AIIBと日本の役割(中野有のシンクタンク・ジャーナル2016-1-19OA分をテキスト化) 東アジアの経済・社会・開発機構とアジア南洋協会(中野有のシンクタンク・ジャーナル2016-2-2OA分をテキスト化)
1 月 28

中野:みなさん、こんばんは。今回は、AIIB(アジアインフラ投資銀行)と日本の役割をテーマにしたく思います。
 中国がユーラシア大陸全体に対してインフラ整備や投資の役割を担うということで、英国をはじめドイツ、イタリア、フランス等のヨーロッパの国々が、AIIBの創設メンバーとして協力しました。日本はアメリカの事を考えて協力しなかったのですが、僕からすれば何を言っているんだと、日本はAIIBに協力すべきだと思うんです。この100年の歴史を振り返れば、軍国主義で失敗して経済協力のソフトパワーを推進してきました。AIIBはアジア主導で経済協力を推進する点で日本はAIIBに貢献すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
李:僕はこの分野の専門家じゃなく、竹中先生がその辺の専門家ですが、社会の分野から観察してみると、中国のやり方が世界から信用されていないのが問題ですね。(その通り)中国が本当にピュアな気持ちでやっていればすごくいいことなんですが、その辺どうですか?
竹中:もう一つ銀行がありましたね。BRICs銀行と一般に言われる、ロシア、インド、ブラジル、中国で作った銀行です。ところがその辺が全然話題になってないでしょう。何で話題になっていないかというと、結局この4つの新興国の中で、中国が好き勝手にやる主導権を得られなかったのでなんとなく曖昧になっている。中国はそれに懲りて自分が好きなようにできる銀行としてAIIBを構想して、仕組みを作っている。それはある意味では海外に中国型のインフラ建設を輸出して、それにファイナンスして自分の国からも資材も労働者も輸出して稼いでいこうと、そういう構想だろうと僕は思っています。
 でも中国の国内のインフラ建設はどういうことが起こっているかというと、例えば典型的には三峡ダムですね、膨大な環境破壊が起こっているのです。そのようなことを世界の一つのモデルとして拡大することになるのではないでしょうかね。
中野:大西先生いかがですか。
大西:先ほども言いましたが、私の属している世界のマルクス学会でも中国を帝国主義的だという議論があるんです。先ほどの議論からいうと、中国が自分の国益を考えていないというようなことはあり得ないですね。どの国も自分の国益で動くんです。それはあたりまえ、日本だってそうなんであって、そんなものを一所懸命説明するのは意味がありません。
 例えば、中国はADBとかIMFとか世界銀行とかの出資費率を変えましょうと言っているわけですが、それはなぜなら中国は今、日本のGDPの倍もあるからです。でも日本は例えばADBは断ったんです。なぜ断ったかははっきりしています。出資率が日本の倍になれば、総裁の椅子を取られるからです。だから中国がAIIBで主導権を持つことをけしからんと言うのはいいけれども、それじゃ日本は自分の主導権を維持するために中国の出資比率の引き上げを断ったのはどうなるのでしょうか。だから同じことを日本もしているってことです。このことを一応認めないと、ファイナンスを受けたいと思っているアジアの諸国民から見れば日本は何なんだということになります。
それともう一つ言いたいのは、南洋協会で問題になっているのは、昔と現在はやはり違うということですね。当時は世界の枠組みを、フランスとか、オランダとか、イギリスとかが決めていた時代ですよね。ただ、今は違っていて、多少ありがたいことにどの国にも日本もイギリスもフランスも行けるわけで、その中で勝負しているということです。ということは、AIIBがアジアのいろんな港湾を整備し、中央アジアの鉄道を整備すると、そういうものを日本の貨物も使うことができるということです。その事を考えると、我々がAIIBによる港湾とか鉄道とか道路とかの整備に反対してどうするの、となるということです。
中野:僕は大西先生の考えに大賛成です。僕はずっとライフワークとして国連とかブルッキングス研究所とかずっとこの分野の研究を行ってきて、軍事じゃなくて経済協力を通じて、ユーラシア・アジアを大切にしようと。その時に本当に中国が軍事じゃなくてインフラ整備を通じて貢献しようと言うことに対して、イギリスとかフランスとかイタリアとかが賛成した時に、アメリカの意向に従って反対したことが大いなる日本のミステイクだと思うんです。日本はもっとそこでソフトパワーとかスマートパワーとかを推進すべきです。アジアの開発に関しては戦前の日本の反面教師として考察すべきです。南洋協会もそうですが、いろんな行為、間違ったことをやったと思いますが、それを反省しながらね。
大西:同じことを、AIIBに入るべきだったと日経新聞の社説で述べているのですよ。日経新聞って大事なのは、私の意見は右とか左じゃなくて財界の、つまり経済界の意見なんですよ。その意見は重視すべきだと思います。
中野:李先生、中立的な立場からいかがですか。
李:あのう、僕は経済の事はあまりわからないのですが。
中野:それは卑怯ですよ、社会学者がですね、全部わからないとだめですよ、ははは(李:わかりました)
李:中国は今経済力が増しているので、覇権とまで言わないけど、世界をリードしたいと、アメリカの言いなりにはなりたくないんだと、というような意思表示を示し始めている。今お金が集まっているから、アジアのリーダーは今まで日本だったが中国がそこにかわって何かをやりたいんだという意思表示だと思うんですね。
松本:中野先生、この地球展望に書いているのを覚えていますよね。これ2000年に、その時にちゃんとこれは基本的インフラ整備を市場経済の視点ではなくて、安全保障の視点から展開すべきであるとかこういうのをずっと持っておられて、最後は北東アジア開銀構想まで言っているわけでしょう。今の中国の言ってることとどう違うのかと僕は思うんですよ。(中野:一緒です)そうなってくるから、この方を論破するとか、変えさせるが難しい。私は、それでいてちょっと違うのは、高校の世界史の先生が最近世界史が教えられていない、特に現代が教えられてないというんです。
李:テレビじゃないのでちょっと説明が必要ですね。
松本:それで、いわゆる東アジアが行方を握る21世紀の世界経済とこういうことまで書かれているのです。中国を中心とした北東アジアそして、ヨーロッパ、EUこれは2005年度です。もう2015年度はこれがもっと変化しています。一般の人の庶民感覚で反論できない、これが専門家となると何ぼでも反論できるんですよ、これが100万部売れているんですよ。受験生は一生懸命これを勉強していると思ってますし、一般の人も読んでいると思います。
中野:李先生、売れる本って。
松本:売れる本とかに話を持っていかないでください。
李:とても大事な話で、本はそれなりの理由があるんですね、しかし僕も大西先生も竹中先生もそうだと思いますが、本を1、2年かけて一生懸命やっても1万部とか2万部です。しかし、それが歌になりますと、瞬く間に100万枚とか売れたりすると我々の知的な働きはどうなんだという風にちょっと悲しくなります、先生どうですか。
大西:うん、難しいですね、私の受講生には芸能人もいます。
李:つまり100万部売れなくてもやはり日本の知的なレベルを高めるためにも、なにかを蓄積するためにやはり地道な仕事が必要なんですよね。
松本:その通りです。
竹中:僕は世の中を変えるなんてそんな途方もない考えを持っていませんが、僕と出会ってですね、100人に一人ですね、なんか覚醒するような若者がいれば僕の人生はそれで充分です。
李:すごく大事なのは、歴史を変えるのは一人か二人ですよ。だからそういうのは、やはり教育者、ここで議論しているのはみんな先生ですが。
中野:最終的には教育が大事だということで。ではまた来週。

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