3月 19
 80年代初頭、米国では、日本式経営が注目され日本式経営と米国式経営を融合させたセオリーZなる経営が研究された。しかし、30年前と比較し現在では、日本企業が米国企業のマイナス面を真似ているようだ。
 
 アメリカ発の金融危機が暴露したアメリカ企業の負の側面は、好景気には暴利を得たにもかかわらず、危機には公的支援に依存したりゴールデンパラシュートとして利益を得たまま逃避するところにある。これに反し、かつての日本企業の美徳は、終身雇用など市場経済至上主義と異質の倫理観であった。しかし、百年に一 度の経済危機は、日本人の心の関数をも変貌させようとしている。
 
 これらの危機に挑戦するために日本で日本式経営を実践しているアメリカ人の経営哲学が参考になる。30年前にアメリカから日本に移り日本国籍も取得されたアシストの社長のビル・トッテンさんは、日本の名門企業が非正規社員を解雇するという理不尽な昨今の動向を切実に批判されている。トッテンさんは、「アシス トの800人の社員に決してリストラはない。不景気の時には、特に管理職にペナルティーを科し、社員全員の給与を減少させ、危機を分散させればよい。非常時に備え、衣料の修繕ができるようにミシンを提供したり、食料を自給できるように農業の実習も行う。会社は社員の生活を守る責任がある」と語っておられる。
 
 一昔前の日本企業ならいち早くこのような経営哲学が発せられたが、今はグローバリゼーションの狭間の中で、多国籍企業化された日本企業から明確な経営哲学が聞こえてこない。ならば、就職難に苦しむ学生も含め社会問題として、世界の中の日本を考え、どのような仕事が地球のために役立ち、またそれぞれが満足でき る仕事に従事する可能性が生み出されるかを熟考しなければいけない。中長期的にフォーカスされるビジネスとして、農業、地球環境問題のテクノロジー、世界語としての英語の3つが挙げられる。これらを相互補完的に結びつけた仕事をパイオニア的なビジネスと考えられる。
 
 
 自然を謳歌する農業とモバイルの融合
 
 日本の食糧自給率は40%と極端に低い。世界と比較すればこ、危機的状況である。これを是正するにあたり、第一次産業である農業の改善が急務である。
 
 最新の情報を入手するためには、事務職であるホワイトカラーが優位であったが、昨今のテクノロジーの革新で、どこでもいつでも世界の最新情報に接続することが出来る。特に、最近では、I-Phoneの機能にあるYouTubeを通じ、事務所に居なくても、移動中でも、また山や海で自然に浸り、夜空の満天の星を仰ぎながらも世界にコネクトできるし、また机上に居なくても勉強や研究に没頭することが可能である。
 
 オバマ大統領は、地球環境問題に適合するテクノロジーを発展させることが、アメリカの自動車産業などの復活にとって必要不可欠であり、経済発展の機軸になると考えている。アメリカが求める環境にやさしいテクノロジーは、日本が世界をリードしている。
 
従って、農業、地球環境問題に関連するテクノロジーの分野に焦点を合わせるとビジネスの可能性が広がると考えられる。世界が注目する日本の有機農法や環境技術を世界に伝えるためには、世界語としての英語力の向上が不可欠である。農業に従事しながらもモバイルを通じ、英語力を磨くことが可能である。このように考 察すると、大自然の下でスマートな農業に従事しながら、幾つかの仕事を兼業できるパイオニア的なビジネスは、存在すると考えられる。日本企業が誇ってきた終身雇用が崩れた今、仕事は自ら創造するものであるという経営哲学も重要となろう。
 月刊「世相」2009年2月号掲載

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