12 月 19
 沖縄の問題で日米同盟が揺らいでいる。日米の安全保障が動揺している内に、国内の問題はさておき中国・ロシア・中央アジア・インドなどの連帯を強化する上海協力機構の動きが心配である。この問題を解決するためには、太平洋を挟む日米の協力のベクトルを高めるのみならず、とりわけ沖縄のインフラ整備を強化し、ひいては47都道府県で最下位といわれる沖縄の県民所得を倍増する経済刺激策が必要だと考える。
 
 ハワイには、米軍の陸海空の基地が集中している。ホノルルの東西センターに勤務していた頃、陸海空のそれぞれのゴルフコースでプレーし、改めて米国の軍人に対する優遇策を垣間見た。50番目の州であるハワイは、米国の中でかなり一人当たりの所得が高いと思う。
 
 ハワイが米国の最南端であり最も新しい州である。それに類似するのは沖縄である。加えて、太平洋戦争の傷跡が今も残っているのは、この地である。違いは、極端な所得の格差である。
 
 安全保障の観点で沖縄は、米軍基地の拠点として日本のために貢献してきた。にもかかわらず沖縄県民の所得が最下位なのは、自民党の大失策である。沖縄の戦中、戦後の犠牲が米軍基地移転と関係があるとすると、新政権が、明確に示すべき第一のビジョンと実践は、例えば、十年で沖縄県民の所得を倍増することではないだろう。
 
 3年ほど前に普天間基地の海兵隊8千人がグァムに移動する審議をキャピタルで公聴したとき、グァムの下院の議員が、米軍の誘致に伴う経済刺激策を提案し、グァムをハワイのように豊かにするという発言に接した。観光産業が主流で製造業など地球環境に相応しくない産業育成に制約があるハワイやグァムなどの島にとって安全保障の一翼を担うことで、生活水準を向上させることは賢明な政策であると考えられている。
 
 安全保障は、国家の存続にかかわる意志であり、限定された地域の世相に流される意思により決定されてはいけないと思う。戦後、日本の安全保障を語る場合に忘れてはならないのは、戦後間もないころに国務省の政策部長であったジョージ・ケナンが匿名で米国の外交雑誌に投稿した「X論文」のソビエトの源泉と共産主義封じ込め政策である。この米国の政策により、敗戦国、日本が朝鮮戦争の特需などを通じ、戦勝国である中国やソビエトよりも経済発展を成し遂げることができた。同時に、東アジア共同体が提唱されながらも周辺諸国としっくりいかないのは、戦前の日本の侵略行為以上に、米国の傘のもとで経済発展を遂げた日本へのジェラシーが影響していると考えられる。
 日本の戦後復興は、米国の政策によるところが大きくまた、沖縄返還は、日米の秘密協定のみならず、同盟国としての日米の信義がある。その信義が揺らぐようなことになれば、周辺諸国の日本へのジェラシーが爆破し、日米双方や東アジア共同体への実現も遠ざかる。
 
 今、日本が為すべきことは、沖縄県民、国民、米国の三者が満足する政策を打ち出すことである。それは、ハワイをモデルとした沖縄を築きあげることだろう。それには軍事基地と環境産業の共存、並びに上海協力機構のような東アジアのシンクタンクの拠点や国連の専門機関を構築することも考えられよう。将来的には、米軍の負担を減らし、自衛隊と国連の多国籍軍による集団安全保障の道、或いは、戦争を未然に防ぐ予防外交に徹した経済協力などを主体とした協調的安全保障への理想もあろう。
12 月 10

名古屋学院大学 2009年12月2日 

多角的・重層的視点で世界の中の日本を展望

東アジア共同体構想

ワシントンのシンクタンクで習得した歴史の潮流の解読法と哲学的戦略思考

 

京都市生まれ。関西学院大学卒業後、日本企業から新入社員で戦時中のバグダッドに駐在。その後、ロータリー財団大学院奨学生として南アフリカに留学。外務省の国連の登竜門である、JPOを経て、国連工業開発機関(UNIDO)の正規職員。西アフリカのリベリアと本部ウィーンで勤務。ハワイの東西センター、ワシントンのブルッキングス研究所、ジョージワシントン大学の研究員を歴任。大学卒業後、30年かけ、日本企業、国際連合、ワシントンのシンクタンクで勤務しながらイラク、オーストラリア、南アフリカ、リベリア、オーストリア、米国のフィールドで吸収したことを語る。

独立性と現状分析に留まらない将来への具体的なビジョン構築

Independent research shaping the future , Independence , Quality,Impact.

