2月 09

世界のいくつかの組織で勤務し、日本の大学で教えはじめ4年の歳月が流れた。卒業まで学生が過ごす4年間を振り返ると、確実に就活という厄介な問題に学生がチャレンジする真剣さが年を追うごとに増している。3回生のはじめから就活に取りかかる学生は、次第に講義への出席率が落ちる。そうなる事が分かっているので1,2回生は真面目に講義に出席する。一昔前と比較すると今の学生、いや正確には1,2回生は真面目である。

大学で専門分野をしっかり勉強できるのは、教養を身につけた後の3回生からである。その時が就活に重なることが大学のレベル低下につながっている。さて、そこで学生と企業の両者にプラスとなる就活の理想を考察してみたい。

不況の影響で学生は親に頼ることができず授業料をアルバイトで稼ぐ必要が増している。90分の講義に出るのに学生は約4000円出資している。授業料と講義数を割ればだいだいこのような金額になる。一方、アルバイトの時間給は伸びておらず平均1000円とすると一つの講義に出るのに4時間働かなければいけない。
このような話を学生の前ですると必ず学生の態度が変わる。意欲のある学生はアルバイトの4時間以上の成果を勉学に求めてくる。教員もそれに応えるべく毎回の講義で学生が満足する教養や専門知識を提供しなければいけない。

アメリカの大学で教えている時、3時間の連続講義を行うのに数冊の本を精読し、実社会で習得したユニバーサルな法則なりを示し、学生との質疑応答や意見交換に講義の半分を費やしたものである。アメリカの授業料は日本より高いので学生が満足する講義を提供するため教える側も真剣勝負で臨む必要があった。

日本の学生もアメリカの学生のように費用対効果の成果をあげるために学業に真摯に臨まなければいけない。そのように考えると「就活のために講義を休みます」という学生を減らすような対策が不可欠である。企業は優秀な学生を採用しなければ昨今のグローバリゼーションの波に押し流されてしまう。大学は優秀な学生を育成する義務があり、また学生も厳しい経済状況や国際情勢の変化に対応するために専門知識を大学で習得しなければいけない。学生と企業の共通の利益の合致点は、大学の本来の目的である教養と専門知識を学生が習得することであり、それが会社や社会で活かされることである。今の世の中、企業人が持っていないような柔軟なグローバル社会で通用する発想を持ってこそ就職戦線に勝つことができるというぐらいの高尚な考えを学生が持つべきである。

学生が大学に通うのは、年に7、8ヶ月である。5ヶ月近くが自由な時間である。この自由な時間を就活に役立てる方法、即ちキャリアパスの糧とすることが大切である。大学の休み中に就活を行うという不文律を共有すべきである。要するに企業は将来採用の可能性が高い優秀な学生を大学の休み中にインターンとして働く機会を提供し、学生は休暇中に学費等を賄うことが可能となれば企業にとっても学生にとっても両者プラスとなるのではないだろうか。

フランス発のAIESECという大学生の企業インターンを提供する組織がある。日本の大学でもかなり浸透している大学インターンシップである。海外で大学院の学生の時、AIESECを通じアメリカで夏の企業研修を受ける機会を持った。かなり充実したプログラムで将来へのキャリアを描くきっかけになった。このように日本でももっとインターンシップの充実に務める必要があろう。

円高、空洞化の影響で海外で即戦力となる学生を企業側は求めている。例えば、青年海外協力隊の制度を通じ海外に赴任した人材をもっと積極的に企業は採用すべきであろう。開発援助の専門家というと少し重い感じがする。青年海外協力隊も志願者が減少傾向にある中、この制度を通じ本格的なインターンシップとして再考するのも一案であろう。学生が卒業すると同時に青年海外協力隊の制度を通じ1、2年の途上国経験を積み、その後、現地に進出している日本企業に就職することができるというキャリアパスを充実することが大切である。企業側からみれば税金で優秀な人材を教育できるという視点でグローバルな教育戦略として有効であると考えられる。

東大が秋入学に移ろうとしている。世界の奔流に同化することで世界から優秀な学生が集まる。同時に就活も世界の常識に同化させることでグローバル社会で通用する優秀な学生が生まれ企業や大学にとっても日本国にとってもプラスとなろう。