3月 19
石油価格は、1バーレル140ドルを超えた。この急激な高騰は、中国・インド等の石油需要増しと産油国の供給調整に起因しているが、少なくとも50ドルは、投機マネーによる心理的要因が働いていると言われている。
とすれば心理的要因を利用し、投機マネーの流れを変えるエネルギー戦略を考案すれば面白い。例えば、天然資源に恵まれなくても世界第二の経済大国になった日本が、独自のエネルギー資源を確保する可能性を示すことにより、投機マネーで変動する石油価格の流れを変えることが出来る。日本のエネルギー戦略を奇想天 外な発想を持って大きく舵取りする必要があろう。
燃える氷
日本の周辺に“燃える氷”と言われるメタンハイドレード(MH)が塊状の状態で広く水深500メールの辺りで眠っているらしい。これは天然ガスに等しい環境に優しいエネルギーであり、LNGに比較し費用効率が高く、埋蔵量も百年を超える。
もしこれが真実ならば、資源国家としての日本の未来が切り開かれるのである。天然資源に依存しなくても技術革新で成長を成し遂げてきた日本が、仮に自給できる天然資源に恵まれたなら、世界から想像以上の注目を浴びると考えられる。
現在の異常な石油価格の高騰は、需給の不均衡懸念が70−100ドル、残る50ドルは機関投資家等による投機的要素が絡んでいると推測されている。投機的な思惑を予防する策として、既存の天然資源に代替する可能性のある燃える氷等の海底に眠っている天然資源の開発が推進することが考えられる。
原発
G8サミットで、二酸化炭素排出とエネルギー価格高騰の要因から原発の重要性が議論された。原発に関し、概して3つの考えがあると思う。第一は、原発アレルギー。とにかく原発はいけないとの単純明快な考え方。第二は、天然資源に恵まれぬ日本にとって、少々の危険が伴っても安価で安定したエネルギー供給を保つために 原発は不可欠であるとの原発推進派の視点。第三は、その中間。即ち、エネルギーを分散させるという意味で、ある程度の原発は必要不可欠であるとの見方。
日本の原発の技術力は、東芝・ウェスティンハウス、日立・GE,三菱重工など世界の主流を占めている。原子力大国である日本、フランス、米国は、地下資源大国である中東、ロシア、中央アジア等との競合においてエネルギーの安全保障戦略を描く重要な位置にある。
原発ブームの中で、日本はユニークな局面にある。唯一の被爆国、地震、京都議定書の地球環境先進国、原発の技術立国。被爆国による原発アレルギーと地震による事故のことを考慮すれば、原発の不安材料が増す。一方、国際情勢と安全保障の視点、並びに高度な日本の原子力技術を目算すると、原発の意義は増す。
少なくとも石油・天然ガスに代替する燃える氷の開発が進展し、原発の重要性がG8サミットで議論されることによりエネルギーの投機マネーによる石油価格の高騰に何らかの心理的影響を及ぼすことができると考えられる。地震ベルト地帯に位置する日本にとって原発には限界があるとすると、燃える氷の実用化に向けたグランドデザインが希求されている。
月刊「世相」2008年8月号に掲載