Think感性で考え、Learn 理性で学び、Lead世の中に伝える

未来から現在を照らす 多角的視点クローズアップとロングショット 

4つの理由で分析 現実的理由、本質的理由、道義的理由、発表された理由

 

 

 

 歴史の潮流を解読する

1.文明の視点

トインビー 歴史の研究 700 年ごとに東西の文明の繁栄・衰退

4大文明 エジプト・メソポタニア 西へ移動、インダス・中華 一定の位置に留まり放射線状に拡大 21世紀はアジア・太平洋の時代

 

2.宗教の4つのパターン

一神教 (ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)、宗教が混沌としている(インド)

宗教を正式に認めない(中国)、多神教 同時に複数の宗教を崇拝 (日本)

 

3.景気循環

コンドラチョフの50年景気変動 戦争・イノベーション・通貨の供給量・資源の需給

グズネッツの波 (建築循環) 約20年サイクル

ジュグラーの波 (設備循環) 約10年サイクル

キチンの波 (在庫循環) 約40ヶ月サイクル

 

4.国際政治・国際社会像

主権国家体制 1648年 ウェストファリア条約

国際共同体 国境を越えた利益や価値を意識、国際機構

世界市民主義 (cosmopolitanism,国際社会における基本単位は個人、平和は世界の統一によって達成

 

5.国際関係

 現実主義 (Realism)、自由主義(liberalism)、グローバリスム(Globalism

 

6.安全保障

覇権安定型、勢力均衡型、集団安全保障、協調的安全保障

 

 

東アジア共同体構想

東アジアの歴史の潮流 

セポイの乱(インド、1857)、南北戦争(1861-65年)の影響 明治維新(1968年)

日清戦争(1894年)、日露戦争(1904年)、日韓併合(1910年)、辛亥革命(1911年)

満州事変(1931年、リットン調査団、国際連盟脱退)、太平洋戦争(1941-45年)

朝鮮戦争(1950-53年)、冷戦終焉(1989年、天安門事件 6月)

 

孫文の大アジア主義 西洋の覇道と東洋の王道

中江兆民 三酔人経綸問答 豪傑君・洋行帰りの紳士、南海先生

岡倉天心 東洋の理想 アジアは一つ 分断と統治

和魂洋才・和魂漢才・和魂萬才

 

北東アジアグランドデザイン 空間開発計画 

上海協力機構

朝鮮半島の問題 ソフトランディング、ハードランディング、現状維持、核を保有

 

ビジョンを描くための哲学的戦略思考

 

1. ドゥルーズ(20世紀、フランス)は、遊牧民(ノマド)的思考として一元的・固定的な考えに陥ることを批判し、多角的・重層的視点で思考することの重要性を説いている。クローズアップとロングショットの両方の視点で、世の中の現象を把握することが大切である。

 

2.弁証法で世相を展望

 国連やワシントンのシンクタンクで学んだことは、建設的な議論を通じ、ベストのシナリオを創造することであった。ヘーゲル(18-19世紀、ドイツ)の弁証法は、正論・反論・双方の長所をミックスさせた排他的でない議論の重要性を説いている。

 

3.プラグマティズム(実用主義)

 ジェームス(19-20世紀、アメリカ)は、物事の真理を実際の経験の結果により判断するがプラグマティズムの戦略的思考の重要性を説いている。マキャベリ(15-16世紀、イタリア)は、理想と現実を握手させるためには、柔軟性のある多種多様な行動が必要であると述べている。

 

4.予定調和説・性善説

 ライプニッツ(17-18世紀、ドイツ)は、予定調和説に則り、最終的には世界は最善の道を歩むと説いている。ビジョンを描くにあたり、「宇宙の目的」に従った、協調・共生への哲学が根底になければいけない。

