名古屋学院大学 2009年12月2日
多角的・重層的視点で世界の中の日本を展望
東アジア共同体構想
ワシントンのシンクタンクで習得した歴史の潮流の解読法と哲学的戦略思考
京都市生まれ。関西学院大学卒業後、日本企業から新入社員で戦時中のバグダッドに駐在。その後、ロータリー財団大学院奨学生として南アフリカに留学。外務省の国連の登竜門である、JPOを経て、国連工業開発機関(UNIDO)の正規職員。西アフリカのリベリアと本部ウィーンで勤務。ハワイの東西センター、ワシントンのブルッキングス研究所、ジョージワシントン大学の研究員を歴任。大学卒業後、30年かけ、日本企業、国際連合、ワシントンのシンクタンクで勤務しながらイラク、オーストラリア、南アフリカ、リベリア、オーストリア、米国のフィールドで吸収したことを語る。
独立性と現状分析に留まらない将来への具体的なビジョン構築
Independent research shaping the future , Independence , Quality,Impact.
Think感性で考え、Learn 理性で学び、Lead世の中に伝える
未来から現在を照らす 多角的視点クローズアップとロングショット
4つの理由で分析 現実的理由、本質的理由、道義的理由、発表された理由
歴史の潮流を解読する
1.文明の視点
トインビー 歴史の研究 700 年ごとに東西の文明の繁栄・衰退
4大文明 エジプト・メソポタニア 西へ移動、インダス・中華 一定の位置に留まり放射線状に拡大 21世紀はアジア・太平洋の時代
2.宗教の4つのパターン
一神教 (ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)、宗教が混沌としている(インド)
宗教を正式に認めない(中国)、多神教 同時に複数の宗教を崇拝 (日本)
3.景気循環
コンドラチョフの50年景気変動 戦争・イノベーション・通貨の供給量・資源の需給
グズネッツの波 (建築循環) 約20年サイクル
ジュグラーの波 (設備循環) 約10年サイクル
キチンの波 (在庫循環) 約40ヶ月サイクル
4.国際政治・国際社会像
主権国家体制 1648年 ウェストファリア条約
国際共同体 国境を越えた利益や価値を意識、国際機構
世界市民主義 (cosmopolitanism),国際社会における基本単位は個人、平和は世界の統一によって達成
5.国際関係
現実主義 (Realism)、自由主義(liberalism)、グローバリスム(Globalism)
6.安全保障
覇権安定型、勢力均衡型、集団安全保障、協調的安全保障
東アジア共同体構想
東アジアの歴史の潮流
セポイの乱(インド、1857)、南北戦争(1861-65年)の影響 明治維新(1968年)
日清戦争(1894年)、日露戦争(1904年)、日韓併合(1910年)、辛亥革命(1911年)
満州事変(1931年、リットン調査団、国際連盟脱退)、太平洋戦争(1941-45年)
朝鮮戦争(1950-53年)、冷戦終焉(1989年、天安門事件 6月)
孫文の大アジア主義 西洋の覇道と東洋の王道
中江兆民 三酔人経綸問答 豪傑君・洋行帰りの紳士、南海先生
岡倉天心 東洋の理想 アジアは一つ 分断と統治
和魂洋才・和魂漢才・和魂萬才
北東アジアグランドデザイン 空間開発計画
上海協力機構
朝鮮半島の問題 ソフトランディング、ハードランディング、現状維持、核を保有
ビジョンを描くための哲学的戦略思考
1. ドゥルーズ(20世紀、フランス)は、遊牧民(ノマド)的思考として一元的・固定的な考えに陥ることを批判し、多角的・重層的視点で思考することの重要性を説いている。クローズアップとロングショットの両方の視点で、世の中の現象を把握することが大切である。
2.弁証法で世相を展望
国連やワシントンのシンクタンクで学んだことは、建設的な議論を通じ、ベストのシナリオを創造することであった。ヘーゲル(18-19世紀、ドイツ)の弁証法は、正論・反論・双方の長所をミックスさせた排他的でない議論の重要性を説いている。
3.プラグマティズム(実用主義)
ジェームス(19-20世紀、アメリカ)は、物事の真理を実際の経験の結果により判断するがプラグマティズムの戦略的思考の重要性を説いている。マキャベリ(15-16世紀、イタリア)は、理想と現実を握手させるためには、柔軟性のある多種多様な行動が必要であると述べている。
4.予定調和説・性善説
ライプニッツ(17-18世紀、ドイツ)は、予定調和説に則り、最終的には世界は最善の道を歩むと説いている。ビジョンを描くにあたり、「宇宙の目的」に従った、協調・共生への哲学が根底になければいけない。
5.自然との共生
スピノサ(16-17世紀、オランダ)は、自然界の万物に神を見出すという東洋的な見方を示している。この汎神論の見方は、現代社会における宗教・文明の対立構造を調和させるパワーを秘めている。老子(紀元前5-4世紀、中国)は、「上善水の如し」と人工的なものは悪で、自然の大切さを伝えている。 </ SPAN>
6.本質を探究
ベーコン(16-17世紀、イギリス)は、4つの先入観(主観、独断、伝聞、権威)を排除することで実用的知識を得ることができると説いている。