9月 02
 2009年夏の終わりは、政権交代でスタートした。明治維新から140年、ついに日本の政治に地殻変動が起こり、市民のための市民による政権が生まれたのである。日本国内のみならず、世界が世界の中の日本の政権交代に注目している。米国、アジア、ヨーロッパとの国際関係と二大政党制の将来像を考察してみたい。
 
 一年前の米国は、リーマンショックの渦中にあり、民主党のオバマ旋風が吹き荒れていた。当時のオバマ候補は、共和党が推進する市場原理主義、軍事増強、減税、小さな政府に反対し、民を中心とした中低所得者を優遇する大きな政府と海外への軍事関与を抑制する政策を訴えていた。このように米国の民主党と日本の民主党には共通する政策が多く、日本の政権交代がスムーズに行われた背景には、リベラルな米国の民主党政権の中立な立場が幸いしていると考えられる。
 
 日米同盟において、より対等な関係を模索する日本民主党は、オバマ政権が掲げる外交・軍事・開発(Diplomacy,Defense,Development)の3Dを日米の包括的・戦略的互恵として新たなる日米関係を構築する必要がある。換言すると、イラク戦争の反省並びに過度の金融グローバリズムの推進をためらう米国にとって、日本が米国と協調しながら外交・軍事・開発の分野の対米依存から対等な関係へシフトすることに反対する理由はないと考えられる。
 
 とりわけ、米国の共和党は、鳩山政権が懸念する極端なグローバリズム、市場経済主義を米国の国益に背くと警告している。日本が米国の野党である共和党の意向にも耳を傾ける必要もあるが、今こそ、日米の両民主党の協調による東アジア共同体やアジア共通通貨構築を実現させる好機であろう。
 
 中国・韓国をはじめとするアジア諸国は、民主党の靖国神社を含む歴史観を支持しており、ロシアにおいては、鳩山一郎首相の日ソ共同宣言との接点があり、ヨーロッパにおいては、民主党の全方位外交や多国間の国連外交を評価している。特にフランスにおいては、自由・平等・博愛の精神から鳩山首相の「友愛」に親近感を感じている。要するに、鳩山政権の外交の機軸をなすと考えられる「勢力の調和」やソフトパワーは、世界の国際秩序構築のベクトルに適っている。
 
 日本の特徴は振り子が極端から極端に振れることである。従って、政治においてもこの4年間は小泉政権が推進した小さな政府から民主党の大きな政府へと大きく振れた。米国の民主党と共和党の二大政党制が示すように、必ず大きな政府による増税と小さな政府による減税が交互に発生する。自民党は米国の共和党と類似した中高所得者を優遇する政策並びに、企業や株式市場への刺激策による経済成長戦略を明確に示すべきである。
 
 80年代、米国が日本式経営に憧れたとき、「セオリーZ」による米国式経営と日本式経営の調和が研究・実践された。これを今の政治に生かすためには、日本は米国の共和党と民主党の優れた分野を研究し、それを日本の政治に導入する必要がある。スリムで流動的な官僚システム、教育・福祉の充実と弱者救済、経済刺激策による経済成長、地方分権などを実現するために、民主党政権は、自民党政権の負の遺産である政・官・財の癒着による膿やヘドロを徹底的に退治した後、4年後にはにヨーロッパ並みの高い消費税を導入し、低所得者層も消費税を通じた税金を払う代わりに手厚い福祉をも受けられる政策が実現されるときが到来しよう。

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