3月 19
 麻生首相は、西アフリカのシエラレオネにて2年間、ダイヤモンドや金の資源開発のために生活されたらしい。欧米で学ぶリーダーが多い中、麻生首相が、発展途上国、しかもアフリカの奥地で人間の原点に直覚するような体験をされたことは、国益に適う素晴らしいことであり、今までの日本のリーダーにない大局観と創造 性に満ちた指導力が期待できる。アフリカは未開の地であるからこそ学ぶことがないというのではなく、反対に多くのことを習得することができたというのが、筆者の2年間の西アフリカでの実感でもある。
 
先日、これぞアフリカの未来に理想と現実をつなぐ面白いコラム(日経新聞)に出会った。エナジーキオスクと題するそのコラムには、国連工業開発機関が推進するアフリカの奥地のプロジェクトの成功例が描かれていた。
 
「都市からも拠点村落からも外れた集落。電気、ガス、上下水道などのインフラはもちろんない。でも、集落の人々はちゃんと携帯電話やパソコンを持っている。村はずれにある赤い屋根の掘立小屋。人々はそこに通って電気を買っているのである。周りに水の流れがあればそれを利用する。風の吹く場所には風車を。ある いは、屋根に太陽光パネルをおく。そのいずれもが利用できない場合でもバイオマスを使う発電機や地域の植物油から作るディーゼルからも電気を作る。そこに接続して携帯電話なら一回20円でできる。ひと呼んでエナジーキオスク。完全地産地消型の施設である。」
 
 ぼくは20年前に国連工業開発機関の準専門家として、西アフリカのリベリアの当り前のインフラ整備がない奥地で、2年間、中小企業育成のプロジェクトに従事した。当時は、エナジーキオスクのような産地消型の施設はなかった。ただ当時の知識では、電機や水道のインフラを整備するためには、巨額の ODAが必要だと考えられていた。
 
 その巨額の資金を得るために冷戦末期のアフリカ諸国では、先進国から技術支援や資金協力を得るために政治が混乱し、大規模のインフラ整備のために住民は過剰な労働を強いられ、加えて環境破壊へつながった。
 
 その意味からもローカルの素材でそこで生活する住民がローカルな技術力でエネルギーを自家発電できるシステムは、画期的だと考えられる。エナジーキオスクとサテライトのテクノロジーで、最も安く効率的にアフリカの奥地と世界が結びつくのである。
 
 アフリカの発展にとっては、先進国の物差しで展望するのではなく、アフリカの将来を担う子供たちの目線で下座鳥瞰すべきだと思う。当時リベリアで国連の中小企業の育成のプロジェクトで、大型のインフラ整備の対極的な、村の人々に小規模の資金を提供し、家具製造、鍛冶屋、養鶏、養豚などのアフリカの奥地の産 業を推進した。数年前にマイクロファイナンスのプロジェクトを具現化したバングラディッシュ人がノーベル平和賞を受賞した。
 
 アフリカのみならず20年以上かけて世界を翔けて日本に戻ってきて、とりわけ農林水産業やエネルギーの地産地消の大切さを実感している。案外、日本の地域格差を解消する秘策としてアフリカの知恵が役に立つのではないだろうか。後進だから旬の技術力が生かされるということもあろう。少なくとも麻生首相には、 秋葉原と同じようにアフリカの知恵も生かせて頂きたく思う。
月刊「世相」2008年11月号掲載

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