 

5.自然との共生

 スピノサ(16-17世紀、オランダ)は、自然界の万物に神を見出すという東洋的な見方を示している。この汎神論の見方は、現代社会における宗教・文明の対立構造を調和させるパワーを秘めている。老子(紀元前5-4世紀、中国)は、「上善水の如し」と人工的なものは悪で、自然の大切さを伝えている。 </ SPAN>

 

6.本質を探究

 ベーコン(16-17世紀、イギリス)は、4つの先入観(主観、独断、伝聞、権威)を排除することで実用的知識を得ることができると説いている。

  

12 月 01
京都に訪れる観光客は、京都市の人口の30倍の年間5千万人。この数字が現しているように日本人の精神支柱となる日本の文化や伝統を担う京都への評価が年々高まっている。また、グローバリゼーションが進展する程、世界の中の京都の役割が注目される傾向にある。
 
先進国、途上国を問わず多くの魅力的な土地で生活した。特に、世界で最も住みたい街に選ばれたウィーンでの5年間は、文化の香りに思う存分浸ることができた。そのウィーンと比較しても、京都はウィーンに勝るとも劣らぬ世界のトップの地位にあると思う。例えば、自然を比較するとウィーンの森とドナウ川、京都盆地を囲む山と鴨川。文化においては、建国千年の根底にあるハブスブルク家、1200年の京都の雅の文化。これらに加え、京都には、伝統産業のみならず、任天堂をはじめとする世界的企業がある。
 
尽きることなく京都の魅力を描くことができるが、同時に奇妙なこともある。紅葉のライトアップで有名な某寺院を訪れたとき、拝観料が千円という高額であることと、仏教や日本文化についてお寺のお坊さんから講話や説明を受ける機会がほとんどないことである。少なくとも欧米の教会では、キリスト教のみならず文化についても学ぶ機会があった。
 
京都のお寺は、観るものであって、聞いたり学んだりすることができる場でないのだろうか。日本では年間3万人の人が自殺し、精神科医の診察を受ける患者が増えている。このように健全でない社会においては、西洋医学としての精神科医の役割のみならず、日本人がずっと頼ってきたお寺の精神面におけるサポートが求められているのでないだろうか。
 
そんな疑問を持っている時に、京都の哲学の道の近くにある法然院第31代貫主の梶田真章さんの講話を拝聴する機会に恵まれた。まず、心地よいありのままの自然の空間に満たされた法然院の拝観料はなく、1時間強の梶田さんの講話が無料なのには驚いた。さらにその講話も一方的なお話でなく、最初に質問がありますかと問いかけられ、それを丁寧にお答えされる様子は、まるでワシントンのシンクタンクのようでもあった。
 
「仏教は、人生をいかに楽に楽しく生きるかを教えてくれる知恵なのです」、「自分の好きなことややりたいことを考え、追求し、あなたがあなたとして生きていくだけでよい」と説かれる梶田さんのお話は、実に分かりやすかった。アインシュタイン流に言えば、「真理は単純で美しい」と思った。
 
法然院には、文学者の谷崎潤一郎、哲学者の九鬼周造、経済学者の河上肇らの墓がある。偉人が親しんだ法然院は、まさに考える空間に満ちており、貫主と直接対話ができ、今を生きるヒントを得られる開かれた共同体なのである。
 
景観や伝統文化に魅せられて京都におびただしい数の観光客が、訪れる。そして、京都は観光に磨きをかけ利益を上げる。お寺においては、高額の拝観料を取るところが主流であるが、法然院のように拝観料もなく、講話も聴けるところもある。それはそれで、ありのままでよかろう。
 
