に会われた人からこんな話を聞いた。少年時代のプーチン氏は、不良少年の仲間入りをしていたそうだ。そんなプーチン少年を救ったのが柔道だそうだ。現在も、プーチン大統領は自宅にある嘉納治五郎先生の像を毎朝拝んでおられるそうだ。それ程までにプーチン大統領は柔道への思い入れが強い。
12年前にプーチン大統領が来日された時、柔道のメッカである講道館を訪問され、柔道着を身につけられ柔道家プーチンを演出されたそうだ。黒帯であるプーチン大統領は、講道館から贈られた六段の証書と紅白の帯をその場で辞退され、もっと練習に励みこの帯に相応しくなると述べられたそうだ。
ロシアという大国のリーダーが柔道家であり、とりわけ嘉納治五郎先生をはじめとする日本の柔道を尊敬されているというのは素晴らしいことである。プーチン大統領の黒帯外交という表現もされているように、柔道、或いはジュードウが外交の舞台でも活用されることがあってもいいのではなかろうか。
北方領土問題に対し、プーチン大統領は、柔道用語である「引き分け」を使われたそうだ。ヨーロッパを好むメドベージェフ首相と違いプーチン大統領はユーラシアやアジアに力点をおいた外交を進展させる可能性もある。
領土問題は複雑である。いくら戦略的な外交を駆使しても結果は期待できない。しかし、不可能を可能にする要素があるとすると、それは一国のリーダーの思い入れや信念ではないだろうか。プーチン大統領の思い入れは柔道である。とすると、日露関係における最大の切り札は、柔道外交である。対ロシア外交における柔道こそ日本の最高のソフトパワーだろう。
ロンドンオリンピックにおいて勝敗における日本柔道のパワーは劣化した。しかし、ロシア、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス、モンゴル、中央アジア諸国、アルゼンチン、韓国、北朝鮮、中国など世界中に柔道及びジュードウの人気が拡張しているのは日本柔道にとっても日本にとっても好機だと考えられる。
プーチン大統領はロス五輪のゴールドメダリストである柔道家山下泰裕氏を尊敬されているという。柔道からグローバルなジュードウに変化しても柔道の精神や信念を継承して行くのはプーチン大統領のような少年期に柔道に接した人物であり、今も嘉納治五郎先生の像を拝む人物であろう。将来、山下氏がロシア大使になられプーチン大統領と北方領土問題を交渉されれば、少なくとも「引き分け」以上の成果が生まれるのではないだろうか。