5月 05

平成30年12月23日~24日(2日間)
京都大学 経済学部
セミナー開催 13:00-16:00
テーマ:東アジアのグランドデザイン 経済協力と協調的安全保障 京都大学に留学している韓国、中国、欧米の学生、約20人と世界の欧米アジアの3極経済構造の中で、21世紀の経済成長が最も期 待されているアジアにおいて、如何なる経済発展の潜在性があるか、また軍事による安全保障を代替する経済協力を主眼とした協調 的安全保障について英語で意見交換がなされた。

京都大学 経済学部 大学院講義
1・2016年は変化の年、不確実性の高い年であった。英国のEU離脱、米国の予測に反するトランプ新大統領の登場。
2・このような地政学的変化の中で東アジアの安定と平和のためのグランドデザイン、グランドデザインストラテジーを構築する必要がある。
3・近くて遠い国である韓国の大統領の罷免問題、想像を絶する大規模なデモが若者中心に広がっている。
4・中国の尖閣諸島や南沙諸島の領土問題、経済成長率の鈍化、一人っ子政策の悪影響。5・ロシアのプーチン大統領が来日したにもかかわらず北方領土の二島返還も実現されなかった。北方領土の大規模な経済開発・協力進展するもロシアのペースで進むようである。プーチン大統領の力・存在感の強さが中東問題、ウクライナ問題をロシアの意向で動くだろう。
6・北朝鮮においては金正日総書記の死後4年が経過。後継者の金正恩総書記は、核開発とミサイル開発に取り組み実験を成功させている。北東アジアの中で軍事的な覇権を進めている北朝鮮の存在感が、増している。
7・米国のトランプ次期大統領の外交方針は、二国間のプラグマティズムによる直接交渉である。北朝鮮問題については直接交渉で成果をあげるとことが可能でると述べている。トランプ政権の閣僚人事は、経済界の重陣、軍事的強硬派が中心である。国際協調主義から自国中心の一国主義に移ると考えられる。アメリカ発案のTPPはアメリカによって実現が阻止された。アングロサクソンが推進したグローバリゼーションがアングロサクソンによって反グローバリゼーションに潮目が変化しつつある。
8・安全保障には4つのパターンがある。それは、覇権安定型のハードパワー、勢力均衡型、集団的安全保障、経済協力や文化交流の重要性を唱える協調的安全保障。これら4パターンの組み合わせによって安全保障ooが形成される。
9・21世紀の白いキャンパスに夢とロマンの平和構想を東アジアに描く東アジアグランドデザイン構想について考察する。中国の豊富で優秀な労働力、アジアインフラ開発銀行を通じた資金と技術力の提供、韓国の資金力と技術力、極東ロシアの豊富な天然資源、モンゴルの希少で豊かな天然資源、北朝鮮の豊富で優秀な労働力、豊富な天然資源を相互補完的にコーディネートすることにより自然発生的な経済圏構想が成立する。
10・トランプ新大統領は、米国内における雇用創出を目的とする大規模なインフラ開発を政府資金のみならず民間資金も活用しながら推進する計画を立てている。財政政策の出動によるインフラ開発構想である。これと類似した財政政策によるインフラ開発を東アジアに実践する。目的はインフラ開発を通じた協調的安全保障である。
11・経済の発展段階の相違、イデオロギーの対立、南北朝戦の分断など朝鮮半島の38度線を境に軍事的緊張が高まっている。このような地政学的緊張の中で対立する国と国の間でいかにして共通の利益の合致点を見いだすのか。
12・冷戦構造が未だ残存する北東アジアにおいて、仮に大規模なインフラ開発を推進することによって、対立や紛争を超越した当事者国すべての国々がwin-winとなる経済圏構築が成り立つのではないだろうか。
13・もしこの地域で紛争や戦争が発生すれば、中国、ロシア、北朝鮮に対して韓国、日本、アメリカが対立する第三次世界大戦となる可能性もある。紛争が発生すれば悲惨な結果を導く。また復興支援にも莫大な資金が必要となる。
14・国連の事務局長であったブトロス・ガリ氏は1990年初頭に「平和への課題」を発表した。予防外交、平和維持、平和構築、平和建設も四つである。予防外交を紛争を未然に防ぐ活動。例えば優れた歯医者は虫歯にならないように治療する。悪い歯医者は虫歯を外科手術のように抜く、紛争が発生すれば平和維持や平和構築も仕事が中心となる。紛争の当事者との話し合いや協議を重ね平和を維持、構築するのである。
15・NASAの宇宙船から北東アジアの夜景を望めば北朝鮮は韓国に比べ暗い。電力不足や経済活動の発展段階の相違が明確にわかる。この地域に国境を超えた鉄道網、道路、天然ガスパイプライン、電力網、情報網を構築する。経済的交流が進むことにより信頼醸成が構築される。
16・中国主導のAIIBが動き出している。世界銀行は第二次世界大戦の産物として多国間協力を目的に構築された。戦後70年を経て欧米中人のインフラ開発機構である世界銀行を補完するアジア太平洋における機構が必要である。日米が主導権を握るアジア開発銀行がマニラにある。
17・中国主導型のAIIBと日本主導型のADBが統合されれば本格的な東アジアにおけるインフラ開発構想の基盤となる世界銀行に匹敵する金融機構が成立する。この多国間協力の機構を通じて不確実性の高い北東アジアの開発を推進する。
18・アメリカはAIIBに加盟していない。アメリカは新政権発足によってAIIB加盟の動きもある。米中の対立構造が米国のAIIB加盟に制限を加えているのだが、インフラ開発によって米国政府や米国企業にとって有利となるとプラグマティズム的に判断されると米国のAIIB加盟本格化する。
19・中国の覇権を警戒して日本がAIIBに加盟していないのだが、このままでは重要なプレーヤー日本が蚊帳の外の存在に落ちてしまう。
20・米国が駐留米軍の費用、思いやり予算の負担増しを訴えると考えられる。日米同盟によって維持されてきた勢力均衡の平和が分岐点にさしかかっている。