世界の中の京都の役割を考察した時、5千万人という内外の観光客に中国の古典にある「観国之光」の本来の意味である「その国の文化を観察して良く知る」に従い、仏教の精神性や宗教性や日本文化の教養を伝え、世界に発信することが重要であろう。現代資本主義が示す市場経済のお金の概念でない、法然院のような信頼や尊敬をベースにした精神性の共同体は、貨幣を超越するのではないだろうか。
12 月 01
NHK大河ドラマの影響もあり世の中は坂本竜馬ブームである。想えば40年近く前に、司馬遼太郎の「竜馬が行く」を読んだことは実に貴重なことであった。竜馬の自由な発想と行動に憧れ、常に人生のターニングポイントに直面した時に竜馬なら如何に生きるかを問いかけてきたものだ。
 
きっと竜馬なら世界を翔けながら、途上国の貧しい人々に会ったら、温かい手を差し伸べ、経済発展へシナリオを描いたであろうし、また紛争や戦争で苦しんでいる人があれば、平和へのビジョンを提示し、自ら命がけで汗をかいたであろうと考えたものだ。
 
竜馬ならきっと世界を相手にスケールの大きなビジネスで財をなしたかもしれないし、また世界平和のために国連で働き、日本という枠を超越し地球にために働くことに興味を持ったかもしれない。竜馬の明治維新の時代と比較し今は非常に恵まれた時代であり、情熱と自立と貢献の覚悟さえあれば、世界を舞台に活動することは可能なのである。
 
とにかく世界に出たいという想いが、戦時中のバグダッドをはじめ、水道も電気もないアフリカの奥地の生活を経て、国連で勤務したり、平和構想を練るワシントンのシンクタンク(政策研究所)での経験を積む起爆剤になった。夢想と現実を握手させるのは、情熱と意思であると実感している。
 
グローバリゼーションに活かす伝統・文化の重要性
この二十数年のグローバルな生活を経て、今は、故郷の京都で、京都から世界に少しでも地球益のためのメッセージを発信したく考えている。世界の現場で直覚したことは、世界は想像以上の速度でグローバリゼーションが進化しており、そして同時にその地域やその土地の伝統や文化の重要性が高まっているということである。例えば、ビジネスの世界、特に大量生産や機械化が可能な分野は、中国やインドのように豊富で安い労働力を持ち、市場が大きいところの生産が有利であり、恐らく日本は工業化においては、現在の地位を維持することはできないと考えられる。
 
しかしながら、機械化や大量生産ができない分野である、手作りであり匠の技と伝統が活かされたアナログ式のものや知恵は重宝されると考えられる。恐らく、グローバリゼーションが進む世の中において、日本の経済発展において必要なことは、世界で最高の素材と最も効率的な生産をミックスさせ、加えて日本独特の創造性に満ちた知恵を総合させることだと考えられる。
 
総合的・統括的に創造しプロデュースする能力
人類の歴史は、狩猟・採集の時代、農耕の時代、産業・工業化の時代に変遷し、特にここ2、30年は情報技術が主流となり、今後、これらすべてを総合的・統括的に創造しプロデュースする能力が必要とされる時代が到来していると考えられている。
21世紀の今日、最も必要とされる能力は、地球全体を眺望し、人類の歴史、哲学、宗教、科学技術などすべてを総合し、協調・調和させることにあると考えられる。このような能力を習得すべく、日本のみならず世界の大学や研究所の門をくぐったが、現実には、概してアカデミックな分野においては、経済学、政治学、理科系、文科系といったように細分化・専門化された分派した体系が主流であった。
 
このような学問に満足できず、生きとし生けるもののすべての源底に共通する学問と実践の探究をよりグローバルに行ってきた。そして、ますます創造やプロデュースが必要とされる世相においては、千様万態の学問を融合させた普遍的な新しい学問を習得できる環境が必要であると考えられる。
 
そのような学問の環境が日本になければ世界の大学から学べばいいし、それでも納得しなければ、自分でそれを創造すればいいと思われる。最終的には、学問は、他力本願的に供給されるものでなく、自学自習することに価値があると思われてならない。
 
論理的であろうと非論理的であろうと、知的直観、経験的直観などすべての五感を活用して、地球益のためにベストを尽くすことが大切であろう。竜馬の魅力は、そのような日本人的な柔軟な思考と行動力を備えている点にあると思われる。2010年は竜馬ブームで、現在の就職難とか不景気が吹っ飛ぶことを期待したい。