11月 07

2012年は、世界の主要国のトップが同時に交代する年である。
中国では、習近平国家副主席が最高主導者の地位を固め、ロシアでは、
プーチン首相が再度、大統領に就任し長期政権を確立する可能生が高いと考えられている。

米国の中間選挙の結果が示すように2年後の大統領選においては、
共和党が優位な状勢が予測できる。日本においても米国と同様に、
チェンジや政権交代のフレッシュな民主党のイメージが消えあせている。
米中日露のアジア・太平洋の4大国のリーダーに関しては、
冷戦時代の社会主義陣営である中露が安定し、日米が不安定な政情になると考察される。

オバマ旋風以来、日米の政治が妙に連動ているようである。
日米ともに民主党政権であり、経済状勢が悪化する中、国民は福祉国家という大きな政府を選択したが、
その期待を裏切るかの如く、日々の生活の礎が揺らぎはじめている。
それでいて、日本には米国の共和党のような小さな政府、減税、そして保守的な価値観を示す政党がない。
ということは、米国に否応なしに追随する日本においても2大政党が本格化する可能性も高まるのではないだろうか。

戦後の米国の民主党、共和党の政権交代を展望すると興味深い傾向が見えてくる。
戦後、大統領選が16回行われた。民主党が7回、共和党が9回勝利した。
その間、2期8年間の大統領の最長任期を全うしたのが民主党ではクリントン大統領だけであるのに対し、
共和党は、アイゼンハワー大統領、ニクソン大統領、レーガン大統領、ブッシュ大統領と長期政権を行ってきた。

日本においては、自民一党支配の反動から民主党が政権を担ったが
その継続性は不確実である。問題は、政権が揺らいでいる時に、
中露のように政治的に安定している国家が、尖閣諸島問題や北方領土問題を軍事力、
外交術を駆使して日本を翻弄させる戦略に出たときにどうのように対処するかである。

2012年は、国際情勢の分岐点である。ベルリンの壁崩壊、911同時多発テロ、
リーマンショックとイデオロギー、国際テロ、宗教対立、国際金融の分野でパラダイムが大きくシフトした。
これらの複雑な問題を解くキーとなってきたのが、何といっても多国間外交であった。
米国の覇権主義によるイラクへの先制攻撃が失敗したように、
予測可能な中国の覇権主義にも限界があるだろう。

世界の潮流を鑑みると、日本の課題は、多国間協力の現場で実績をあげることである。
今月は、京都でAPECの財相会議、横浜でAPECの首脳会議が開催される。
その多角間外交の舞台と並行し、米中露等の首脳会談も行われる。
今月は、日本にとって外交ラッシュであり、円高、領土問題 等の問題に取り組む好機である。
このような多国間外交の分野でヒットやホームランを放つことでこの20年程、
日本を覆っている閉塞感を払拭することも可能となろう。

多国間外交の舞台で重要なのは、日本の存在感を示すことであり、
グローバル社会における日本の地球規模の貢献を明確に示すことである。
本質的には、多国間外交の場において発生する首脳会談にて、
タイムリーな問題を両国の共通の利益の合致点を見出し信頼醸成を構築することである。
2012年に向け、中国やロシアは安定感のあるリーダーを生み出そうとしている。
従って、日本の首脳に必要なのは多国間外交や多国間協力を通じ、
喫緊の領土問題や円高等の国際経済を解決する見識と実行力であろう。