GMを超え世界一の企業となったトヨタが、米国の異常なバッシングに直面している。フロアマットの不具合から急加速問題、ステアリング問題、リコール回避による不正利益捻出と次から次へと問題が浮上し、通常のリコール問題の領域を超えている。トヨタたたき騒動は、米国の消費者からマスコミ、そして米国政府まで拡大し、経済問題から社会問題、そして国際政治問題へと発展する勢いにある。異常事態の中で、ワシントンの下院・上院の公聴会でトヨタの証人喚問が始まった。
2002年から2008年まで、筆者は米国のシンクタンクであるブルッキングス研究所やジョージワシントン大学などの客員研究員としてワシントンに滞在し、日米中の国際政治力学を研究する一環としてキャピタルヒルで開催される公聴会を頻繁に傍聴して、公聴会独特の空気に触れることができた。そこで、公聴会の様子並びにワシントンのシンクタンクで多角的・重層的なビジョンを構築することの重要性を指摘したい。
公聴会の委員長すなわち民主党の議員が配布される資料をもとに証人喚問の経緯・目的などを読み上げ、引き続き副委員長である共和党の議員が説明を加え、通常、議員の当選回数の序列順番で議員が質問する。いくつかの委員会を兼ねている議員も多く質問の時だけ席に着くことから、類似した質問が行われるケースもある。証人による偽りの答弁を避けるため、いかにもキリスト教国家らしく宣誓を命じるケースもあり、緊張感が高まる。また、その緊張感をほぐすように、インフォーマルなジョークやアドリブもある。あらかじめ準備された質問の他に、証人の答弁を追及し、その場でしか味わえない予測不可能な質問もなされ、民主党・共和党の攻防のみならず地域を代表する利益が渦巻くことが公聴会の醍醐味でもある。
シンクタンクでの研究のために公聴会を利用していたのだが、振り返れば、日本企業が公聴会でスケープゴートのように公にさらされることをワーストケースシナリオとして予測することができた。しかし、公聴会を傍聴する日本人が余りにも少ないことは驚くばかりであった。孫子の兵法にあるように、優れた戦略家は状況全体を細部まで知り尽くし戦う前から勝利を確実にするとある。ワシントンの公聴会をモニターしている日本人や企業人も必要ではないかと痛感した。
メディアは、品質第一を掲げながら安全よりコストを優先したトヨタの隠蔽体質を道義的問題としてクローズアップしている。その背景には、現実に世界一になったトヨタたたきと、自動車産業全般の再構築に値するハイブリッドカーなど、地球環境にやさしい自動車市場を抑止する力学が働いている。一方、全米トヨタ工場で働く17万人の雇用問題もあって公聴会をより公平なものにすべきとする動きもある。さらに、問題の背景には、日本の民主党政権が優柔不断な態度で臨む沖縄問題、ひいては日米同盟の問題、さらに中国市場に焦点を合わせた米国の東アジア戦略など、多角的・重層的な問題にも起因していると受けとれる。
トヨタ問題は、誠意ある説明責任で決着がつくという単なるリコール問題の範疇に留まれば、日本企業にとって対米戦略及び世界戦略の良きレッスンとなろう。しかしながら、今回の問題で認識すべき重要な課題は、経済・外交・安全保障が渦巻くワシントンの空気を解読し、シンクタンクを通じた戦略的ビジョンとワシントン人脈の構築、そして予測される最悪の状況を回避し、最適な企業環境に導くための人材を育成することではなかろうか。
ワシントンのシンクタンクなどに席を置きながらキャピタルヒルの公聴会に精通することは、一見、利益追求型の企業にとっては「遊び」と思われがちだが、そのような環境で人材を育ててこそ、企業の命運を分ける緊急事態の特効薬になろう。トヨタ問題を契機に、企業内シンクタンクや官庁系研究所の範疇に留まらず、現場中心の実践型シンクタンクに座標軸をシフトして、国際的かつ多角的・重層的な課題に取り組む人材が育成されることを期待したい。
2月 13th, 2015 at 10:47
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